11.アーネストの告白
久しぶりの更新となりました。どうぞよろしくお願いいたします。
執務室には領主とアーネストがいた。こころなしか二人の表情は硬くメルヴィンは少々居心地の悪さを感じたが、父に倣い黙って領主が口を開くのを待った。
「アーネストはあと半年で10歳になる。そして魔力の測定をするために王都に行くことになる」
領主のその言葉に、メルヴィンは自分もまたその時に王都に一緒に行くことになるのだろうなと思った。
領主の親族でもない自分は辺境の教会でも測定してもらうので十分だが、アーネストが行くのなら従者として付き添うべきだし、それなら自分もその時に測ってもらうほうがいい。
しかし。
「その準備として、アーネストとメルヴィン、そしてウォーレンはこれから王都のタウンハウスで暮らすこととする」
「「えっ?」」
パッカー親子は思わず声をあげた。辺境を離れて暮らすことになるなんて、考えもしなかったからだ。
「りょ、領主、それは」
「理由を話す。座ってくれ」
領主のいつになく真剣な様子にウォーレンたちは普段はほとんど座ることのない長椅子に座った。
座り慣れない、その程よい柔らかさにメルヴィンの心は一瞬浮き立ったが、領主はすぐに話を始め、メルヴィンはソファのことなどどうでも良くなった。
その話とは、アーネストが2度目の人生を送っているというものだった。
この後ステラ・ハーロウという女性が引き起こす厄災とも言える事件。そして倒れたヴィクターたち。おそらく滅んだであろうこの国について。
メルヴィンの理解は追いついていなかった。が、
「…で、領主、王都への出発はいつになりますか」
「半月後だ」
父親の領主への問いかけに、自分もしっかり聞かなくてはと座り直した。
メルヴィンは父親がアーネストの2度目の人生などという信じられない話ではなくこれからの予定について訊いたことに正直驚いた。しかし二人の様子からそのことを口にするのは間違っていると感じた。
「それはまた…。いえ、はい、承知いたしました。すぐに準備にかかります」
「ああ、頼む」
メルヴィンは、『そうか、半月後か』と考え、父親にならって平気を装ってアーネストに言った。
「アーネスト、去年まで王都の騎士団にいたハーレイから向こうの生活について聞こう。できるだけ早く。とりあえず王都風の服も準備しないと。あっちで馬鹿にされたら困るからな」
メルヴィンの言葉に驚いたのはアーネストだった。
「…いいのか?」
「何がだ?」
「急にここ(辺境)を離れて王都で暮らすことになるんだぞ」
「だって、アーネスト、お前が決めたんだろう?主が決めたなら従者はそれに従うだけだ」
「でも、こんな話、信じられるのか?」
メルヴィンはアーネストを見つめた。そして精一杯の笑顔で言った。
「…アーネスト、俺はお前がずっと悩んでるのはわかってた。それが何かはわからなかったけど、でも、やっと話してくれた。だから信じるよ」
「メルヴィン」
「そりゃあ驚いたし、信じられないっていうか、よくわからなくて訊きたいことはいっぱいある。
でもそれはこの後お前からいくらでも聞けるだろ?
なら今しないといけないのは王都でうまくやってくための準備だ」
『こう見えて、俺って街でいろんなこと勉強してるんだ。お前が領主様と他のところに行ってる間にさ、頑張ってたんだよ』と得意気に話すメルヴィンを見て、アーネストは目の周りを赤くしながらウンウンと頷いた。
領主は二人を見て、
「では、二人は明日ハーレイから話を聞くように。あれは第2部隊だったな、隊長には話をしておく。
そしてアーネスト、メルヴィンが訊きたいことの中には私達が知りたいことも含まれているだろう。
『1度目の人生』で起きたことについて、今からもう少し教えてもらおう」
「はい、父上」
ここで領主は妻のルースを呼び、その後、少しどころではなく長い時間をかけてアーネストの1度目の話を聞いたのだった。
お読みくださりどうもありがとうございました。
短編では書けなかった、子どもだけではどうにもできないあたりやメルヴィンについて書けるのが楽しいです。でもアーネストよりメルヴィンの方が立派に見えちゃいますね。




