10.一歩前進
しばらく間があいてしまいました。呆れずきてくださりありがとうございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
ステラへの一方的な恋心を自覚したアーネスト。
そこからの彼の努力はそれまで以上になった。両親が、また乳兄弟のメルヴィンの心配はより深くなった。
だが、毎日吐くまで己を鍛えることを続けている彼に寄り添い、自分も鍛錬に励むメルヴィンに、徐々に素直にものを言うようになっていったのは自然なことだった。
ある日のこと。いつも通り剣の練習をしていた二人だが、休憩中にアーネストが空を見上げて言った。
「メルヴィン、俺は強くなりたい。もっともっと。
本当は他の子ども達と話したり交流をもったりする必要があることもわかっている。でも、そんな時間はないんだ」
メルヴィンはアーネストに目をやると、口に含んだままだった水をゆっくりと飲み込み訊いた。
「強くなってどうしたいんだ?」
「…守りたい」
「何を?」
「…大切なものを」
アーネストは雲も浮かんでいない空を見つめたまま答えた。メルヴィンはもう一口水を飲み、ちょっと考えた後、ヒョイと立ち上がって伸びをした。
「うーん、よくわからないけど、主になるアーネストがそれを願うなら、社交は俺が頑張る」
「え?社交をメルヴィンが?」
アーネストがメルヴィンに顔を向ける。
「うん、だって主が忙しいなら補佐をするのが従者の仕事だろ?」
笑顔のメルヴィンにアーネストはどういうことかと思ったが、メルヴィンが『まあ任せてくれよ』と言うので半信半疑ながら、ああと頷き、二人で鍛錬に戻った。
メルヴィンはといえば、アーネストがようやく自分の気持ちを話してくれたことに喜びよりも安堵を感じていた。
その後、鍛錬の合間やアーネストが領主や嫡男と学んだり視察に出てメルヴィンの同行が必要ない時に、彼は父親に頼んで領地の市場や一般の子ども達が通う学校に連れて行ってもらうようになった。
今日も領主とアーネストが視察に出ていたので、メルヴィンは休みの父親に街に連れて行くよう頼んだ。
「最近どうしたんだ。いつも坊っちゃんにくっついているのに」
からかうような父親の言葉にメルヴィンは何でもないように答える。
「…あいつ(アーネスト)さ、『大切なものを守りたいから強くなりたい』って。それが何かはまだわかんないけど、それならあいつを守るのは俺だ」
父親は片眉をあげた。
「俺が大切なのはあいつ(アーネスト)だからな。
大体、主に幸せでいてもらわないと、従者の俺や領民が幸せになれないし」
メルヴィンはそう言うと『俺、あいつらとちょっと話してくる』と市場の一角でたむろしている子ども達のところへ走って行った。
「ふん、意外と考えてるじゃないか」
父親は子ども達と楽しそうに話す息子をしばらく眺めていたが、メルヴィンが戻ってくるまでにと市場を見回り、今夜用にいつもよりちょっといい酒を買った。つまみには燻製ナッツも。
母親にも今日の息子のことを聞かせて祝杯だなと思って。
次の日。
「何だよ父さん、二日酔いか?何だってそんなに呑んだのさ、領主様が出かけてるからってたるんでんじゃないの?そんなんじゃ副隊長失格だよ」
「…面目ない」
「俺にそんなこと言ってないで、水飲んで早く仕事に行ったほうがいいよ」
息子の冷たい視線にますます顔色を悪くする父親だった。
そんなことはあった朝だったが、午後にはウォーレンの体調も良くなり、領主たちも戻ってきた。
そしてウォーレンとメルヴィンは揃って執務室に呼ばれたのだった。
お読みくださりどうもありがとうございます。
子ども達が頑張っているので大人にも頑張ってほしいものです。短編で考えていた時よりもメルヴィンがすごくいい感じになっていて嬉しいです。たくさん書く良さだなと思います。
次回もどうぞよろしくお願いいたします。




