第十五章 偽りの告白
翌日、坂上は突然、犯行を認めた。
「僕がやりました。田辺さんも、佐伯さんも、全部……僕が」
署内は一時、事件解決の空気に包まれた。刑事たちの間には、安堵にも似た空気が広がった。長引く捜査に、区切りがついたという安心感だった。
だが、大輔は納得していなかった。
「坂上さん。あなたに、あの手口は使えない」
坂上は目を逸らした。
「システムの時刻同期を書き換える手法。あれは、市の設備の内部構造を深く理解していないと不可能だ。あなたにその知識はない。それに――第一の事件が起きた時刻、あなたは施設で複数の職員と一緒にいた。アリバイがある」
「僕が、やったんです……!」
坂上の声が震えていた。目には、涙が滲んでいる。
大輔は、静かに、しかし確信を持って言った。
「あなたは、犯人じゃない。あなたは、誰かをかばっている。あるいは、誰かに脅されている」
坂上は、崩れ落ちるように顔を伏せた。
沈黙の中、彼の肩が震えていた。磯川は、その様子を見つめながら、これまでの捜査経験の中で、何度もこの手の「偽りの告白」に遭遇してきたことを思い出していた。追い詰められた人間は、時に、真実よりも「終わらせること」を選ぶ。坂上の告白は、まさにその典型だった。
「坂上さん」
磯川が、静かに声をかけた。
「あなたが本当に守りたいものが、何なのか、話してもらえませんか」
坂上は、しばらく答えなかった。だが、その沈黙は、これまでとは違う種類のものだった。
自らの意思で複数の殺人を認めた以上、磯川は、その場で坂上を緊急逮捕する手続きを取らざるを得なかった。留置場の小さな部屋で、坂上は一晩を過ごした。翌朝、坂上が改めて取調べに応じたとき、その表情には、どこか吹っ切れたような色が浮かんでいた。
「刑事さん。……僕には、娘がいます。今、専門学校に通っていて。もし僕が、あることを話せば、あの子の将来にも、傷がつくかもしれない。それが、怖かったんです」
「娘さんが、この件と、何の関係が」
坂上は、深く息を吐いた。
「関係ありません。娘は、何も知りません。でも――僕を脅している相手は、そう言って、僕を黙らせようとしていました」




