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エピソード5 サマールル

5  レオーナ宛の手紙


「レオーナさん!いらっしゃいますか?」


掃除を済ませて一息紅茶をすすっていると、玄関からその声が届いてきた。ゆっくりとあわてずにカップを置き玄関に向かって扉を開く。


「あら?手紙。いつも届けてくれてありがとう。」


顔見知りの獣人配達員へ、笑みと共に礼を述べると、相手の獣人は赤面して表情が強張る。


「い、いえ、仕事なので・・・はい。」


美女のレオーナに対して緊張しまくる獣人の配達員だ。誰もがその姿を見たら必ず振り向いてしまうのだから、直接こうやって話が出来るだけでも役得だろう。


「うふふ。ご苦労様でした。またお願いしますね。」


男性と対面すると大体自分の容姿に見惚れてかしこまってしまうから、レオーナも慣れたものでさっさと彼を解放させる。雑談を愉しむこともできやしないが、それがとてもいい。興味がない同性、異性とは無用な会話は避けるクールなレオーナだ。


渡された手紙の差出人を1つ1つ確認する。


「お給料と、光熱費の明細、それと交際の申し込みと・・・」


エド村の獣人は全て把握しいているので誰なのか名前を見ただけですぐにわかる。交際の申し込みの手紙が途切れたことはないが受けたことは一切ない。だって興味がないのだからしょうがない。レイニ以外は。


そうして内容を検めていくうちにぴたりと1通の手紙を見て動きが止まる。


「・・・母から?」


母からの手紙は珍しい。近況報告や帰郷とかが多いがそう頻繁には届かない。母は父を追いかけて旅をしている。時折かえってきたりはする。レオーナが大きくなり1人でも生活に困らなくなった時期を見計らって父を追いかけていくのだ。ちなみにまだ存命中の祖母もそうだ。どこかで仲良く過ごしているらしい。祖母もたまに帰ってきて、またどこかに行ってしまう。困った家系である。


「・・・・」


文面を読み進めていく。


「・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」


レオーナの動悸が次第に加速度的に激しくなっていく。暗号化されたその文章は一見ただの近況報告なのだが、文字列に巧妙に記されたメッセージ。


「きた、きた、きた~~~!!」


歓喜が身体全身を駆け巡り、それは頭の中が真っ白に染まり出してはいけない声が漏れてしまった。


待ち望んでいた。やっと子供が産める。


「はぅ・・・」


その一言を残してレオーナは満面の笑顔でぷっつりと意識が遠のいた。


*************************************

意識が戻りいそいそと椅子に腰かけて、再度手紙を読みこむ。


誰も訪れなかった事が幸いであった。あられもない姿を晒していたので、もし見られていたらその人はレオーナが目覚めた瞬間にこの世には存在しなかったことだろう。


入れ直した紅茶で心を落ち着かせると、これからの行動を頭の中で整理し始める。


期日はまだ先だが、サマールルに行くことになった。


レイニがエド村に帰ってきてすれ違いを避けねばならない。直接渡したかったが薬を送る事にする。エド村の者に頼めば心配はいらない。なんといってもマインドコントロールしているから。手紙を送り届けてくれた彼でいいだろう。しかし、残念だ。でも再会はもっと楽しみだ。


うふふ(精力剤は抜いておいておかないとね~)


で、あっちの人たちの分も調合しろと。まぁ問題ないわね。材料はあるけど、強力なのが欲しいと。ふむふむ。


窓際まで歩いて、うーんと唸りながら他にはなにがあるかな?と探してみる。


エド村の管理は母か、祖母が戻って来るだろうし居なくてもそんなに問題なことはない。日々の生活を満喫してくれたらいいだけ。任務があったら切り替えてもらうだけだし。


ぼんやりと今まで暮らしてきた部屋を見渡してみる。


オードから始まった呪いとも呼べる不妊。過去の祖先はオードのように何度も誰でも異性と関係を結んできたが、妊娠したことはない。


私たち一族が子供を授かるには、トルーク様と一緒にテンプテーションガーデンに行って治療してもらわないといけない。今回はサマールル側からだけど前回はキラエルだったようだ。今回もキラエルならそのままレイニという思惑があったのだが非常に残念で非情だ。


しかしトルーク様に逆らえるわけではなく、粛々と従い。あっちで結ばれる。それも・・・また・・・いい・・・妹のようにかわいがってきた男の子のレイニとの子。


罪悪感。自責。疚しさ。呵責。後ろめたさ。そんな感情など吹き飛ばすぐらいに彼との子が欲しい。自我が芽生え始めた頃から子供が欲しいと願ってしまうのが、先祖代々から受け継いでいるらしい私達の家系。


そしてやっぱり親子なのかな?好きな男性の趣味は弟っぽい子だ。まさにレイニ。しかも女装させてしまっている。似合うだろうと思ったら、ほれぼれするほどでそのまま妹にならないかと衝動を抑えるのが大変だった・・・


走馬灯のような頭の中に流れていく想い出。ほぼレイニとのことだ。それほどに可愛がっていた。いや、好きだったんだ。


「また帰って来るわね。今度は私とレイニと私たちの子供と」


数日後、レオーナの姿はエド村から消えたが、獣人達は誰も気にしなかった。




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