23足目 番長と靴下②
小春と一緒に晩ご飯を食べているとスマホが鳴る。肥田さんからの報告のようだ。
「先方もプロジェクト参加を喜んでくれてるみたい。具体的な活動内容は明日、紅葉先生から直接話を聞くことになったわ。急だけどみんな放課後の予定空けておいてね。」
間木さんが可愛らしいスタンプで返していたので、それにならって自分も返信をした。
「小春、商店街がガラッと変わるって話知ってる?」
スマホを置き、小春へと話しかける。
「知らなーい!どう変わるの?」
「木とか花をいっぱい植えて、緑で商店街を賑やかにするらしい。」
「へー!遊ぶ場所は増える?」
「遊び場...はどうだろう。にいちゃんもまだ詳しく聞いたわけじゃないんだ。」
「そっかぁ〜。」
「明日説明があるらしいから、帰ってきたらまた教えてあげるよ。」
「うん!」
夕食も終わり、食器を片付けているとまたもやスマホに通知。
「こんばんはモモツカ。今夜は朝まで晴れのようですね。降水確率は10%未満です。」
そういえばあの後から全く連絡が来ていなかったな。
「こんばんはフローマ。何で天気予報なんだ?」
「挨拶をする際は天気の話を添えると良いと地上のウェブから学習しました。」
「間違ってはいないが、友達同士なら天気の話はしなくても問題ないぞ。」
「そうですか。地底には天気という概念がなかったので参考になります。」
「地底には雨とか雷みたいなものもないのか?」
「はい。そもそも空がありませんし雲も発生しません。地上の自然には興味深い事象がたくさんあります。」
地上で蓋がされてるから空がないということか。
「なら明かり、太陽は?」
「太陽は地上に1つしかありません。地底で太陽の役割を担っているのは地底樹です。」
地底樹...テリコプロトスのことだろう。
「木がずっと光ってるってこと?」
「はい。日中はほとんど地底樹が地底中を照らしています。日没とともに光は弱くなるので、夜に灯りをつけるというのは地上でも同じだと思われます。」
「太陽と月の役割を木一本でこなしてるわけだ。」
「はい。そのとおりです。」
なるほど、と1人納得していると、
「話がそれましたが、今日はお願いがあります。」
とメッセージが飛んできた。
「ごめんな、話そらして。お願いってなんだ?」
「会って話をしたいので喫茶店まで来ていただけないでしょうか。勿論明日以降で構いません。」
「明日の帰りに寄らせてもらうよ。少し遅れるかもしれないけど。」
「構いません。待ってますね。」
やり取りが終わると小春がこちらを見てむくれている。
「にいちゃん、もう片付け全部終わっちゃったよ!」
ごめんごめんと謝りながら小春をなだめる。
「明日喫茶店に寄ってくるから少し遅くなると思う。」
「えーずるい!何食べてくるの?」
「何も食べてこないって。ほら、この前借りたタッパーとか返さないといけないから。」
「そっかぁ〜。うん、わかった!」
その後は小春のハマっているアニメを一緒に観ながらゆっくりと過ごした。
「口切。今日の放課後エナトスに行くから。」
「そう、じゃあ回収は店でいいわね。」
翌朝、昇降口で見かけたので挨拶がてら話しておく。いつものごとくスタスタと去っていく口切を見送っていると、後ろから肩を叩かれた。
「百束くん、おはよ!」
「間木さんおはようございます。」
距離を詰めて少し小声で話しはじめる。
「ね、昨日どうだった?」
「番長ですよね。それとなく聞いてみたんですが話してくれませんでした。」
「そっかぁ、私も昨晩KINEしてみたんだけど大丈夫って言われちゃったんだよねぇ。」
「またタイミングがあったら聞いてみますよ。」
「うん!でも無理に聞くと逆効果だったりするかもしれないから注意深く見守ってあげてた方がいいのかな...。」
うーんと頭を押さえて考える間木さん。
「肥田さんも気にしてくれてるみたいでしたから、きっと大丈夫ですよ。」
「うん、そうだよね!もし私に手伝えることがあったらすぐに話してね。じゃあまた放課後に!」
大きく手を振って離れていく間木さんに手を振り返し、自分も教室へと向かった。
放課後、昨日と同じく中庭に行くと、既に間木さんが待っていた。
「お疲れ様でーす。」
「あ!お疲れ〜!肥田さんは先生呼びに行ってるよ!」
「そうでしたか。じゃああとは番長ですかね。」
と、そこで間木さんの鞄についているバターロールが目に入ったので指を差して話しかける。
「昨日話そうと思ってたんですが、そのバターロール早速つけたんですね。」
するとバターロールを手でワシャワシャし始める間木さん。
「うん!こうすると結構手触り良くて落ち着くんだ〜!」
えへへ、と顔を綻ばせてなお触り続けている。
「そんなに擦ったらすぐ千切れて取れちゃいますよ?」
と茶化して言ってみると、
「わ。それはダメ!」
と言って今度は優しく撫で始めた。
2人で話していると、程なくして肥田さんが紅葉先生を連れてやってくる。
双子というだけあって、相変わらずキバちゃんにそっくりだ。違うのは髪と性格くらいかもしれない。
「久しぶり!間木も百束も元気にしてたかな?」
「はーい!なずな元気です!」
「百束もそれなりに元気です。」
「よかったよかった。早速話をしたかったんだけど...柿迫は?」
「番長のことなので忘れてたりはしないと思いますけど...ちょっと連絡してみます。」
すぐにスマホを取り出し、KINEを使って通話をかける。
...しばらくコールしてみるが中々でない。
もういいかな、と切ろうとしたタイミングでようやく通話が繋がった。
「あ、番長?今どこだ?」
「モモ!悪い!まだ教室なんだ!これから向かうから、先輩たちにもそう伝えておいてほしい!」
そう言って一方的に通話が切られた。慌てているようだったが何かあったのだろうか?
「今から教室を出るみたいです。少し待ってくださいとのことで。」
「そう、よかったわぁ。」
胸をなでおろす肥田さん。心配していたんだな。
ほとんど部活には顔を出さない紅葉先生へ活動報告をしていると、番長が走ってくるのが見えた。
「あ、来ましたね。」
あっという間に近くまで来た番長が肩で息をしながら言う。
「遅れてすみませんでした!!話始めちゃって下さい!」
「んー柿迫大丈夫?...じゃあ疲れちゃうからみんな座ろっか。」
いの一番に座る先生に続いて、それぞれ芝生に座り始めた。




