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兎と猫  作者: 藤原 智


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三十五話 この都合が良すぎる世界で、行動は計画的に行こー!

 まず初めにすべき事は、自分の強さを皆に見せる必要があった。

 神殿のボスに会いに行った。

 

「スキルポイントや経験値を増やす事は可能?」

「それは、設定された分しか無理です」

「どこかいい場所、モンスターは?」

「始まりの館の、名前登録の受け付けに話し掛けて、ウィンドウの名前入力欄に、希望の光と入力してください」


 それを聞くと、すぐに名前登録の受け付けに行った。


「詩韻兎様は、既に名前を入力済みですが、変更しますか?」


 と、受け付けが話すと、ウィンドウに名前入力欄が現れる。

 ボスに従って、『希望の光』と入力した。

 すると、コマンドが出る。

 『詩韻兎様専用コマンドです。詩韻兎様ご本人の確認中」


 少しして、『確認終了しました。詩韻兎様、御招待します』


 の文字が出た瞬間に、何処かの部屋に転送された。


 部屋は狭くて、小さなカウンターがあり、一人の女性だけカウンターの向こうに立っている。

 後ろはすぐに壁で私一人だけ立っているのが精一杯くらい狭い。


「ようこそいらっしゃいました。詩韻兎様」

「ええと、ここは?」

「ここでは、詩韻兎様のレベルを最高まで上げる事が出来ます。また、全職業のスキルをマスター出来ます」


 ここまでくると、笑うしかなかったけど、本当に都合が良かった。

 後は、計画通りに進めるだけになった。


 全てを最高まで上げ、スキルもマスターしてもらった。

 この時、初めて知ったのは、職業をマスターすると、一つのスキルを選んで、違う職業に引き継げるという事。

 前は、マスターしなかったからわからなかった。


 始まりの館で転職を繰り返し、全スキルの確認作業をした。

 その中には、思い出のスキルもあり、ニヤニヤしながら確認していたと思う。


 確認作業は、大変だった。

 アイテムマスターのスキルを確認していた時、あるスキルで手の動きが止まった。


 そのスキルは、『ストック』


 スキルの説明には、こう書いてある。


 『マスターした職業のスキルの中から一つストック出来る。このスキルにストックされたスキルは、別の世界に持ち運ぶ事が可能。』


 これだ。

 ロイが言っていた魔王の場所にスキルを持って行けるスキル、キルアさん達に伝え忘れたスキルは。


 あの時、華菜と仲直りした宴会。

 伝えていれば……。


 自然と涙が頬を伝った。

 暫く手で顔を覆っていた。


 館にいる数人が私の事を見ていたが、気にする事なく、確認作業を続けた。


 しかし、ストックが引っかかっていた。

 魔王のいる場所は、こことは違う世界ということ?

 もし、そうなら魔王の力で、街に転送させる事は可能なのだろうか?

 もし、無理なら計画が破綻するかもしれなかった。


 あの受け付けならと思い、もう一度、スキルをマスターした部屋に行って聞いてみた。


「魔王に、命令して、街に転送させる事は出来る?」

「確認します。お待ちください」


 受け付けの人は、何か考えている様に見えた。

 すぐに返事がきた。


「可能です。魔王自身も転送可能です」


 それを聞いて、計画の成功を確信した。

 この後の計画は、最大クランに喧嘩を売る。

 そして、街の外で私一人で、全員を相手して、勝つ姿を街の皆に見せる事。

 そんな事可能なんだろうか?

 

 ここで、失敗すると全ての計画が破綻する気がする。

 やるしかない。

 

 街に行くと、広場に居た同じクラン名を付けている、男女二人づつの四人のグループに声を掛けた。


「す、すいません……」

「はい?何でしょうか?」

「あ!この子!」

「ば、馬鹿!」

「え?私の事知ってる?」


 まさかと思った。

 リンク達がいた世界の人達?と期待した。

 だけど、話を聞くと、始まりの館で奇行をしている頭のおかしい子と言われているらしかった。

 地面に手と膝をつき、頭を地面に付けて、真面目に落ち込んだ。


「あ、あの、ごめんなさい」


 立ち上がり、


「いえ、色々とあって、聞きたい事があって、大きなクランで、魔王攻略出来そうなクランて何処かありますか?」

「へ?そんなんも知らないの?」

「ま、まあ」

「そんなん、一つだけでしょ?ヴァルハラだけでしょ?」


 手が震えた。


「ヴァルハラ……」

「そこだけだろ。魔王攻略出来るの」

「あ、あの、そのクランのクランマスターは?」

「キルアていう」


 この後何か言ってきたが、それどころじゃなかった。


 ヴァルハラ。

 キルアさん。


 まさか?

 魔王に殺されたと……。

 そうでは無く。この世界に?

 猫が作った世界だ。何があってもおかしくない!


 胸が熱くなるのを感じて走り出した。

 あの人達なら必ずメインクエを進めている筈だ!


 会いたい!会いたい!

 


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