十三 扉越しのすれ違い
喧嘩の翌日 朝
マリアは、寝苦しさに目を覚ます。
全身にじっとりと汗をかいていた。
うとうとしていたら、ちょっと寝てしまったらしい。
カーテンの隙間から明るい陽の光が差し込んでいる。
「タオル……。どこだったかしら?」
マリアは、ベッドの中から寝室の中を見渡し、侍女の普段働きを思い出す。
ふらふらと隣の居間の方へ向かう。
タイミングよく、ノックの音がした。
マリアは肩をびくりと震わせる。
「マリア、起きている?昨日はごめんなさい。……あの、一緒に朝食を食べましょう?」
扉の向こうからお母様の声がして、マリアは耳を塞いだ。
息を潜めて、身じろぎ一つにさえ気を遣った。
今はまだ会いたくない。
「マリア?……寝ているのかしら?」
母はマリアが寝ていると勘違いしたらしい。
扉の向こうで物音がする。
しばらくすると、母は扉の前に何かを置いて、去ったらしい。
何を置いていったんだろう?
悩んだ末に、マリアは、そっと扉を細く開けた。
開けた扉の横に、軽食と、手紙が置かれていた。
マリアは周囲に誰もいないことをひっそり確認すると、お皿と手紙を中に入れた。
マリアは震える手で、手紙を開けた。
手紙にはこう書いてあった。
マリアへ
きのうは本当にごめんなさい。
ごはんをおいておくから、食べれるだけ食べなさいね。
いつもかまってあげられなくて、ごめんなさい。
リリアがおねつだからって、さびしい思いをさせてばかりで。
成長おめでとうのパーティは、春になったらすぐにひらくわ。
リリアもいっしょに、みんなでよろこびたいの。
どうかゆるしてね。
あなたにあいをこめて。
マリアとリリアのお母様より
マリアは、そのお手紙を読んで、顔をくしゃりと歪めた。
涙が溢れてくる。
そういうことじゃない。
そういうことじゃないのよ、お母様。
どうしてわかってくれないの?
やっぱり私を一番愛しているのは、私だけなの?
……きっとそうだわ。
マリアは流れる涙を拭って、手紙を丁寧に畳む。
そして、ソファに座って、もそもそと食事を始めた。
食べたくないけど、食べて、早く治さなくちゃ。
ちょっとでも早く素敵な大人にならないと。
でないと、私、皆のこと本当に嫌いになっちゃうわ。
1人で食べるご飯は、やっぱり胸に風が吹くように寂しかった。




