第三十五話 俺、魔王なんだけど、気が付いたら勇者と体が入れ替わっていた件2 幕引き
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俺が目を開けると、そこにはいつもの見慣れた風景が広がっていた。
「え!? もとの体に戻った・・・のか?」
魔王城? ああ、間違いない、ここは魔王城の玉座の間だ。どうなることかと思っていたが、良かった。やっぱり夢だったみたいだ。
しかし、どういうことだろうな、この状況は? 俺はこの困惑する状況を作り出している原因に直接聞いてみることにする。
「なあ、聞かせてくれサキュバスよ。何故お前がまた俺の膝の上に座っている?」
玉座に座っている俺の膝の上にサキュバスが腰掛け、片手を俺の肩に添えてこちらの様子をうかがっているようだったが、俺の問いかけを受け、彼女は少し驚いたような顔をした。
「え!? だって、いつものことじゃないですか?」
「は? なんだいつものことって? この前の一回きりだろう? お前も図々しいことを言うようになったな」
「んー? 図々しいなんて、ひどいです。私と魔王様の仲じゃないですかー」
「図々しいものは図々しい! ・・・あ、お前、そんな涙目になることはないだろ? と、ところで、サキュバスよ。俺はここで今まで眠っていたのだろうか?」
「あ、はい、魔王様。魔王様はここで座ったまま眠っていました。初めはお疲れなのだろうと思い、そのままにしておいたのですが、あんまりにも長い時間眠っているみたいだし、なんだか酷くうなされだしたので、私は声を掛けて起こそうとしました」
「それで今に至る・・・と言うのか?」
「いえいえ、ところが何度呼びかけても魔王様ったら全然起きてくれないんです。そこで私は魔王様の膝の上に腰かけて、肩を揺すって起こすという最終手段に打って出たわけです」
「そこで俺の膝の上に腰かける必要はないと思うんだが・・・、まあいい、そうか寝ていたか。夢だったんだな。それなら良かった」
「随分うなされていたみたいですけど、悪い夢でも見ていたのですか?」
「ああ、悪い夢だった。でも、夢で良かったよ」
「そうなんですか・・・。あっ、魔王様、寝汗でびっしょりみたいですね。このままでは風邪をひいてしまいますよ? そうだ、これから一緒にお風呂に入りませんか? お背中流しますよー」
「な!? なにを言い出すんだっ? お前と一緒に風呂などに入れるわけがないだろ!」
俺は顔を沸騰させながら、サキュバスの提案を拒絶した。突然なんてことを言い出すんだろう? 彼女はもっと淑やかな女だと思っていたのだが、考えを改めるべきだろうか。
「えー? 今さら恥ずかしがる仲でもないじゃないですかー? 一緒に洗いっこしましょうよ」
ふざけているつもりか、あんなことまで言っている。・・・頭が痛い。
彼女の種族は人間どもからは『淫魔』と呼ばれ恐れられているが、それは誤解だ。精神操作魔法が得意な者と容姿が優れている者が多い種族のため、そんな誤解が生まれたらしい。確かに、女の色香を使って人間の男を騙す者もいたようだが、それは彼女らの中でも魔術の拙い低級の者だけだし、最近はそんな話は聞かない。特に目の前の彼女は、その一族の中であっても数千年に一人と言われるほど傑出した力の持ち主だ。故に、魔王である俺の側近という地位にある。
「いい加減にしろ、お前は『淫魔』なのか?」
流石に悪ふざけが過ぎると思い、俺は皮肉を込めて彼女にそう言ってやった。
「魔王様! そんなこと言うなんて、信じられないです」
そう言ってサキュバスは少しの怒りを孕んだ悲しい顔をしたが、自業自得だ。
「とにかくだ、つまらん冗談を言ってないで、さっさと俺の膝から降りろ」
「えー? もう少しいいじゃないですかー」
「 降 り ろ!」
「もう、魔王様のいけず」
俺が冷たく睨みながら命令すると、ようやくサキュバスは俺の膝から降り、少し離れてこっちを向いた。
???
俺は今まで彼女が座っていたところを見ていた。・・・んん?
「・・・俺、こんな服着てたか?」
「はい、今日も純黒のドレスがよくお似合いですよ。魔王様の美貌は、女の私でも惚れさせてしまうほどですからね」
サキュバスはうっとりとした顔で微笑みながら、俺の姿を見てそう言った。
「ドレスだと!?」
俺は思わず玉座から立ち上がり、呆然と前を見つめ立ち尽くしたまま自分の胸元に掌をあてがった。すると、そこにはあるべきではない柔らかい感触が・・・。
俺の悪夢はまだ続くらしい。いや、果たしてここは夢なのか現実なのか、俺にはもう判らない。
漆黒の闇の中で魔神の笑い声が木霊する。
この章はこれで終わりです。次章からは、また別の話になります。
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