第二十九章 死者
大輔たちは、あらゆる手がかりを辿り、相沢凛と思われる人物の足取りを追った。花が明かした団体の記録、その団体の解散後の関係者の証言――それらを丹念に繋ぎ合わせていった。
だが、辿り着いた先で判明したのは、その人物が、すでに数年前に病死していたという事実だった。
「……本当に、死んでいたんですか」
あかねが、呆然と呟いた。
医療記録、火葬記録――今回は、実在する機関による、正式な記録だった。あかねは、その病院に直接足を運び、当時の主治医にも話を聞いた。医師は、「相沢さんという方は、確かに、うちで最期を迎えられました」と、はっきりと証言した。
大輔は、深く息を吐いた。
「十八人目の少女が、この事件を裏で操っている――僕らは、そう考え始めていた。でも、それは間違いだった」
海が、静かに言った。
「彼女は、犯人じゃない。少なくとも、直接手を下せる状態には、なかった」
その事実は、大輔たちを、大きな迷路の中に突き落とした。
――では、誰が。
十八人目という、最有力の"答え"が消えた今、事件の構図は、根本から崩れ去っていた。
花は、静かに、その病院で見せてもらった写真を、大輔に説明してもらった。亡くなる少し前の相沢凛は、病でだいぶ痩せてはいたが、それでも穏やかな表情を浮かべていた。若いころの、あの強い眼差しの面影は、写真の中に、かすかにしか残っていなかった。
「彼女は、最後、幸せだったんでしょうか」
花の問いに、誰も答えられなかった。
主治医は、最後にこう付け加えた。
「相沢さんは、亡くなる直前まで、若い記者の方と、頻繁に連絡を取っていたようです。名前までは覚えていませんが、いつも、熱心にメモを取っていた姿を、覚えています」
その一言に、あかねの表情が、わずかに強張った。誰も、その変化に、まだ気づいてはいなかった。




