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魔女の所以

お待たせしました。


エルトニア帝国はナルシャ王国の東に隣接している国で国土は10倍近い大国だ。海と山に囲まれた豊かな地は貿易も盛んでさまざまな情報と共に人々も集まる国でもあった。この世界では魔法が使える者は少ないがエルトニア帝国は古より魔法が使える者が多く、生活に浸透しており、魔力がある子供は学校で使い方を習い、大人になってから駆使して仕事にしている者も多い。

エルトニア帝国が魔法使いの国ならナルシャ王国は騎士や戦士の国と言える。ナルシャ王国は山に囲まれた小さな国と言えど武術に長けており腕っ節も強く、生命力の強い人種でいくつもの戦に勝ってきた。地形を活かした戦術を使い、大国であるエルトニア帝国にも引けを取らない軍隊を保有している。だからナルシャ王国では魔法が使える者は希少とされ、王族が監視をするなど重宝されてきた。



ーー18年前 エルトニア帝国ーー


国中が待望の王子誕生で幸せに包まれていた。

民も妃も大切にする国王シンバ・ローム・エルトニアは政策の手腕も一流で賢王と慕われ、妃ローラ・ウィリアム・エルトニアは民から信頼が厚いウィリアム公爵家の出ということもあり王族の人気も高く、エルトニア帝国は安泰そのもののように見えていたのだが裏ではそうではなかった。


秘匿とされていたが妃の実家であるウィリアム公爵家は代々血の呪いがあり、長子に受け継がれてきた。今世は1人娘であるローラが継ぎ、公爵家とこの血の呪いを存続させるために婿を迎えるつもりだったが国王がそうはさせなかった。代々この血縁は王族にだけは渡してはならないと伝えられてきたが王命により逆らえず、ローラは妃になることとなった。


エルトニア帝国の王族はずっとこの機会を狙っていた。闇の神子の力を手に入れるために。


血の呪いとは名だけで実際は異なる。本来は平和を治める力だった。それを過去の王族が悪用するようになり人々を脅かす力とされ"呪い"と言われるようになったのだ。



〜〜〜☆〜〜〜☆〜〜〜☆


昔々、陰陽の力を司る神がこの世を治めていた。

あるとき神は自らの力を手放すために側で世話をしてくれていた2人の少女らにそれぞれ光の力と闇の力を託した。其れらは人々に尽くし、やがて神子(みこ)と呼ばれるようになり崇められる様になった。力を無くした神は程なくして亡くなったが神子たちは神の意志を継ぎ人々の手助けを続け、小さな集落が町となり、国となり、やがて大国になっていった。それがエルトニア帝国だ。


神子の力は人々の生活の支えや病気を治癒することに使っていたが自国が大きくなるにつれて気をよくしていった王族はそうはさせてはくれなかった。


ーー帝国をもっと大きくしたい。神子の力があれば叶う。


当時の国王は2人にこれまでの功績を讃えるのを理由に侯爵位を与え、国に尽くす様に仕向け、監視をする口実を作ろうとしたが当人らは予見していたのか王命を伝える頃には人々の前から姿をくらましていて行方知れずになっていた。

国王は激怒した。2人を炙り出すために策を練り隣国ナルシャ王国へ攻め込む戦争を起こした。沢山の人々が死に、暮らす場所も追われ、平和が揺らいでしまった。


ーー人々が苦しみ、困れば神子が現れるだろう。早く出てこい。


その頃2人は隣国のナルシャ王国にいた。ナルシャ王国は小さい国ながらも歴史は古く、魔法に頼らないで人力で築かれてきた国だ。2人は自らの力が争いの火種になるくらいならもう神子の力を使うことは辞めようと決めてこの国に流れてきたが戦争で人々が苦しんでいる。黙って見てはいられなかった。

闇の神子は1人でエルトニア帝国へ戻り、戦場で人々の治療をすることを決意する。罠かもしれないとわかっていても助けたかった。光の神子はそれを止めたが闇の神子の意志は固く、待つことにした。


でも待てど暮らせど闇の神子は帰ってこなかった。

数ヶ月後、風の噂で藍色の髪の少女が戦場で人々の治療をしていたが戦火に巻き込まれて亡くなったと聞いた。闇の神子は空色の髪をしていたがそんな噂を光の神子は信じなかった。そもそも神子はちょっとやそっとじゃ死ねない。実際は闇の神子はエルトニア帝国の王族に捕まり、王命により爵位を与えられ、後の公爵家へと変貌していく。


光の神子は1人になってもめげずにひっそりと人々を助け続けた。そして慕っていた神との約束で世のためにこの力を持ち続けるか継承し続けるよう言われていたので伴侶を見つけ、この力を子供へ受け継ぎ、代々伝えるように育ててきた。


その後も子孫たちは代々ナルシャ王国で神子の力を隠しながら暮らし続け、民に安寧の生活をもたらすためにひっそりと神子の力を使い、生活のための予言や作物を育てるように助言をして時には天気を操った。その様子を人智を超えた力を持っていると見なされ神子ではなく、後に魔女と揶揄され、魔女といえば"銀色の髪"と言われるようになり今に至る。光の力を持つ者はなぜか太陽に照らされたシルクのような艶やかなシルバーブロンドだったようだ。


〜〜〜・・・〜〜〜・・・


「闇の神子はずっとエルトニア帝国で侯爵家として監視され続けてついには公爵家になって今に至っている。ナルシャ王国での光の神子はどのようにして公爵家に流れ着いたのかはわからないが神子同士は側にいれば惹かれ合う。何百年も遠くにいて交わることがなかった神子たちが俺らの母親達の代で再会したんだ。フォルン公爵家がエルトニア帝国の王族の宴に招待された席があったようでそこで惹かれあい、同じ境遇で苦労してきた者同士、親密になるのに時間はかからなかったらしい。それに偶然同じ歳の子供がいた。それが俺たちだ。」


「つまりは神子の力を所持している者はこれまで力を隠し、王族から逃れながら暮らしてきたということ?」


ーー神子の力があれば豊かな国になるかもしれないけど兵器にされたらたまったものじゃないもの。


「そういうことだ。マリア様は自分の力を公爵家にも隠していた徹底ぶりだったのに俺のために力を使ってしまい神子ということが周知してしまったみたいなんだ。」


「えっ・・・じゃあお母様が神子ということをお父様は知らずに結婚したということ?」


「あぁ。そう聞いた。公爵家に迷惑をかけたくなかったんだろう。なのに俺を助けようとしたせいで・・・それが奴らの目的だったんだと後になってわかった。」


「奴ら?」


セレナの問いかけには答えず、クラウドは眉間に皺を寄せて目を瞑った。

展開遅く申し訳ないですが読んでいただきありがとうございます^_^

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