エピソード ルールカ
もうもうと砂埃が舞う中を、大勢の子供たちがボールを追って駆け抜ける。乾いた土の匂いが鼻腔をくすぐり、肌を焼く容赦ない日差しと、汗の匂いが混じり合う熱気は、まさに生命の躍動そのものだった。
「こらぁ!ちゃんとお水飲みなさい。熱中症になるわよ!」
広場に面した建物の庇の下、椅子に座ってその様子を見守る老女が、優しくも芯のある声で、愛情をこめて注意を飛ばす。底なしの元気の良さに、声をかけてあげねば倒れるまで走り続けるのは想像に難しくなかった。保護者がしっかりと見守ってやらねばならなかった。
「「「「は~~~~い」」」」
いい返事を返すと、子供たちは走ってそれぞれの水筒に入れておいた水を飲み始める。それが終わるとまた走り出してゲームを再開させ始めた。
「院長先生。また遊びに来ました。」
そんな子供たちを見守る老女に向かってルールカは声をかけると、院長のほうは、ルールカの顔を見た瞬間に顔を輝かせて
「いらっしゃい!」
嬉しそうに院長がルールカに近づいて、口元をほころばせた。
ここは孤児院だ。様々な理由で親を失った子供たちを救済する施設。その孤児院の裏手に広がる林を抜けていくと、墓石が立ち並ぶ一帯に踏み入っていた。風の音が木々の葉を揺らし、鳥の声だけが時折、その静寂を破る。しかし、それすらも重い沈黙の一部であるかのように感じられた。綺麗に清掃されて管理が行き届いている。
土の湿った匂いと、供えられた花の微かな香りが混じり合い、ルールカの記憶の扉をそっと開く。ルールカは墓に一礼して、手に持ってきていた花を1つ1つ供えていく。ただ黙って黙礼を繰り返す。この下に眠るのは、ルールカの部下だった者達と、サマールルの戦争で散っていった兵達の墓だった。
彼女は時間を見つけるとこうやって墓参りに訪れる。冷たい墓石に触れるたび、ルールカの心の奥では「偽善と義善」という自覚が、まるで冷たい刃のように心を斬り裂いた。彼女は、あの戦争で守りきれなかった部下たちの顔を一人ひとり思い浮かべた。彼らの最期の叫び、血に染まった瞳、そして自分に向けられた信頼の眼差しが、今も鮮明に脳裏に焼き付いている。彼らの死は、ルールカ自身の生を強く戒める。彼らの犠牲の上に、ルールカは今ここに立っている。
冷たい疑念が、ルールカの心の奥底に氷のように張り付いていた。孤児院を訪れるたび、彼女は亡き部下たちの顔を思い浮かべ、その死が自分を「生きる」ことへと縛り付けていると感じていた。この墓参りも、子供たちとの触れ合いも、結局は自分自身の罪悪感を和らげるための「偽善」ではないのかと、自嘲にも似た感情が胸を締め付ける。それでも、彼女は足を止めなかった。彼らの犠牲の上に立つ自分の生を、無為に過ごすことだけは許せなかったからだ。
ひとしきり祈りを済ませると、院長を伴って孤児院に足を向けた。
孤児院の奥にある食堂で、大きな円卓に子供たちを囲ってルールカは椅子に腰かける。国からの補助も手伝って子供たちの生活は、贅沢ではないが慎ましくもない。そんな普通を感じさせる生活感がそこにあった。食堂には、お菓子の甘い香りと、子供たちの賑やかな話し声、そして時折聞こえる楽しそうな笑い声が満ちていた。親がいないといった寂しさを微塵も感じさせない、その微笑ましい光景を、院長は優しい眼差しで眺めている。子供たちはルールカがお土産に持参したお菓子を頬張っていた。
「ねぇねぇ、ルールカ姉ちゃん!この前話してくれた、あの大きなトカゲみたいな魔物、どうやって倒したの?」
ルールカの隣に座る男の子がうきうきした表情で、お菓子を完食してから身を乗り出して聞いてきた。別の女の子は目を輝かせながら、
「魔導船が沈んだ時の無人島の話も聞きたい!サバイバルってどんな感じだったの?」
