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9.動く塔

校門の外へたどり着いた動物たちは、鉄格子の隙間から中を覗き込む。


「見えない……。」


リスが背伸びをする。


「メアリー、大丈夫かな。」


カラスは空へ舞い上がった。


しかし救護室の窓には白いカーテンが掛かり、中の様子は分からない。


動物たちは、不安そうに門の前で待ち続けるしかなかった。


−−−−−−−


その頃、救護室の前ではデジレや他のクラスメイト達が心配そうに扉を見つめていた。


扉の内側では3人のシスターがメアリーの手当てをしている。


第三のシスターがベッドで眠るメアリーの額へ手を当てる。


「熱があります。」


第一のシスターと第二のシスターが顔を見合わせる。


「とにかく安静に。」


「授業のことは後で考えましょう。」


第三のシスターは静かに頷いた。


「今は眠らせてあげてください。」


その時だった。


――ズシン


建物が小さく揺れる。


「何?」


第二のシスターが天井を見る。


――ズシン ――ズシン


揺れは少しずつ大きくなる。


廊下から悲鳴が聞こえた。


「塔だ!」


「塔が歩いてる!」


第一のシスターが窓へ駆け寄り、カーテンを開く。


森の奥から、古びた石造りの塔がこちらへ歩いてくる。


巨大な石の脚が、一歩踏み出すたびに地面を震わせる。


「そんな……。」


生徒たちも教室の窓から顔を出す。


誰もが目を疑った。


塔は一直線にこちらへ向かって歩いてくると、救護室の窓の前で止まった。


窓際で震えるシスターの顔が見える。


塔から石の腕が生え、空に向かって伸びる。


まるで振りかぶるように。


シスターの顔が青ざめ、窓際から姿が消える。


次の瞬間。


――ドゴォォン!!


石の腕が修道院の外壁を打ち砕いた。


石壁が崩れ、救護室がむき出しになる。


さらにもう一本の腕がゆっくりと伸びる。


「メアリー!」


第三のシスターが駆け寄る。


しかし巨大な石の手は、眠るメアリーのベッドを壊すことなく、そっと持ち上げた。


まるで壊れ物を扱うような、不思議なほど慎重な動きだった。


そのまま塔の中へと運び込まれていく。


音を立てて救護室の扉が開く。


駆け込んできたデジレの目の前でメアリーが塔に吸い込まれた。


塔は向きを変え、森の奥へ歩き始める。


――ズシン ――ズシン


その姿は、夕暮れの森へ消えていった。


「……メアリー」


塔が去っていった方角を見据えながら、デジレは唖然としていた。


校門の外では、動物たちが塔の歩いていった方角へ駆け出していた。

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