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7話 三回目の相談


 勇者パーティーが討伐から帰ってきた。

 拠点キャンプの面々で前回同様できる限り盛大にお出迎えする。

 

 このまま皆と一緒に歓待して自分のテントに戻る…だったら気持ち的に楽だったのに。


「ニコル、俺のテントに行くぞ」


 アーデルハイドに手をつかまれ、問答無用で連れていかれる。

 賢者ルカと大魔導士様ルルはともかく、聖女ジェシカの方はもう怖くて見る勇気がなかった。


 アーデルハイドのテントは、下っ端神官の私の者とは比べられないほど広くて立派なものだった。ここなら確かに二人くらい簡単に過ごせそうではある。

 アーデルハイドと過ごせと言われた時にはどうなるかとかと思ったが、端っこの方を使わせてもらえれば…。


「死の魔獣を討伐に行く道中、他のパーティーメンバーと少しもめた」


 私が彼のキャンプでどう過ごすか考えていると、また唐突にアーデルハイドが語り出した。

 語っている内容の不穏な様子に思わず彼の顔を見つめる。


「もめた…というのは、どうしてとお聞きしても?」

「君に話を聞いてもらっている俺に不満があるらしい。もしニコルになにか不都合な事が起こったら知らせてくれ。俺ができるものは対処する」


 私の事でもめたのか…。


 予想はしていたので驚きはなかったが、単純にアーデルハイドが心配になった。


「私の事よりアーデルハイド様は大丈夫なのですか?皆様とはこれからもずっと討伐をご一緒になさるのに。…魔王討伐後だって、親しくお付き合いなさるのでしょう?」

「…俺は大丈夫だ」


 間はあったが、特に表情も動かさずそう答えるアーデルハイドにそれ以上何も言えなかった。

 私には口を出す資格がない。


「…討伐の時の話はこれで終わりだ。それより…君は魔王討伐が成功したらそのあとはどうするんだ?」


 いささか唐突な話題変更だが、会話の主導権はつねに彼だ。

 勇者パーティーの話題は話しにくくもあるし、ありがたく新しい話題に話を移す。


「魔王討伐がなされたら、私は神殿の下っ端神官に戻って一生を過ごすと思います」

「それは君が望んでそう過ごすのか?」

「望む…というか、それ以外の食い扶持がありませんから」

「食い扶持か…。そうだな。…俺はいつのまにか、多くを望むようになっていたのかもしれないな」


 彼の望む多くのものとは、どんなものなのだろう。


「アーデルハイド様は何をお望みなんですか?」


 答えてくれるかはわからなかったが、気が付くと私はそう彼に問いかけていた。

 こちらをちらりと見た後、鎧をはずす手をとめ彼は小さな声で教えてくれた。


「俺は…俺を愛してくれる人が、欲しいのかもしれない」


 正直何を言っているのかと思った。

 勇者であるアーデルハイドを愛している人なんて腐るほどいる。

 聖女ジェシカだってどう見たってアーデルハイドに好意があるじゃないか。

 というか。


「多くを望んでないじゃないですか。むしろ最低限だと思いますけど」


 誰に愛されたいかは知らないが、人として当たり前の望みでそんなに悩む彼が信じられなかった。というかそんな事を真面目に語る彼に少し呆れてもいた。


 孤児院で別れたあの日から、アーデルハイドは遠くの存在になったと思っていたのに。

 話せば話すほど昔の彼と変わらないように思えてならなかった。

 愛してくれる人が欲しいなんて…。そんな事を言うなんて。

 孤児院でチビたちに遠巻きにされていたころの彼のようではないか。

 

「最低限なのか?俺にはとても難しい気がするが」

「最低限ですよ。特にアーデルハイド様にとっては。周りをよく見て、方法さえ間違えなければ間違いなく手に入ります。私が保証します」


 私の言葉に目を見張った後、今まで見たことのない穏やかな優しい笑顔を浮かべたアーデルハイドを見て、少し胸が苦しくなった気がした。


完結まで毎日20時更新で投稿予約済です。

最後までよろしくお願いします。

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