と尋ねる。何度もこうやってお土産を持参してやってくるものだから、ルールカは顔を覚えられ、話をせがまれるのが常だった。他の子供たちもルールカに向かって冒険譚をねだってくる。餌付けしているわけではないけれど、ルールカはしっかりと慕われている様子だった。院長に顔を向ければ、微笑んで頷いてくれる。
ルールカは、以前話した事を除外して、思い出しながら冒険者について語ってあげた。
「あのトカゲみたいな魔物?うーん、あれはね、すっごく大きくて、しっぽをブンッて振るだけで木がバタバタ倒れるんだ!でもね、ルールカ姉ちゃんは、ヒュンッて素早く動いて、ザシュッて一撃で…」
と、子供にも分かりやすい擬音語を交えながら、身振り手振りで説明する。ダンジョンはまだ詳しくは知らないけれど、アンチュア領で冒険者として活躍していたことを思い出しながら、懐かしくもあり、初めての魔獣、魔物との遭遇で戦々恐々としながらも、斃した記憶が鮮やかに蘇る。みんなが顔を輝かせて話を聞いてくれるものだから、ルールカもついつい尾ひれをつけて盛り上がってしまう。面白おかしく語りながらも、それでいて、命がけの職業だと、念を押すことは忘れない。
「お金を稼ぐにはいいかもしれないけれど、対価は命よ。本気で目指すなら相当な覚悟が必要になるわ。そんな危ない橋を渡るよりは、勉強に精を出して安全な職業を見つけてほしい」
と、彼女は真剣な眼差しで子供たち一人一人を見つめた。その言葉は、戦場で多くの命が散るのを見てきた彼女自身の懺悔と、子供たちには同じ道を歩んでほしくないという、親心にも似た切なる願いが込められていた。騎士としての使命感と、この穏やかな日常を守りたいという人間らしい感情が、彼女の心の中で複雑に交錯していた。
まだ日も高い位置にあるので、子供たちに混じってボール遊びに興じる。元気いっぱいな子供たちがはしゃぎ回り、それを追いかけ回しながら、あっちこっちに振り回されるルールカ。
戦場で魅せる彼女とは全く正反対の彼女のもう1つの一面だった。遊び回りながら、先々でルールカは子供たちに引っ張りだこになり、笑って、あやして、しゃがんで、子供を抱きしめて、頭を撫でまして、可愛らしく笑っている。
そうこう過ごしていると、お決まりなのか?左右に両手を繋がれて笑いながらくるくる回るルールカに男の子が両手をわきわきさせながら背後に迫っていく。
背後に迫る男の子に気づいてない様子のルールカに、その子はスカート捲りをする。
「きゃぁ!?」
腰まで捲れたスカートに、白色の下着。
可愛い悲鳴を上げて、慌ててスカートを押さえるルールカが、敢行に至った男の子に振り返る。
「今日は白だ!」
頬を紅潮させるルールカは、その子に拳骨を喰らわせる。もちろん本気ではない。
普段は戦場で冷静沈着な指揮を執り、敵を容赦なく打ち倒す『サディスティック』の顔を持つ彼女が、ここでは一人の女性として、無邪気な子供たちのいたずらに翻弄されている。他の子供たちは大騒ぎして、楽しそうに駆け回る。やはりいつものお決まりのパターンであったようだ。それを追いかけるルールカは恥ずかしがる素振りを魅せながら笑っている。
盛大に遊び回った後、すっかり遊び疲れてしまったのか、子供たちは2階にある寝室で小さい身体を寄せ合って寝息を立て始める。
そんな子供たちをルールカは膝を崩して、優しさに満ちた眼差しで子供たちを撫でながら見守る。
「いつもありがとうございます。」
完全に寝入った子供たちを眺めて院長が微笑んで、礼をする。
「いえいえ。私もこうしていると癒されますので。」
純真無垢な子供たちに囲まれているせいか、鬱屈した気分は欠片も湧かない。戦場に身を常に起きたがるルールカにとって、この尊い時間がゆっくりと感じられ、穏やかでさえあった。
「どうか気を付けてくださいね。ルールカ様。いつもいつまでも武運を祈っております。」
