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32話 ここは「夢の中」のはずなのに

 アレキサンドライト王国(旧フロライト王国)へ上陸して約2週間。

 私=氷の魔女ヴィティは、カース城『城主』になっていた。


 「やったー、カース城に住める!」 


 さっそく、喜び勇んでカース城へ行くと―――――

 そこには、膨大な事務仕事が待ち構えていた。


「もしかしてヴィティ様、城主という職責を理解しないまま引き受けたの?」


 一緒にカース城へやって来たエスペンの一言に、私が凍り付く。


「いやいやいや……私的には、お城に間借りする感覚で来たんだけど。っていうか私、この国では外国人旅行者だよ。外国人旅行者が責任ある立場に就くって、そもそもいいの?」


「いいもなにもイフリート様から直々に依頼を受けて承諾したのはヴィティ様なんだから、今更それを覆すとか国際問題に発展しかねないんじゃ……ないかな…って」


 声が徐々に小さくなっていくエスペン。冗談を言ってる顔じゃない。


「こくさい……もんだい」


アレキサンドライト(この)王国では、『城主とは、その城を含む一帯の領地を管理する()()』。即ち『()()』を意味する。らしいよ」


(※イフリートは、「カース城とその領地はお前に任せる」とちゃんと言っていた。)


「『領主』!? なにそれ急に重い! それに領地管理って? い、一帯って……どこからどこまで?」

 

 声が震えた。

 窓の外に視線を移すと、城下町の奥には雪で覆われた森や平原が広がっている。


「土地のおおよその面積は45000haだから、正方形だとして一辺が20kmってところだな」

「20km!? 四万五千ヘクタールって? ドーム何個分? 」

「ドーム?」


 ふと、デスクに置かれた書類に目を落とすと、


「ちょっと待って、なにこれ。離婚裁判の決済書類まである!? これも領主の仕事なの!?」

「普通じゃねぇの?」

「え!? そうなの」

 ・・・

 ・・

 ・


 「夢の中」なのに……

 ここは「夢の中」のはずなのに、グサグサと突きつけられる現実。


 城主になった私は、ここではじめて事の重大さに気づいたのであった。


(※私が書いた小説『復活した悪魔は~』内では、そういった設定はあるにはあった。詳しく書こうと思ったが、長くなりそうだったので割愛した気がする。)


 ***


 『領主』の主な仕事は、城と領地の管理業務。

 管理業務とは、領民管理。治安維持。裁判関連書類の作成・決済。特産品の管理。予算配分(メルヴィルによって半壊した城や家屋の補修費も含む)。それに加えて、王国北部を守るバンティ城・カース城騎士団と海の保安任務も任された。

 海の保安任務とは、分かりやすく言うと、『ノール帝国軍は寒さに弱いので、定期的に海水の温度を下げる仕事』だそうです。要するに、冷却要員である。

 そして更に、海水の温度を下げる了承を得るため、周辺の漁師さんを集めて説明会を行ったりと仕事は無限に続いた。―――


 もちろん仕事は、カース城の家令アルフレッド・シュバルツバルドさん(年齢不詳のイケオジ)の指導のもと各所に振り分け。領主決済書類などは、私とエスペンでコツコツ片付けた。ちなみに、エスペンはジェダイド帝国サテーンカーリ領・領主の弟であることが判明。どおりで、(現実を)受け入れるのが早かったし、手際もいい。


 ※『サテーンカーリ領』とは、私が書いた小説『復活した悪魔は……』のジェダイド編で、ルーシーの教官だったハント(※リンデンと名乗る)が赴任する荒れた領地。

 ということは……

 現サテーンカーリ領領主様がご健在なら、15年後のハントとリネーアの結婚はどうなる!? そもそも二人は出会うことができるの!? 出会えない可能性も!? ……仕事を片付けながら、あれこれ危惧し仕事が全く進まない作者であった。


 その後、ゲオルグ、コンラードも合流。

 そのまま、私たちはカース城で新年を迎えた。


 ***


 王歴1067年1月


 アレキサンドライト王国とジェダイド帝国の同盟は無事締結。

 それに伴い、私は()()にカース領・領主に任命された。 


 まだ正式に領主になってなかったんかい! とスチュワート様に突っ込みを入れようとしたところで、なんと【移動用魔法指輪(リング)】を手渡された。パカッと。プロポーズされるみたいな形で。ちなみに緊急用。


 ※思わぬ『領主特典』を、羨ましがるコンラードとエスペンに貸そうとしたら、サイズが合わず使用不可だった。


 ***


 それから一週間後。

 赤ちゃんルーシーを連れてノール軍から逃げ延びた少年ルーク・フォルネオス君が、王国東の海岸で無事保護された。


「森の中に住む、上から男男女の三人の子どもがいる夫婦に預けてきた」(by.ルーク)


 ルーク君の証言から捜索が行われた。

 だが、預け先の詳しい場所がわからず捜索は難航。結局、ルーシーを預けた一家は見つからなかった。


 小説の”筋書き通り”とはいえ、そういう展開にしてしまい非常に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。その気持ちを紛らわすように、私はとにかく領主の仕事に没頭した。


 ***


 王歴1067年4月

 アレキサンドライト王国カース領は、爽やかな新緑の季節を迎えていた。


 領内の港は、ジェダイド帝国との交易により活気に溢れ。城下町では、カース城に絶賛滞在中の『帝国の麗しの特使』ゲオルグ・キース殿下人気に火が付き、王国中から観光客が押し寄せていた。

 

 そこで、私が思いついたのは”グッズ戦略”。


 『カース領公認ゲオルグ殿下グッズ』を制作。

 主なグッズは、プロマイド(元宮廷画家作)。ジェダイド帝国の紋章入りマグカップ、ゲオルグ殿下ぬいぐるみ(城下の工房作)。ハンカチ、Tシャツ……などなど次々とリリース。男性向けには、ゲオルグ殿下愛用のジェダイド製の『香りがキツくない香水』、カラーバリエーション豊富な『革の手袋』、魔鉱石で動く『懐中時計』など、好評を博した。


 観光客は喜び、領民もゲオルグたちも潤う。まさにウィン!ウィン!ウィン!

 このまま、カース領主として生きていくのも悪くないかも―――と、私は思い始めていた。

 次回、来週水曜日更新予定!

 ラストまであとちょっと、頑張ります!

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