遺書
「遺書
きみがこれを読んでいるということは、とうにあたしはこの世から退場していることでしょう。
最初に伝えておきますが、何もこの退場劇はきみのせいで起きたわけではありません。
……起こるべくして、起こったのです。
きみはお節介な女性刑事さんから、あたしの過去について知ったことでしょう。
そうです。それらはすべて事実です。
あたしは彼女を呪い殺しました。
人を呪わば穴二つという言葉があるように、彼女を呪い殺したあたしには彼女からの呪いを回避する術はなく、遅かれ早かれ、あたしは呪いの代償を受けることになっていました。
そう、あたしの退場劇の原因とは、そもそも自分でまいた種なのです。
ユーモアのある優しいきみには、何にも関係がないこと。
ただ言うと。
きみはあたしが愛して憎んだあの子に、そっくりだった。
……いいえ。よくよく考えてみれば、それは違いました。
正しくは、あたしがきみとあの子を重ね合わせていた、のでしょうね。
覚えていますか、武蔵小杉にあるショットバー「レイン」でのこと。
あのとき、あたしはきみが憎くてつらいこと、だから殺してやりたいことを初めて打ち明けましたよね。
今となっては、その謎も解けたのではないでしょうか。
きみがあの子に似ていたということは、この時点であたしはきみのことを愛し、そして憎みもしていたのです。
殺してやりたい気持ちというのは、きみを見ていると、あの子の影を思い出すため、そのように思ったわけです。
ショットバーできみから手を握られたときなんて、あたしはあの子から手を握られたと勘違いをし、恐怖のために悲鳴を上げもしました。
それらを知ったきみは、なんというとばっちり、と思ったことでしょう。
きみが受けたとばっちりと言えば、あのときのことを思い出しますね。
あたしがきみと出会ってから翌日にした、誕生日パーティー……。
あれもやはり、あの子絡みのこと。
そうです、あの子の誕生日が、ちょうどあの日だったのです。
きみの突然の登場に加え、その翌日にはあの子の誕生日。
怯えたあたしは錯乱し、精神不安定にも陥りました。
正直、あたしは驚きました。
きみがあたしの十字架が何かを知っているのだなんて、まさか、と。
それでついにあたしの精神が崩壊したのは、言うまでもないでしょう。
病院から退院後、あたしがやたらハイだったこと、やはりきみは察していましたね。
それもそのはず。
あのとき、あたしはこれから自分が何をするか、すでに行動を決めていたのです。
ですから、平常心でいられるはずがありません。
人生最後になるきみとの会話を惜しみながらも、それでいて楽しんでいたのです、あたしは。
ごめんなさい。
あたしはきみの心を不安定にするばかりではなく、実際に身体をも傷つけてしまった。
ごめんなさい、ごめんなさい。
勝手に死んでしまって……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」