しわくちゃの両手がルールカの手を包み込む。院長の言葉が、どこまでも優しい響きとなってルールカの耳朶にしみ込んでいく。
ルールカは、その温かい手にそっと自分の手を重ねた。
「ありがとうございます、院長先生。私も、皆さんの幸せを心から願っています」
と、静かに答えた。彼女の心には、院長の祈りが、まるで戦場での守護の魔法のように感じられた。
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夕刻の空は沈む太陽の餞別で橙色に染まり、流れる雲はゆったりとした動きで一日の終わりを労ってくれる。
泥と埃、涙やなにやらで衣服が汚れていたので、買い物など寄り道はせずに、サマールルからの付き合いの鳥型の魔獣ダッチに跨って、真っすぐと帰宅に向かった。因みに、どうにも懐いてしまったらしく愛着が沸き、モフと名前を付けて可愛がっている。
クーデターの混乱がようやく収まりつつあった王都は、まだ傷跡を残しながらも、新たな秩序を模索していた。失われた活気を取り戻そうと人々が動き出す一方で、権力の空白が新たな野心を生み、不穏な空気が漂う場所も少なくなかった。
そんな中、シルヴィ王女の近衛騎士として活躍した彼女たちは、クーデターの際に空き家となった広大な屋敷を新たな拠点とすることになった。それぞれの故郷での役割を終え、家族や大切な者たちへの報告を済ませた彼女たちは、それぞれの思いを胸に王都へと戻ってきたのだった。
あらかじめ視察をしていたので、4人だけで住むには広すぎる。そんな訳でルールカは乳母でもあったマァムを連れて、エリーゼは貯め込んでいた古書を、希望者を募って孤児院から子供たちを使用人見習いとして雇うことにする。
教育係はマァムに一任される。文字の読み書き、簡単な計算、礼儀作法、家事、炊事などと、マァムはサキュバスという事もあって、性教育も含まれる。ルールカもマァムからサキュバスとしての知識を彼女から教わって育ってきた。さすがにサキュバス的なものではなく、正しい性知識というものだ。男と女は、それぞれ異なる。そういった体の変化に対しての教育である。
改装された屋敷は、ゴーンド商会を通して注文をした。外観は質素だが、品が良く、三階建ての建物で、奥行きもあり、新築同然の邸宅となっている。
「・・・」
生活魔法が普及し、王都には湯に浸かる文化はない。しかし、ゴーンド商会はルールカの幼い日の記憶を辿り、セイギの家で堪能したあの風呂を、見事に再現してくれたのだ。浴室の重厚な扉を開けた瞬間、熱気ではなく、檜の清々しい香りと、微かに石鹸の甘い香りが混じり合い、胸いっぱいに流れ込んできた。
湯気でほんのりと霞む視界の先に、要望通りに造られた風呂は、屋内でありながら、頭上と奥の僅かな空間だけが空に開け放たれている。周囲を囲むのは、厚く、丹念に磨き上げられた木目の美しい囲い。
それは外の喧騒と視線を完璧に遮断し、10人程度が悠々と浸かれるほどの大浴槽に満たされた、肌に吸い付くような滑らかな湯の静謐なきらめきだけを、内側に閉じ込めていた。ピンクプラチナの髪のサキュバスが裸になって湯殿に足を踏み入れると、足裏に伝わるのはひんやりとした石の感触、そして湯に浸した瞬間の、じんわりと身体を包み込む温かさに、思わず息を呑んだ。
湯船の縁に触れると、指先に伝わるのは、今日はまだ誰も浸かっていない木材の、乾いて滑らかな質感。この囲いの高さ、この木材の選び方、外気が頬に触れる冷たさと、浴槽に張られた透明な湯のコントラスト。その全てが、幼い頃の記憶を呼び覚ます、まさに『理想郷』そのものだった。
湯気が立ち込め、肌を優しく撫でるような静かな空間で、ルールカは久しく忘れていた深い安堵の息をついた。
