8.炊き出し
塔の横。
今日も動物たちが集まっている。
リス、ウサギ、キツネ、カラス、フクロウ。
親と暮らせなくなった子。
家に居場所をなくした子。
大人を信じられなくなった子。
夕暮れになると、皆ここへやって来る。
「今日もパキってる?」
リスが大きく口を開け、青く染まった舌を見せる。
「いえーい。」
「その青いお菓子、また食べたの?」
キツネが苦笑する。
「映えるから。」
「ほどほどにしなよ。」
広場では、大きな鍋から湯気が立っていた。
「順番だよ。」
深いフードを目深にかぶった人物が、静かにスープをよそっている。
顔は見えず年齢も分からない。
ただ、その声だけは不思議と優しかった。
「今日は野菜のスープだ。」
フードの人物は、一人ひとりに器を手渡していく。
「ありがとう!」
「食べ終わったら、ちゃんと器を洗って返すんだよ。」
「はーい。」
キツネは、どこか嬉しそうに首元の小さなアクセサリーを見せた。
「見て。昨日もらったんだ。似合う?」
フードの人物は少しだけ困ったような表情になる。
「……物をくれる相手ほど、よく見なさい。本当に大切にされているのか、それとも利用されているだけなのか。」
キツネは笑顔のまま、小さく頷いた。
その隣では、ウサギが長袖の袖口を何度も引っ張っている。
「暑くないのか?」
「……平気。」
短く答え、それ以上は何も話さなかった。
少し離れた場所では、フクロウが木箱を裏返して将棋盤を広げていた。
「誰か一局どうだ。負けても勝っても、ここでは飯は減らないぞ。」
張りつめていた空気が少しだけ和らぐ。
と、そこへ⋯⋯
「カァ! カァ! カァ!」
空の彼方から、カラスが喚きながら飛んできた。
息を切らすように鳴きながら、何度も修道院学校の方角と自分の羽を交互に指し示す。
「どうした?」
リスが駆け寄る。
カラスは激しく羽ばたきながら必死に伝える。
「カァ! カァ!」
フクロウが目を見開いた。
「……メアリーが倒れたのか!」
その場の空気が一瞬で凍りつく。
フードの人物の手も止まった。
「大丈夫かな……。」
「心配だ。」
「修道院学校へ行こう!」
子どもたちが次々と立ち上がる。
フードの人物は静かに鍋の蓋を閉じた。




