早る気持ち
お待たせしました。よろしくお願いいたします^_^
セレナは嬉しさで息が詰まりそうになる。でもクラウドの気持ちを聞いて歓喜に満ち溢れたがなぜこんなに想ってくれているのか気になり素直に喜べない。セレナの見解では2人の交流は最近のことだ。なのに昔っていつのことだろう?小さい時過ぎて忘れてしまったのか?会った記憶がなぜないのか気になる。クラウドにまた問いかけようとしたがクラウドは御者へ出るように声を掛けていた。
「今は時間がないからまた話そう。そろそろ陛下のところに戻らないといけない。それにこれ以上話していたら…離したくなくなる。おやすみ、セレナ。」
クラウドの甘い言葉にセレナは頬が熱くなるのを感じた。黙って頷くとクラウドが合図を出し、馬車は走り出す。窓から顔を出すとクラウドはこちらを見てくれていた。
「クラウド様…」
ーーお慕いしております。と言いたかった。
「私も貴方を愛してる。早く迎えに来て。」
セレナの声は馬車の箱の中、誰にも届かなかった。
「さてとこれからが本番だ。」
クラウドは燕尾服の裾を翻し、国王や宰相が待つ部屋へ向かった。
❇︎❇︎❇︎
その頃、国王の執務室には国王ガイ、宰相であるセブルス・フォルン公爵とセブルスの声かけでカインも招集されていた。外相のボンド・ハードン伯爵も呼ばれており4人でクラウドを待っている。
「おやおや、どうしてこのような大切な場にカイン殿がいるんだ。関係者でもあるまい。もしや、宰相は身体のどこかが悪くて息子に引き継ぎでもされるのか?それはそれは国の一大事ですな。」
喋れば嫌味ばかり出る口を持つボンドが話し出すと場の空気がピリついた。
「ご心配痛み入りますな。でも私はこの通りピンピンしておりますのでお考え通りにはならないかと。」
公爵スマイルで返事を返すと、ボンドは気に入らなかったらしい。鼻息荒く返事をしない。そんな光景を見ていたガイはカインが同席するのを賛成のようで、
「カインには同席してもらった方がこちらは好都合だろう。クラウドと親しそうだったではないか。これから交渉があれば歳が近い方が話しやすいだろうしな。適任だ。」
「陛下、愚息ではございますがご期待に添えるように私も見守らせていただきますのでご安心ください。」
「うむ。よろしく頼む。」
カインが黙って頭を下げるとボンドも認めざるを得なかった。
「ところで陛下に届いた書簡の内容を教えていただけますか?私の娘のことが書かれていたのですか?」
セブルスはクラウドが来る前に書簡の内容を聞いておきたかった。相手はクラウドだ。まだ未知数の相手ではあるが一筋縄ではいかない気がしていた。
「これが例の書簡だ。読むといい。」
テーブルに置かれた便箋をすぐ手に取り、読み進めると次第に眉間に皺がいく。カインはその表情を見て内容がとんでもないことだと予見した。
「陛下、ここに書かれていることは本当のことですか?なぜこの私が知らないのですか?」
「それは…私の口から話して良いものかどうか。」
「は?」
セブルスの口から間抜けな声が漏れる。国王が宰相に対して話せないとはどんな了見なんだと。2人は旧知の中だ。今まで隠し事はなかったはずなのにこんなことは初めてだと戸惑いが隠せないでいた。
「それはつまりウィリアム大公…ってそもそも奴は公爵になる者なのか?王子なのかどちらなのですか?陛下、それはご存じなのでしょう?うちの諜報員に探らせましたが隠されていることが多くよくわからない人物だったのです。」
王族でなければ大公閣下、王族であれば大公殿下と呼び名が変わるためセブルスは確認をしておきたかった。そもそもそんな大物が隣国に護衛もなしに留学とは真の目的があるに違いないと不審にも思う。
「これは話してもいいだろう。クラウドはエルトニアの第一王子だ。おそらく今日から本人もそう名乗るはずなのだが先に大公を賜ったことを発表するとは恐れ入る。」
「では大公殿下とお呼びせねばなりませんな。ですが王子が護衛もなしに留学とはいくら平和な国と言えど物騒な。護衛なしが良くて今まで黙っていたのでしょうか?」
「クラウドには魔力があり、己自身を守る術があるから護衛は必要ないと判断したのだろう。」
ガイは遠い目をしながら話す。何を思い出しているのだろうか?セブルスでも知らない何かがあることにもどかしさを感じる。
「では成人になったからと言って発表したのも向こうの王族のルールなのか?エルトニア帝国では成人になるということはそれほど大層なことなんですな。」
その時、部屋の扉がノックされ、入室を促すとクラウドが入ってきた。
「大変お待たせして申し訳ございません。」
クラウドの登場にガイらは一斉にソファーから立ち、出迎える。
「娘の見送りありがとうございます。大公殿下。」
「ん?…陛下、話されたのですか?」
怪訝な顔で問いかけるとガイは黙って頷く。クラウドは溜息をつくと凛とした佇まいの中で一度目を瞑り、息を整える。
「では先にご挨拶をさせてください。」
カインと目が合うと少し微笑み語りかける。
「申し遅れましたが私はエルトニア帝国第一王子、クラウド・ウィリアム・エルトニアです。本日よりこの名を使う許可が下りましたので申し上げます。本来、エルトニアの王族はミドルネームがありますが通常は使われません。ですが私は身を隠すためにミドルネームである公爵家を名乗って生きてきました。騙すつもりは無かったのです。申し訳ございません。」
クラウドは少し頭を下げると真剣な表情のまま話を続けた。その金色の眼差しはいつもより暗く、陰っていた。
話が進みませんが辛抱強く読んでいただけると幸いです。