幼い頃、セイギの家で感じたあの温もり、あの満ち足りた喜びが、異世界の壁を超えて今、この場所で蘇ったかのようだった。ゴーンド商会の心遣いと、その再現度の高さに、ルールカの胸には言葉にならないほどの感動が込み上げ、思わず熱い吐息が漏れた。
「ふぅ・・・」
その一言に、彼女の心に満ちる幸福が凝縮されていた。
「お隣失礼します。」
そう告げて、寄り添うように浸かってきたのは、マァムだ。彼女はピンク色の長い髪と妖艶なエロティックな雰囲気を醸し出すサキュバス。ルールカの乳母であり、母であり、姉であり、先生であり、メイドだ。
ルールカはアンチュア家で生を授かったわけではない。もう1つの世界テンプテーション・ガーデンで生まれたのは良いが魔素と呼ばれる空気のようなものが、生まれたばかりのルールカは拒否することになり、こちらの世界で厄介になることになったわけだ。
この時に、一緒に生まればかりの赤ちゃんを抱いていたのが、マァムだ。彼女は事の次第を説明、時にはチャームを使ってルールカをアンチュア家の養女という形で収め今に至る。
アンチュア家は元々サキュバスに対して好意的なのだが、周りはそうでもない。やはりサキュバスというイメージは良くないのだろう。特に女性陣からは。
とは、言え。当主ギートルクとその家族は快く迎え入れてくれて大事に騎士として育てられてきた。そして、ルールカがこの地に住まうことを知った他のサキュバス達も大勢やってきてメイドとして活躍しながら、ルールカの成長を見守る。もちろん男性社会の騎士達が生活するうえでもっとも煩わしい問題も彼女達によって解決することになる。
そんな彼女達を取りまとめて、ルールカ専属のメイドとして君臨するのがマァムだ。サキュバスは魔人といった種族に分別されるわけで、基本的に性行為は必要とはしない。繁殖行為を行わなくとも、寿命は長く、死んだとしても依り代が見つかればまた、復活する。
では、なぜ彼女達は淫魔、夢魔とかなどと呼ばれるのか。それは興奮度が彼女達にとって好ましいものであるからだ。人族を興奮させるのに手っ取り早いのが、性的なものだ。後は彼女達の好みによって、直接的なのか間接的なのか、と分かれる。もちろん例外もある。ルールカのように好戦的な興奮を好むものもいるし、好きなものに対して、自分で興奮して悦に浸るものもいる。まぁ好みは個人個人にあり様々な趣向があり、全般的に性的な方向に向かうのがサキュバスという種族の特徴だ。子を孕むことはない。孕んだとしても異形な物が生まれ、育てようとしても暴れ回る獣のような存在となり後々、処分の対象となる。
そんなサキュバスだからこそ、リリスから生まれたルールカに対して、興味を抱かせるのに十分であり、彼女の成長を温かく見守る。リリスからの教育方針もあるが、アンチュア家に託した以上、余計な手出しは無用と厳命を受けているが、マァムは専属なので除外させている。
そのマァムの立場を求めて、影で熾烈な抗争が行われていた形跡はあるのだが、マァムのこの立場が揺らぐことなく。こうして風呂場で背中を流したり、マッサージしたりと彼女はこのひと時を堪能している。そう、マァムはルールカが好きすぎてしょうがない。ある意味の性癖を持ったサキュバスでもある。
「ちょっとピリっとするかもよ?」
「かまいませんわ。血行が良くなって美容に良さそうです。」
と言いながら、身体を密着させて来るマァムだ。幼い頃は、生活魔法ですましていたので、こういった裸でお風呂に浸かる行為は彼女にとって新鮮なのだろう。満面の笑みの彼女だ。
「紫電を纏うことになったのはいいけれど、まだ制御が上手くできないの。」
シルヴィの夢の中で得た紫電。夢から覚めても発することが出来るので、ルールカは紫電をコントロールできないかと、楽しそうに試行錯誤中だ。彼女は、身体魔法で身体強化を図れることは幼い頃から自覚しているが、こうやって目に見える形で雷属性に価する紫電を纏うことが出来、ことのほか嬉しいようだ。
