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このパーティーの中に魔王がいます  作者: らうんどろびん
第七章 俺、魔王なんだけど、気が付いたら勇者と体が入れ替わっていた件2
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第三十四話  俺、魔王なんだけど、気が付いたら勇者と体が入れ替わっていた件2 大きな瞳

「な、なんだ!? こんな不気味な魔力の流れは、今まで感じたことがない!」


 俺は部屋を見回して警戒した。何かとんでもないものが近くにいる。俺の直感はそう訴えているが、周りには何もないようだった。しかし、俺の体を痺れさせる悪寒は増すばかりだ。何だ? 何が起こっている?

 俺は混乱する頭を持て余していたが、次の瞬間には直観に駆られて、頭上を見上げた。


 部屋の天井には、闇があった。


 いや、闇といっても、普通の闇とはちがう。それは光の影として生まれる闇などではなく、そこには光をも喰い尽くそうと大口を開けた漆黒の闇が部屋の天井を隙間なく覆っていたのだ。


 俺が漆黒の天井を見上げたまま、凍り付いたように動けなくなり、暑くもないのに汗をだらだら流して立ち尽くしていると、その闇の中心に一筋の赤い光の切れ目が入った。そして、刹那にその切れ目がクワっと広がり、その中から俺の頭よりも一回り大きな一つの瞳が現れた。


 見上げる闇の中心から、巨大な一つ目が俺を見つめている。それと目を合わせると、背筋に氷壁が張り付いたのかと感じるほどぞっとしたが、俺は目をそらすことが出来なかった。


「我は夢幻を司る魔神、ナイトメア。召喚魔法陣によって異界よりこの世界に呼び出された」


「異界の魔神だと!?」


 あの小娘は、とんでもないことをしてくれた。異界魔神の召喚は魔族にとっては禁忌の闇魔法術だ。それでも、魔術の心得に自信がある者は、一度は挑戦してみたくなるものらしい。しかし、とてつもなく高度な術式のため、皆、挫折するのだ。魔王軍でも指折りの魔法の使い手であり、博識でもあるワイトでさえ匙を投げた程だ。それを人間の小娘が成功させるなどとは信じがたいが、ここに魔神が顕在している。恐ろしい小娘だ。


「小僧、我の夢は楽しんで頂けたかな?」


 魔神が重々しい響きで俺に語り掛けてきた。


「夢? 何のことだ?」


「お前が今見ている夢の話だ」


「俺が? 今見ている・・・だと?」


 魔神は何を言っているんだ? 夢というのは、眠っている間に見るものだ、俺は起きていて、今こうして魔神と会話しているではないか。


 ・・・いや、違うのか。


「俺の実体は眠っている。そして、今いるこの世界は夢ということなのか? 魔神よ、そういうことなのだろう?」


「ほう、流石だな小僧。我が作り出した夢をその中にあって、それが夢だと気づける者はまずいない。皆、夢の中ではそこが現実だと疑わないのだ。我はこの世界に召還された直後、我がこの世界で最も興味が湧く存在に引き寄せられた。それがお前だ、小僧」


「だから、お前は俺に趣味の悪い歪んだ夢を見させているというわけだな。勘弁してもらいたいものだ」


「グハハハハハハッ」


 俺が文句をつけると、直後に魔神が大声で笑った。


「趣味の悪い夢か。我はお前に夢を押し付けているわけではない。お前が望むものを見せているのだ。お前の無意識が望むものをな」


「そんな馬鹿な!? 俺がこんな女の体になる世界を望んでいると言うのか? ふざけたことを言うな!」


「グハハハハッ、小僧、まあそういきり立つな。お前が女の体になっていたからといって、女になることを望んでいるとか、そういう単純な話ではない。そもそも、男か女かなどはどうでもよいことだ」


「な!? 魔神にとってはどうでもよいことかもしれんが、俺たちにとっては結構大事なことだぞっ」


 俺は魔神から放たれる圧倒的な威圧感に気おされながらも、なんとか言い返した。魔神の価値観が主観の変な夢を見せられたら、こっちはたまったもんじゃない。だが、魔神は意に介した様子もなく続けて語りだした。


「意識が覚醒している時に無意識を探ることはできぬ。つまり、論理によって夢を理解しようとしても無駄なことというわけだ。さて、もう飽きたな。この世界はそろそろ幕引きとするか」


 幕引き? 魔神は幕引きと言ったな。これで俺のこの悪夢のような現実、いや、魔神が言うには今は夢の中らしいが、それが終わるということだろうか?


「小僧、ここはお前の夢の世界だが、お前が目覚めた後の世界も我にとっては夢と変わらん。我がお前と話しているこの瞬間も夢ではあるが、我にとっては現実でもある。そして、小僧、これはお前にとっても言えることだ。お前が現実だと思っている世界は夢かもしれんし、夢だと思った世界は本当に只の夢なのかな? よくよく考えてみることだ。」


 魔神が俺を嘲るような瞳で見つめながら、よく意味の解らないことを言った後、強烈な眩暈が俺を襲った。そして、俺の意識は遠のいていった。

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