長い夜
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眉尻を下げて話を続けるクラウドに同情したカインが一息しようと部屋の外にいた侍女へ飲み物を頼みに行き、すぐ戻るとクラウドへ歩み寄った。
「立ち話もなんですから座りませんか?飲み物も持って来させますから。」
「そうですな。陛下、大公殿下よろしいですかな?」
カインとセブルスが少し場を和まそうと気を遣っているのがわかるとクラウドは少し嬉しくなり目を細めた。
「ありがとうございます。フォルン公爵、カイン。私が気が利かず立ち話をさせてしまい申し訳ございません。」
5人が国王の執務室に設けられたソファーやカウチに腰をかけると侍女が珈琲やワインが入ったデギャンタやグラスをテーブルに並べ部屋を後にする。
「大公殿下、改めてご挨拶をさせて頂く。私は宰相のセブルス・フォルン、こちらは息子のカインです。」
「私も失礼。初めまして、私は外相を務めているボンド・ハードンです。今後は外交面から是非お付き合いさせて頂きたいと存じます。以後お見知り置きを。」
ボンドはここで自分を売り、外交面で力を見せつけ名声を掴みたいと考え、一歩前に踏み出し笑顔で挨拶をした。2人が頭を下げている中クラウドはボンドを見て鼻で笑った。
「貴方がハードン伯爵か?ということはベル嬢の父上か。」
腹の中を探らせない満面の笑みで話すとボンドがすぐさま身体を起こし、目線を合わせる。娘のベルは一人娘ということもあり溺愛しているが故、少々わがままに育ててしまったと負い目もある。何か粗相をしたのか不安がよぎる。
「む、娘が何か?」
「貴方の娘はマルクス王子の恋人か何かか?留学先の学校で同じクラスなものだから2人が一緒にいるのをよく見かける。いろんな方面を睨んだ貴方と似つかわしい笑い方をしていて隅に置けない令嬢だ。きっとマルクス王子の力になるだろう。」
「左様でございますか。マルクス王子とは有難いことに仲良くさせて頂いているとは聞いております。でも恋人とは・・・畏れ多い。」
ボンドは苦笑いをした。娘がマルクスと恋仲なのを承知の上でこの場を乗り切ろうとしたのだ。そもそも王太子妃の座を狙うよう仕向けたのはボンド自身。夜会に娘を連れて行き王子と会わせたり、自分の家での夜会に招待して席を設けて関係を深めてきた。自分が将来の王の義父になるという野望を実現する為に地道に築いてきたこの関係を潰すわけにはいかない。
「陛下がそれを黙認しているのに私は驚きました。まぁ私はそのおかげでいろいろ動きやすかったですが、さすがにベル嬢がセレナ嬢をマルクス王子から離そうと虐めていたのはいけ好かない。そのような令嬢が次期王太子妃とはこの国は・・・陛下、大変ですね。」
「黙認なんかしていない!」
「虐めてなんかいない!」
クラウドの挑発に大の大人2人が同時に立ち上がり唾が飛ぶ勢いで怒鳴る。それでもクラウドは表情を変えずにボンドへ話した。
「学校でセレナ嬢の嘘の悪い噂を流したり、言いがかりをつけたり、仕舞いには校舎の入口で他の生徒も大勢いるのにマルクス王子と抱きあったり。ハードン外相はご存知だと思ってたが?」
「うちの娘が虐められていただと?!」
「マルクスと抱きあっていただと?!」
「娘がそんな破廉恥なことしません!」
大の大人3人がクラウドに詰め寄り同時に喋るカオスな状態だ。カインはやれやれと肩をすくめながらも、加勢する。
「大公殿下が言う事は本当です。私も学校に在籍していますしマルクス王子とは級友です。妹の悪い噂も耳にしました。あとマルクス王子とベル嬢が毎日一緒にランチしているのは生徒の中で有名ですよ。」
カインが間髪入れずに火に油を注いだ。
マルクスとベルは毎日食堂のテラスでランチを共にするのが日課でセレナとの婚約話以降もずっと続けられていた。
「あれほどマルクス本人にも注意したのにボンド!貴様もだ!娘には話したのか?!マルクスにはセレナ嬢を婚約者にするんだ。」
「陛下!セレナとの婚約はお断りしたはずです!」
ガイがボンドに詰め寄り胸ぐらを掴む勢いだ。セブルスはそんなガイを横から責め立てる。こんな話他所でしてくれと呆れてものが言えない。カインとしては早くクラウドからこれからの考えを聞いて対策を練りたかった。妹であるセレナも関係してくる話だ。フォルン公爵家に影響があるのは必至。父親達はもう勝手にさせとこうと見限る。
「クラウド、結局俺の勘は当たっていたんだ。何か褒美をくれよ。例えばこれからセレナをどうするつもりなのか考えを教えてくれるとかさ。」
カインは人当たりの良い顔でクラウドに近寄り耳打ちする。それを聞いたクラウドはソファーに座ったまま目配せすると微笑んだ。
「い・や・だ。別に賭けをしていたわけじゃない。」
「セレナに贈り物をしたのはお前だよな?本気なのか?」
クラウドの話は無視して父親達に負けを劣らずカインもぐいぐいと掴みかかる勢いで耳打ちをするがそれをシッシッとクラウドは手で払い退けた。
「近い。セレナだったら歓迎だけど。」
「おい。やっぱり好きじゃねぇか。」
男たちの夜はまだまだ長い。
ダラダラ話が続きすみません。




