13.祝福と呪い
部屋には、不思議な静けさが流れていた。
動物たちは、目の前の魔女を見つめている。
「魔女なの?」
「じゃあ魔法が使えるの!?」
「見せて見せて!!」
動物たちの目に期待が宿る。
カラボスは小さくため息をつく。
「……まあいい。」
杖を床へ軽く打ち付けた。
「一度だけだよ」
動物たちから歓声があがる。
火の精霊は暖炉の前で腕を組んだ。
「子供に気軽に見せるのは感心しねぇな」
カラボスは無視して続ける。
「魔法には二種類ある。」
杖をゆっくり掲げる。
「祝福。」
杖の先から金色の光があふれた。
光はカラスを包み込む。
「『オオゴエ』」
次の瞬間。
カァ!!!!!
鳴き声が塔中に響いた。
「うわっ!」
他の動物たちが耳を押さえる。
カラボスは淡々と言う。
「祝福は、言葉を強める。願った性質を現実へ近づける魔法だ。」
今度は杖を反対へ向けた。
黒い光が揺らめく。
「では、呪い。」
もう一度カラスへ杖を向ける。
「『オオゴエ』」
黒い霧がカラスを包む。
カァ!
ボリュームが元へ戻る。
「声が小さくなった!」
カラボスは静かに頷いた。
「呪いは、言葉を弱める。願った性質を現実から遠ざける魔法だ。」
メアリーが首を傾げる。
「遠ざける……?」
「例えば、『カネモチ』と祝福すれば、裕福へ近付く。」
「だが、『カネモチ』と呪えば、金持ちになりにくくなる。」
動物たちは顔を見合わせた。
「そんな魔法だったの?」
「知らなかった……。」
火の精霊が鼻で笑う。
「だから妖精と魔女は、同じ言葉でも意味が真逆なんだ。」
カラボスは杖を下ろした。
「もっとも、ほとんどの人間は、呪いの語感や色で勝手に怯える。意味までは知ろうとしない。」




