第四幕(その二)
物語の所々にオリジナルシリーズに出てきた登場人物や小ネタを含みますので、
オカ研の旗の下を先に読んでいただきましたらより一層楽しめていただけます。
ここは想像すら出来ず、予測もつかない四次元のような世界。足を踏み入れた四人の行く手を拒む、もう逃げれない迷路。予期しないことが起こり、油断のならない場所。しかし四人は諦める事なく懸命にその“塔”が何であるか、突き止めようとしていた。
「カウントがあと10分を切ったわよ!」
由香はタイマーを睨みつけあたふたした。
「なんだか怖いわね。0になったらどうなるのよ」
翠は両腕を抱え込み怯えている。
「そんなの決まっているじゃない!人類の滅亡・・、その前に私たちの終わりよっ!」
由香はもうとっくに絶望気味だ。
「いいように考えればいいのよ。誰かさんの誕生日とか、年明けの恒例行事とか」
楽天的に考える沙織はそういうところが違うところ。
「こんなに目まぐるしく動くこの建物の中で気分転換できるような発想はないわっ」
翠は目を剥きありえない表情だ。
「チョット待って。カウントされるには何か意味があるのよ。人類滅亡、誕生日、年末の恒例行事以外に他に何かあるはずだわ」
綾乃はひとり冷静沈着である。
「他に何かといえば・・、そうクイズだわ!よくあるじゃない、チッ、チッ、チッ、チッって」
沙織は思い当たる節を手っ取り早く言った。
「それじゃ、何かの問題に答えればいいのねっ」
翠もほんのちょっと安心した。
「誰が出題する問題なのよっ。私たち以外誰もいないじゃない」
由香はひたすらあきらめムードだ。
「その問題を筋道立てて私たちが探し出すのよ。そして正しい答えを導き出すの!そうすれば此処から脱出できるかもしれないわ」
綾乃の冴えた頭で切羽詰まった状況を変えようとした。
「あっ頭まいぃ!出ましたねぇ。名探偵綾乃の何の根拠もない名推理!」
沙織は褒めているのやら貶しているのやら・・。
「まず、この場所に来た原因を探すのよ。色んな場面で四人とも記憶が曖昧かもしれないけど、分岐を探せば糸口が見つかってくるはずよ」
綾乃はひとつひとつ難解を崩していった。
「まず、私たちは学園執行部にやいのやいの言われて、文化祭に出展するための宇宙人を捕まえに有名な噂話の“塔”にやってきたのよ」
翠は一番最初の成り行きを思い出した。
「そう言えば丘で見る“塔”の形はすべて変わっていたわ。電信柱だったり、古風な建物だったり、もう既に潰れちゃったり・・」
次に沙織がここに来て見た光景を思い出した。
「だけど、あの銀光りする大きな球はいつもいたわ」
由香の頭には謎の物体のイメージが離れない。
「その怪しげな球に私が最初に飲まれ込まれちゃって・・、あれっ?おかしいわね・・私はモヨウ(・・・)して岩陰にに用を足しに行ったのよ・・?」
翠の記憶がいきなりチグハグになってきた。
「そしてキーワードのように出てきた“グリーングラス”って言葉・・どういう意味なのかしら・・」
由香も謎の言葉がかすかな記憶で残っている。
「だけど、翠も由香も途中から消えちゃったじゃない」
あっけらかんとした沙織が二人に言った。
「ずぅ~と一緒にいましたぁよぉー」
翠と由香が声を合わせて大きく言った。
「そうよっ!最初から私たち四人は一緒だったわ。いつも一緒だったのよっ」
綾乃は二人の大声を被せるように声を張り上げた。
「いきなりなによっ!何が言いたいの?」
翠は恐縮したように身を縮こませた。
「いい。私たちは色んな噂が出回る“塔”を見つけようと来たけど、一番最初にたどり着くのは“塔”が立っているという“丘”よっ!そこがありとあらゆる問題の発生源だわ」
綾乃は堂々と自信を持って言った。
「結局のところ何が言いたいの?」
由香は不安な気だるい声で言った。
「だからぁ~。目に見えるものを疑って掛かれってこと!この“丘”こそが正真正銘の噂の根源!異空間そのものなのよっ!」
綾乃はもう自信満々だ。
「突拍子すぎるわね~」
翠は綾乃のいつもの事と親身じゃない。
「それじゃ、この“丘”が私たちの記憶を捻じ曲げているとでも言うの?」
由香は綾乃の意見に寄り添った。
「そうよ。私たちは本当はこの場所にいないのかもしれないわよ」
飛躍しすぎた綾乃の見解である。
「まさか夢の世界ってことっ!四人が同じ夢を見ているのっ?」
翠はあっけにとられ口を大きく開けた。
「あっ!」
由香も口を大きく開けた。
「なによっ!突然。あっ!って!何か思い出さなくていい事を思い出したの!?」
沙織の脳裏に嫌な予感が横切った。
「そう言えば私たちもう中学三年生よね・・。来年受験じゃない・・。こんな事している暇あるの・・」
由香は自分自身、恐る恐る言葉を飲み込みながら喋っている。
「嫌な事を思い出しちゃいましたね・・」
沙織なんかアチャー!だ。
「まさか!本当の私たちの現実はお受験地獄で、そのノイローゼでこんな夢を見ているの!」
翠もすぐさま悲鳴を上げそうだ。
「嫌だっーー!現実に戻りたくないっーー!」
先に沙織が悲鳴を上げた。
「見てっ!見てっ!カウントが3分を切りましたよっ」
由香がタイマーに目をやり慌てている。
「正解して欲しくないぃー!戻ればやっぱり目の前には受験地獄よぉー!」
翠の現実逃避したい気持ちは山々だ。
「いつも一緒だった四人が別れてバラバラになる時・・、それは進路問題のときよ・・」
綾乃はいつになく冷静に言った。
「それじゃ、私たちは現実に帰ればもう二度と異世界に戻れないっていうことなのっ!」
沙織も受験勉強は懲り懲りだ。
「そんなことなら此処にずぅ~といたいわぁー!」
翠は既に爆発状態である。
「カウントが0に差し掛かるわよー!」
由香はしゃがみこみ皆も頭を抑えかがみ込んだ。
カウントが0を指した。
「あれっ!?何も起こらないわね?」
沙織が最初に頭を上げた。
「なんだか拍子抜けね・・」
由香の全身の力が抜けている。
「だけど良かったじゃない。ほっとして」
綾乃は引きつって微笑んだ。
「#&*+`~=|$"^-\/,・・・」
翠が何かおかしなことを喋っている。
「えっ・・、どうしちゃったの翠・・」
綾乃が心配そうに近寄ってきた。
「また翻訳がいりますなぁ~」
沙織はチンプンカンプンのお手上げ状態だ。・・つづく。
綾乃「どう、私の読みは正しいでしょ」
沙織「いつもの推理は強引、傲慢よっ」
翠 「なによそれっ」
由香「いよいよ最終回」
沙織「で、オチはなにっ!」
翠、由香、綾乃「衝撃のラストよっ!」
全員「次回、11月2日土曜日更新!」




