白の御守
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セブルスは和かに胸を張り指示を待つ。
「くっ…お前という奴は…好きにしろ。」
「仰せのままに。では失礼いたします。」
フォルン親子は2人揃って胸に右手を当て頭を下げるとそのまま部屋から退室した。
一国の主人は家臣を見送ることなくカウチにもたれ深いため息を吐く。幼馴染にはいつも口では敵わないから極力相手にしない。己は権力しかかざすことができない能無しだ。
2人の気配がなくなった部屋でガイは窓の外を眺めながらつぶやいた。
「アルフォンスの言う通りになったが…これでよかったのか?腑に落ちん」
最近困ったことがあれば幼馴染の宰相より年若い次男アルフォンスに相談することが多くなった。ある意味アルフォンスがこの国のブレーンになっている。
コンコンコン
ノック音と同時に勢いよく扉が開けられ、近衛騎士団長が入室してきた。すぐさま床に片膝をつき頭を垂れる。
「陛下!至急のため勝手に入室申し訳ございません!急ぎお伝えすることがあり…」
「なんだ?騒々しい。」
「内密に拘束しておりましたクラウド大公殿下が脱走して行方不明です!」
「なんだと?!」
「おそらく魔法で脱走されたのかと。」
成人の儀の後、ガイはクラウドの出した条件を断り、クラウドを拘束した。始めは抵抗したが複数人の魔導士がクラウドの身体の自由を奪うことに成功してなんとか拘束できた。
「だがあの部屋は魔法が使えないようにしたはずだ。」
「確かにあの部屋には王宮魔導士が魔法封じの効果をかけましたがその力を上回った者なら可能かと。」
「くっ!」
ーーさすが神子様というべきか。
ナルシャ王国には騎士団のように魔導士団が存在する。この国では魔法が使える者が珍しいため、魔法学校を卒業した者はここにスカウトされることが多い。通常は衛兵騎士と共に動く魔導士団に所属となるがそこから実力が長けている者は国王が直々に王族直属の王宮魔導士に任命するのだ。選ばれし王宮魔導士は現在5名。その王宮魔導士の力をクラウドは超えたことになる。
ガイは次の指示を出そうとするが、クラウドの行動は先が読めない。
「次から次へと…急いで…いやもう手遅れかもしれん。探しても無駄だ。」
ーーもうこの国には居ないだろう。
「エルトニア帝国へクラウドが戻ったか密偵を出して調べさせろ。あとアルフォンスをすぐにここへ呼べ。」
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王宮の一室
「ん…」
ーー見慣れない天井?ここはどこ?
セレナはふかふかで身体が沈むベッドから重たい身体をゆっくりと起こし見回した。
ーー王宮?私アルに運ばれてここに?
額に手をのせるが熱くない。少し頭痛はするが体調は良くなったようだ。布団をめくってベッドから出ようと動いていると、
「…セレナ?起きたのか?」
「…アル?」
今は夜だろうか?部屋が暗くて窓からの月明かりを頼りに声がする方に目を凝らしてみたが逆光で顔が見えない。でも声と様子でアルフォンスだと感じた。
「あぁ、起きて安心した。もう身体を起こしても平気か?お腹も空いてるはずだ。すぐに軽い食事を用意させる。」
アルフォンスはセレナが休んでいるのを気遣って部屋の明かりをつけずに月明かりの下で書類に目を通していたようだ。テーブルの上が書類で散らかっていた。
「ありがとう。でも食事は必要ないわ。それより私ってどれぐらい眠っていたの?早く帰らなきゃお父様に心配をかけてしまうわ。迷惑かけてごめんなさい。」
「ここにいることは宰相には連絡したから心配ない。今は夕食が終わった時間ぐらいで半日ぐらい寝ていたぞ。ダリーが睡眠不足と疲れだろうからしっかり休むようにってさ。」
「そうだったのね。ありがとう。自分の体調管理もできないなんて恥ずかしいわ。」
「セレナはなんでも真面目だからな。もっと力を抜け。俺ならこんなになるまで辛い思いはさせない。」
アルフォンスはベットにいるセレナの側に座り、背中に手を回して抱き締めた。
「俺じゃダメなのか?」
「えっ…いきなりどうしたの?離して…私は…」
「離さない。セレナは俺のそばに居ればいい。」
アルフォンスがそっとセレナの頬に手を添えると顔を近づけた。セレナは咄嗟のことで避けることができずに固まってしまう。
「ちょっ…まっ…」
ーーえっ?!キスされる??!
ピカッ!!!!ドーン!!
「うわっ!?」ドターン!!
部屋が急に激しく光ると同時にアルフォンスの身体はベッドから数メートル先の床へ吹っ飛んだ。
「えっ?アル!!大丈夫?!」
「くっ…」
受け身を取れずに背中から落ちたアルフォンスは上半身を起こし右肩を押さえて悶えていた。
「今の光は一体…なんなの?」
セレナは辺りを見回したが2人以外誰もいない静かな部屋。変わったことといえばさっきより部屋が明るく感じる。何故だろうとふと手を見ると自身が光っていることに気がついた。
ーーこの白い光はなんなの??
「今のは反射の力?セレナは魔法が使えないはずなのに一体誰が…あぁそういうことか。くっくっくっ、面白い。」
アルフォンスはベッド横のサイドテーブルに置かれたバッグに目を向けて独りごちた。肩を押さえながら1人で笑っている姿は異様だ。
「アル!大丈夫なの?!」
セレナはベッドから立ち上がりアルフォンスの側へ歩み寄る。
「セレナ、ストップ。それ以上は近づくな。」
「でもケガをしてるんじゃ…」
「あぁ肩が脱臼しただけだ。心配ない。」
「脱臼してるの?!大変じゃない!急いでダリー先生を呼ばなきゃ!」
「落ち着け、これぐらい大丈夫だ。それよりもそこにあるカバンの中身はなんだ?」
アルフォンスの目線の先にあるカバンはセレナがいつも持ち歩いている小さなトートバッグだ。中身は白い冊子の、
「…魔法の本よ。」




