帰還~
氷族討伐が結成されて約2か月。峡谷をにらみ合いで2日間過ごして、強行援軍と入れ変わって、この戦いは終わりを告げる。
「エリーゼ!ルールカ!」
悲鳴のような声を彼女が上げると、崖から上がってきたルールカの耳に届いた。兵たちの間をすり抜けて息を切らして走ってきた。よろめく彼女を優しく受け止めて
「ただいま。シルヴィ・・・」
「ルールカ!よくぞ無事で・・・エリーゼは??」
想像豊かなせいで悪い方向に思考に陥った王女様の前に、氷族の娘リナの姿が現れた。リナは膝まずいて臣下の礼を取り、首を垂れた。
「おぉ!!リナ。臣下の礼などいらぬから、顔をみせよ」
リナの顔を嬉しそうに眺めながら、彼女は再び弾かれたようにして顔をあげた。
「エリーゼは?エリーゼは無事か??」
「ただいま・・・王女様。」
そんな声が響いて、崖からエルフの姿が現れる。その顔を見た瞬間、王女様の何かが消えた。すぐそばにいるルールカ、リナを巻き込んで、彼女はエリーゼの胸に飛び込んだ。
「「「!!??」」」
突然の王女殿下の抱擁を受けて、3人はひとたまりもなく尻もちをついた。
「・・・エリーゼ・・・ルールカ・・・リナ・・・」
身体に腕を精いっぱい回してしがみつくシルヴィ王女殿下は抱き着いた3人の名前を繰り返し呼んだ。
「・・・こほん。シルヴィ王女殿下。少し落ち着いてください。今労うのは私たちだけではないでしょう?」
エリーゼの忠告の言葉が耳に届いて、彼女は我に返って周りを見渡した。やはり、厳しく苦しい戦いだったのだろう。どの兵たちも明らかに顔色が悪く、無傷なものは誰もいない。仲間に肩を貸してもらってやっと立って居るような兵たちがほとんどだ。
「・・・すまぬ。最大の功労者の前にして、取り乱してしまった。」
自分の過ちを悟った王女殿下は、すぐさま立ちあがり、傷つき疲れ切った兵たちに向かって心から頭を下げた。
「・・・本当によく戦ってくれた!今なお前線が保っていられるのはそなたらの働きにほかならない。奮戦に感謝を!犠牲に哀悼を!キラエルの名に懸けて、そなたらの労には実をもって報いると誓おう!」
兵たちをまっすぐに見据えて王女殿下が敬礼する。間を置かずにして彼ら彼女らからも同じ敬礼が返ってきた。どこか安心しきったような面持ちでシルヴィ王女殿下を見ている兵が多かった。普段から身近に接する機会が多い王族の彼女を、尊い存在としてとらえている証拠だった。
「・・・よかった・・・」
緊張を取り戻した空気の中で、顔を出す機会を失っていたミルキとレイニの安堵した姿がそこにあった。




