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俺の靴下が片方ないっ...!!  作者: 三食咖哩
19/29

19足目 転送機と靴下

転送機に近づいていく店長さん。俺も間近で見れるように後を追う。


ゲームでこんな機械みたことあるなぁ。などと思いながら眺めていると、


『前方にラフタラを確認』


ひとりでに喋り始めたことに驚く。すぐ後ろにいた口切に小声で話しかけた。


「すごいな、音声アシスタントつきなのか?」


「地上のヘボAIと一緒にしないで、 この子は自己判断もできるし感情もあるわ」


「...マジ?」


『はじめまして、モモツカムツキの靴下を始めとした転送作業をしているフローマと申します』


「どうも...その百束睦季です。」


丁寧な言葉と流暢な喋りに、つい頭を下げて挨拶してしまう。


『そうだろうと思っていました。どうぞよろしく』


「よろしくお願いします...?」


『挨拶がしっかりできて好印象ですね、モモツカ』


「どうも...」


AIに第一印象を判断される日が来るとは。



「さぁ、今日も靴下を送っちゃいましょうね〜」


店長さんが機械の中央に靴下入りの袋を置くと、少し距離を取る。


「フローマちゃん、転送おねが〜い」


『かしこまりました。転送準備開始』


フローマの音声とともに靴下が小さい光に包まれ、機械の中で浮かび上がり始めた。


『転送開始5秒前。4.3.2.1』


『GO』


生暖かい風がどこからともなく吹いてくると同時に光も消えていく。


すると、靴下は跡形もなく消えていた。


『転送完了しました』


「ありがと〜フローマちゃん。」


くるりとこちらを向いた店長さん。


「どうだった?」


自分の靴下が消える事に感想を求められるとは思っていなかった。


「え〜っと...すごかったです。」


地底のよくわからない高度技術が。


「喜んでもらえて何より。ね〜フローマちゃん?」


『はい。これからの転送作業のモチベーションが上がりました。』


適当にした返事だったが、何やら嬉しかったようだ。


「店長、用も済みましたし早く店に戻りましょう。」


「そうね。ディナータイムの仕込みもしなくっちゃ〜」


『またお会いしましょうモモツカ』


「ええと...フローマさん?」


『フローマで結構です』


結構気安く話しかけてもいいのかな。


「ありがとう、またねフローマ」


『はい、また。』


俺たちの様子をみていた店長さんはクスッと笑うと、先に店へと戻っていく。

口切りはというと、


「ほら、さっさと戻りなさい。」


無情だ。できたばかりの友達と渋々別れて階段を上がった。



店に戻りカウンターを出ると、店長さんから封筒を手渡される。


「なんですか?これ」


「今日までもらった分の靴下代。あとこの前追加で購入してた分のお代もね〜。」


「あ〜!ありがとうございます!」


「協力してもらうんだから当然よ〜」


「...ん?何で追加で買ってたの知ってるんですか?」


「うふふ〜」


笑うだけで答えてくれない。

監視されているのか?心当たりがあるとすれば1人しかいない。


「口切?何か知ってるよな?」


「報連相は義務よ」


「どの口が言うんだそれ。」


後ろを向いて口笛を吹き始めた。

下手くそがお約束のハズだが、妙に綺麗な音で腹が立つ。


「まぁまぁ、これはめぐるちゃんのお給料から出てますから〜。許してあげてください。」


「え!聞いてないです店長!」


「安心してください、今回のおいたに関して、というだけですから〜。」


「そんなあ...」


真っ白に燃え尽きていく口切。ちょっと不憫にも思えるが罪は償ってもらおう。


「じゃあ俺は帰ります」


「は〜い、気をつけて帰ってね〜」


ひらひらと手を振る店長さんだったが、何かを思い出したかのように冷蔵庫を漁り始めた。


「これどうぞ。小春ちゃんと一緒に食べてくださいね〜」


タッパーを差し出されたので受け取ってみると、中にはエビチリが入っていた。


「わぁ、エビチリですか!ありがとうございます!」


「お店の試作品なの。後日感想教えてね〜。」


「店長さん何でも作れるんですね、メニューには和洋中、それ以外にも聞いたことのない料理までありますし。」


「地上の料理はどれも美味しいものばかりだから、勉強ついでにね〜」


「でも気に入ったら全部メニューに追加しちゃうのは悪い癖ですよ...」


少しずつ色を取り戻してきた口切が口を挟んだ。


「だからメニューが分厚いのかぁ」


「え〜でも喜んで試食してくれるじゃない、めぐるちゃん!」


「それは豆腐以外のものを食べたいからです...」


「豆腐?」


「アンタは気にしないで。ほら、弟が待ってるんでしょ。」


わざとらしく顔の横で手を振り、俺に帰るよう促してくる。


「...じゃあ店長さん、今日もありがとうございました。」


踵を返し、店の外へ出ようと扉を開けたところで――


「百束!改めてよろしく、今日はありがと。」


初めてちゃんと呼んでくれた気がする。後ろを振り返ると、既に口切は店の奥へと消えていくところだった。


店長さんと目が合い、やれやれと2人で肩をすくめるのであった。





家に帰り、早速エビチリをおかずに夕食を食べる。


「おいし〜い!エビでっかい!!」


「うん、美味しいなぁ。このエビチリを店長さんが気に入れば、メニューに追加されるんだってさ」


「へえー!また食べたいな。」


「まだ食べてる最中だろう。...まあこれだけ美味しかったら是非加えてほしいよな。」


あっという間に2人で平らげ、その後互いに風呂を済ませる。



「そうだ小春」


「なぁにー?」


今日もテーブルに向かってカリカリと何かを描いている小春。


「絵本の続きってあったか?」


「んーとね、ちょっと待っててほしいんだって!」


貸し出しでもされているのだろうか?


「そうか、わかった。」


ソファーに腰を下ろし、スマホをチェックする。


KINEに通知が入っていたので開いてみると、『喫茶エナトス』『口切』『フローマ』から立て続けにトークが送られてきていた。

連絡先を交換した覚えがないんですが...?


おそるおそる喫茶エナトスから開いていく。


「百束くんとの連絡が取れないと不自由なので、今後はこのツールでもやり取りさせていただきますね」


店長さんだ。直接お店に行かなくても話ができるのは確かにありがたいな。

でも電話番号もIDも教えていないのに何故俺のアカウントが分かったんだろうか。怖い。


口切からのトークは


「あ」


のみ。まぁ登録しておけという意味なんだろう。


フローマからは


「私にも直接インストールしてもらえました。よろしく、モモツカ」


できるのかそんなこと。どうなってるんだ地底の技術。

店長さんとフローマに挨拶を返し、口切りには「あ」とだけ返しておいた。


ついでに店長さんに、絵本を一緒に読んでいた人がいると伝えてみたところ、


「その方が私たちについて考察を立てるのは問題ありません。ですが、くれぐれも百束くんから『実在する』なんてことは言わないようお願いします」


と返ってきた。

店長さん、文面だとすごくキチッとしてる人なんだなぁ。

クララたちには悪いが秘密厳守らしいので、この話については知らないふりをさせてもらおう...。


ただ、甘太郎には口切のことも話してしまった手前、靴下について誤魔化す必要があるだろう。


「なんて説明するかな...」


ボソリと呟きながらテレビを点ける。偶然やっていた、甘太郎が面白いと言っていたバラエティ番組を観ながら、言い訳を適当に考えるのであった。

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