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俺の靴下が片方ないっ...!!  作者: 三食咖哩
25/29

25足目 問いと靴下②

『2つ目。地上には色々可愛い動物がいますが、モモツカは何が一番可愛いと思いますか?』


先程とはうってかわった質問が飛んできた。


「...うーん。迷うけど犬、かな。」


『犬ですか。シンプルなものを選びますね。』


「犬ってシンプルか?」


『はい。地底の動物と比べるとパーツが少ないですし、何より人にとても好意的だと言われていますよね。』


パーツ...?


「...地底と地上の動物って結構違うのか?」


『はい、生態系が全く違いますから。まず、基本的に気性が荒く愛玩には向きません。無理やり制御して家畜にしている種もいます。暴走が多く大変なようですが』


そんなの家畜にするなよ。


「見た目だけでも可愛いやつとかいないのか?」


『見た目だけで言えばくりくりとした目玉が可愛いと評判のキラキラでしょうか。』


「あぁ、いるにはいるんだな。なんか名前も可愛げがあるけどどんな動物なんだ?」


『身体に大きな一つ眼がついているのが特徴で、時速40kmで走って獲物を取り押さえます。その後は強靭な前腕で食べやすいように獲物を――』


「ストップストップ!想像ついたからあんまり聞きたくないな。」


『そうですか。人に好意的、もしくは従順な動物が多くいるのも地上の良いところでしょうね』


「フローマは気になった動物とかいないの?」


『そうですね...私も犬が気になるでしょうか』


「へぇ、どんなところが?」


『先程も少し触れましたが、人に好意的な動物であるという点が大きいでしょう。更にその歴史は深く、1万年以上にも遡ると言われています』


熱心に話すフローマの声に耳を傾け、相槌を返す。


『進化にあたり野生を捨て、ラフタラに可愛がられることに特化したり、改良により様々な仕事やそのシーンに対応してきたという点も面白いです』


「そんなに気になるなら本物を見せてやりたくなるな。」


『私はデータです。転送機からは出られませんが...連れてきてもらえるのでしょうか?』


「アテはあるんだが上が飲食店だからな...。連れ込んだりしたら店長さんにこっぴどく怒られそうだ。」


『そうですね、衛生的に大きな問題があります』


「もし何かいい案が思いついたら教えるよ。」

 

『お願いします。では切り替えて3つ目、これで最後です。学校とはモモツカにとって楽しい場所ですか?』


「学校?まぁ勉強は面倒だけど楽しい...かな。友達がいるし部活もあるし。」


『なるほど、地上のウェブから得た情報とほぼ同じですね。解答としては100点ですが少し面白みにかけます。』


AIに面白くないと言われた。平々凡々の何が悪い。


「どういう『楽しい』を期待してたんだ?」


『それはもちろん不良が徒党を組んで他の学校と抗争を起こしたり、主人公がロボットに乗って戦ったり』


「現実にそんなものはない。」


『ええ、知っています。冗談です。』


AIにからかわれるのは初めてだ。甘太郎に茶化される時のようないらだちを覚えないのは不思議だと思っていると、


『学校はどのような場所なのかを調べても、理念や目標ばかりで抽象的なんです。通っている人間に聞くほうが早いと思い当たりました。』


「身近なら口切がいるじゃないか。」


『彼女は学校というものに触れるのが初めてですから。参考にするならモモツカです。』


「地底には学校がないってことか?」


『はい。教育制度はあっても教育機関はないですね』


あれだけ発達した技術を持ってるから教育もしっかりしてそうだと思ったんだけど...。


「あ、もしかして家にお抱えの教師がいるとかそういうこと?」


『よくわかりましたね。といってもヒト種ではなくAIが行っているわけですが』


AIすごいな。もう地上の何歩も先を行った生活をしてるんだろうなぁ。


「もしかしてフローマは口切のお抱えだったりするのか?」


『それは不正解です。私はこの転送機のシステムとして産み出されただけですから』


なんとなく声のトーンが落ちたように聞こえたのは気のせいだろうか。

気休めかもしれないが、なんとか声をかけたくて口を開く。


「そんな悲しいこと言うなよ、俺は会ってフローマと話せて楽しいぞ。」


『そうですか。私は上にいる2人以外と話すことがありませんから、モモツカとの話はいい刺激になります』


「それは『楽しい』なのか?」


『すみません、よくわかりません』


急に聞いたことのあるような定型文が返ってくる。どこで学んできたんだ。


「誤魔化されたか。」


『さて、どうでしょうか』


「質問は解決できたのか?」


『7割というところでしょうか。』


あんまり力になれなかったか。ちょっと申し訳ない。


「あんまり役に立てなくてごめんな。」


『そんなことはありませんよモモツカ。助かりました。...ところで今日はもう靴下の回収は済んでいるのでしょうか?』


「いや、これからだと思うけど。」


『では私が代わりに転送して差し上げましょう』


「勝手に転送して大丈夫...?口切に何か言われそうじゃない?」


『フフ、恐らく問題はないと思われます』


「本当か?まぁ信じよう。」


『殊勝な心がけですね。パソコンが乗ったテーブル、一番下の引き出しに袋が入っていると思いますので使用してください』


「はいはい、袋ね。」


立ち上がって体をグッと伸ばしてから、言われた通りテーブルの前まで歩く。


一番下の引き出しを開けると、綺麗に整頓された中にビニール袋が入っていたので一枚取り出した。


「これね。」


引き出しを閉め、再びソファに腰掛けて靴下を脱ぎ始める。


「なぁ、これっていつもどこに転送されてるんだ?」


『まず研究所へ転送されます。ピストスを研究用に抽出しているという話ですが私にも詳しくはわかりません。』


フローマも知らないのか。店長さんは知っているだろうけど教えてくれないだろうなぁ。


「そうかぁ。」


研究という言葉も気になるが、確かピストスについては未だに解明されてないんだもんな。



脱ぎ終えた靴下を袋に入れ、転送機の中央に置いてみる。


「これでいいか?」


『はい、問題ありません。では早速転送を開始しますので少し離れていてください』



『転送準備開始』


ウン、と音が鳴り発光し始める。


『転送開始5秒前。4.3.2.1』



『GO』



『転送完了しました』


またしても生暖かい風と共に、いつの間にか靴下が消えている。面白いなぁ。


「なぁ、ところで替えの靴下ってあるか?」


『いえ、この部屋にはありませんね』


「店長さんに貰うしかないか。」


『そうしてください』


「うん、じゃあそろそろ帰ろうかな。」


『はい。気をつけてお帰り下さい』


「また来るよ!」


『ええ、今日はありがとうモモツカ』



フローマに手を振り階段を上がる。



「店長さん、ありがとうございました。」


「もうお話は終わったの~?」


「はい!おかげさま...で...?」


店長さんの正面、カウンター越しにいたお客さんと目が合った。


「も、モモ...!?」


「番長!?なぜここに...?」


「なんでってお茶しに来たんだけど...そっちこそなんでカウンターの中にいるんだ?」


うんヤバイ!駅に近いこの店に、知り合いが来ないハズがなかった!


何とかしてほしい、と念を込めて店長さんに視線を送る。

すぐに気づいたようで目を見てこくりと頷いてくれた。


「百束くんはね、今日からこのお店でバイトを始めたの~!」

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