「姫様は、十分制御されていると思われますよ。雷属性は圧倒的な超高速戦闘が出来る反面、使用後に激しい疲労感が伴うと聞いています。それとこうして肌と肌を触れ合うスキンシップができなくなり、コミュニケーションに悩まされるそうです。」
「あら?そうなの。大分、身体が順応してきたってことね。」
ルールカの反応が子供っぽくって、くすくすと笑ってマァムは続ける。
「それもあるようですが、姫様は元々風の属性をお持ちのようなので、相性がいいのですよ。」
「風属性?私、風魔法を使ったことないわよ?」
こってとルールカは首を傾げる。これも幼い頃からの彼女の癖だ。思い当たらない事があると、いつもこうして可愛い仕草を魅せる。マァムにとってはご褒美であり、心中でご馳走様です。と呟く。
「思い当たることはないですか?例えば木馬に羽が生えた戦闘機ですか?それを操っているときとか。」
「あ、あ~。そういえば・・・」
ルールカは思い至るふしがあったらしく、じっと湯面を見つめる。戦闘中スカートが捲れなないのも、槍を交わしたり、方向変更したり、ブレスを叩き斬ったり、戦闘機に乗って感じた解放感など。高揚感が高ぶっているときによくあったことだ。背中の羽と尻尾のせいかと想っていたが、風属性だったらしい・・・
風といえば、もう一人の私だ。風を使っていたなと思い出した。あれ以来夢の中に現れて
くれないから忘れていたけど、彼女は確かに私だ。だからか、と納得と同時に疑問が浮かぶ。
「風と雷の属性が、相性がいいのはどういうこと?」
「そうですね。風の属性と雷の属性があっても雷属性の方が優秀だと勘違いさせる方々がいらっしゃいますが、ですが、この2つの属性が合さる事によって、お互い弱点を補い合いさらなる高みに至ることが出来るようになります。」
「・・・」
じっと見つめるルールカ。次の言葉の催促なのはわかるが、マァムは幸福感に浸ってしまいしばらくしてから、やっと言葉を繋ぐ。
「紫電を纏う高速戦闘は、姫様の肉体を酷使させます。ですが、風の補助を受けることによって緩和させます。そして雷の属性だけですと、先も言いましたが、意識外でうっかり物や人に触れたらそのものが感電させます。」
「マァムはよく知っているのね。」
感心と憧れを瞳に宿した目で見つめられて、マァムは感無量である。幸せ・・・
「はい。昔そう言った方々と話を得る機会があったので参考までに聞いておいてよかったです。風と雷を完全にコントロール化が出来れば、レールガン、広範囲殲滅魔法エレクトロ・トルネード、音速を超える動きと、飛行能力。こういった魔法が使えるようになるそうですよ。」
「そうなの!」
もはやそのキラキラした瞳を直視できないマァムだ。
「はい。なので姫様は、まず風の魔法を全身に纏うイメージして、次に慣れてきたら、雷を纏うイメージをします。さらに慣れたら両方を纏い、寝る時も自然に出来るようになれば、必然的に風と雷に適応します。後は、イメージの問題ですね。魔法はイメージですので姫様が思い描く魔法のイメージを具現化するだけです。」
「おぉ・・・やってみるわ!」
最近大人っぽく年頃の女性になってきたルールカに尊敬、羨望、憧れの熱い眼差しを向けられて、マァムの瞳はとろけるように潤い、陶酔と絶頂の瞬間に身を委ねる。
そんな彼女にお構いなくルールカは早速と言わんばかりに、お風呂から上がり風を薄く薄く纏う練習に没頭する。
残されたマァムはというと、彼女は湯船に深く身を沈めて、つい先ほどまで全身に浴びていた、あの熱い視線の残像を思い描く。彼女の全身を隈なく爪の先まで甘く痺れさせた余韻に浸り
「ふぅ・・・」
と、熱い吐息を漏らす。ルールカの姿がそこにいないことに名残り惜しそうにしながらも、ふらふらと浴室に向かっていく。




