第二十三章 十八人目
あかねは、三十年前のプログラム参加者の名簿を、複数のルートから入手した。市の福祉課に残っていた古い名簿の写しと、施設の元職員が個人的に保管していた資料――その二つを照合する作業だった。
公式記録には、十七人の名前が記載されている。事故に遭った十七人と、正確に一致する数だった。
だが、あかねが図書館で見つけた古い集合写真には、明らかに十八人の子どもが写っていた。写真の裏には、日付だけが記されていた。名前の記載はなかった。
「十七人と、十八人……」
あかねは、写真と名簿を、何度も見比べた。
「一人、記録から消されている」
大輔たちは、写真に写る十八人目の子どもの顔を、拡大して確認した。
小さな女の子だった。
他の子どもたちと少し離れた場所に立ち、まっすぐにカメラを見つめている。
その眼差しには、幼いながらも、はっきりとした意志のようなものが宿っていた。周りの子どもたちが、カメラを向けられて照れたり、はにかんだりしている中、その少女だけが、まるで撮影者を試すような、強い視線を向けていた。
「この子だけ、記録上、存在しないことになっている」
海が、淡々と言った。
「存在しない人間は、事故にも遭えません。つまり――」
大輔が、その言葉を引き取った。
「この子だけが、"殺されなかった"十八人目、ということになる」
花は、大輔の説明を聞きながら、静かに息を呑んだ。
「その子は、今、どこにいるんでしょうか」
誰も、その問いに答えることはできなかった。
あかねは、その写真を、何度も見つめ続けた。少女の眼差しが、まるで、三十年の時を超えて、あかね自身に何かを訴えかけているような気がしてならなかった。




