十八話 裁判しよー
「あのー。裁判、まだですか?」
階段を上がり、扉を開けてそう言った瞬間、部屋の中にいたポリスたちが一斉にこちらを見た。
「なっ……!?」
「どうやって出てきた!?」
あちこちから驚きの声が上がる。
私たちは、その反応がおかしくて、笑いを堪えるのに必死だった。
「とりあえず、俺たちの話くらいは聞いてほしいんだが?」
リンクが落ち着いた声で言う。
けれど、ポリスたちはその言葉をまるで聞いていなかった。
「大人しくしろ!」
「動くな!」
「もう一回牢に戻せ!」
怒鳴り声が飛び交う。
ぞろぞろと私たちを取り囲んでくる。
直哉が、呆れたように溜息をついた。
「こんな奴ら相手にしてるだけ、アホらしいな」
「だねー」
華菜も、うんざりした顔で頷く。
私も、まったく同じ気持ちだった。
その時、部屋の奥から声が飛んできた。
「何をしてる! 早く捕まえろ!」
見ると、一番奥の席にいたポリスの幹部たちが、こちらを指差して喚いている。
その顔を見た瞬間、ふつふつと腹の底が熱くなった。
「……皆、ごめん」
「うさぎ?」
華菜が、不思議そうに私を覗き込む。
「何する気だ?」
リンクが、少しだけ警戒した声で聞いてくる。
前を見たまま答えた。
「一回、痛い目見た方がいいかもね。この人たち」
そう言った瞬間、私はスキル〈疾風〉を発動させた。
「おい、うさぎ!」
直哉が止めようと手を伸ばす。
でも、もう遅い。
床を蹴った瞬間、体が一気に前へ弾かれ、ポリス達の頭を飛び越える。
次の瞬間には、幹部たち四人が座る机の上に立っていた。
「なっ!?」
幹部たちが目を見開く。
一人は驚きのあまり、椅子ごとひっくり返った。
「何だ、お前は!?」
立ち上がった幹部の一人が、怒鳴るように言う。
机の上から、部屋をぐるりと見渡した。
全員の視線が、こっちに集まっている。
少しだけ恥ずかしくなって、私は机の上から飛び降りた。
ちょうど、立ち上がった幹部の目の前に着地する。
「ねえ」
その男を見上げた。
「話くらい、聞いてほしいんだけど?」
「聞くわけないだろ!」
その返事を聞いた瞬間、何かが切れた。
考えるより早く足を振り上げていた。
「ぶっ!」
鈍い音がして、ハイキックが男の顎を打ち抜く。
幹部の体がぐらりと揺れ、そのまま床に倒れ込んだ。
それを見ていた残りの二人が、慌てて立ち上がろうとする。
けれど足がもつれたのか、情けない声を上げながらその場で転ぶ。
腰のナイフを抜いた。
それだけで、部屋の空気が一変する。
「ひっ」
誰かが息を呑む音が聞こえた。
倒れている幹部のそばへしゃがみ込み、その喉元へナイフを突きつける。
「早く裁判しようか」
自分でも驚くほど、声は冷たかった。
「じゃないと、本当に刺すけど?」
ほんの少しだけ、刃を押し込む。
喉元に赤い筋が走り、血がにじんだ。
「わ、わかった!やる!やるから!」
床に転がっていた幹部たちが、何度も何度も頷く。
立ち上がると、両手を軽く払うようにして、
パン、パン。
と、手を叩いた。
それから、両手を上げてにっこり笑う。
「もう暴れないから!裁判しよー!」
奥の方で、リンク、華菜、直哉が笑っていた。




