3.共学
聖エーデル修道院学校は、長い歴史を持つ名門校だった。
しかし、その栄光は少しずつ色褪せ始めていた。
少子化による生徒数の減少、寄付金の減少、物価の高騰。
理事会では、毎月のように重苦しい空気が流れていた。
「このままでは、あと三年も持ちません。」
帳簿を閉じた第一のシスターが静かに告げる。
第二のシスターが大きくため息をついた。
「何か手を打たなければ……。」
「もう十分、打ってきました。」
第三のシスターが指折り数える。
「黒人シスターがゴスペル部を作り、聖歌をラップ風に編曲して全国大会を目指しました。」
しかし、地区予選敗退。
「アイドル部も作りました。」
優勝すれば学校を救えると、生徒もシスターも本気だった。
けれど、予選敗退。
「動画配信も始めました。」
「修道院カフェも開きました。」
「文化祭も地域へ開放しました。」
どれも一時的な話題にはなった。
だが、経営を立て直すには至らない。
部屋は静まり返る。
やがて第一のシスターが口を開いた。
「……最後の方法があります。」
二人は黙って顔を上げた。
「男女共学です。」
その一言で、空気が止まる。
「この学校は百年以上、女子教育を守ってきました。」
第二のシスターが呟く。
「ですが、伝統だけでは子どもたちは守れません。」
第一のシスターは帳簿を見つめた。
「学校そのものがなくなれば、教育も居場所も失われます。」
長い沈黙の後、第三のシスターが微笑んだ。
「学校を残しましょう。」
その一言で決まった。
翌日、講堂に全校生徒が集められた。
第一のシスターが演壇へ立つ。
「皆さんに、大切なお知らせがあります。」
生徒たちは顔を見合わせる。
「来年度より、本校は男女共学となります。」
一瞬の静寂。
「ええっ!?」
講堂中に声が響いた。
「男子が来るの!?」
「うそでしょ!」
「ちょっと楽しみかも。」
「私は反対!」
期待と不安が入り混じる。
最後列にいたメアリーは、小さく首をかしげた。
「男子って……そんなに珍しいものなのかな。」




