表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『第一印象、マイナス100点。 ―最悪な出会いが、最高の出会いになるまでの物語。』  作者: 季波


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/29

第6話「ハリネズミ」

大学の講義が終わる。

「終わったぁー!」

勇人は大きく伸びをしながら教科書をカバンへしまう。



その時だった。

ころん。

小さなハリネズミのぬいぐるみが床へ転がった。

「あっ」



勇人が慌てて拾おうとするより早く、真司がひょいと拾い上げる。

「……何これ」



「か、返して!」

勇人は珍しく焦っていた。



真司は口元を緩める。

「へぇ」

「男のくせに、可愛いもの好きなんだ♥」



「悪いかよ」

勇人は頭をかいた。

「姉ちゃんが三人いるし、ぬいぐるみ好きで」

「俺もいつの間にか好きになってたんだ」

「こいつは俺の相棒なの」



真司は少しだけ目を丸くして笑った。

「持ち歩く程好きなんだ」



「これカバンにつけられるし」

「男が持ってたら、そんなに変かよ?」

 


「別にいいんじゃない」

「男のくせにって言ってる私も人のこと言えないし」

「女装してるし」

「意外と可愛いところあるじゃない。」



「姉ちゃんたちにも同じこと言われるんだよなぁ」

勇人は照れくさそうに笑いながら、ぬいぐるみを受け取った。



その様子を見ていた桜子が、小さく呟く。

「……かわいい」

桜子は慌てるように視線を逸らした。



「え?」

勇人が顔を上げる。



「ハリネズミ」

桜子はぬいぐるみを見つめた。

「すごく、かわいい」



勇人は嬉しそうに笑う。

「だろ?」



桜子は少しだけ視線を落とした。

「実家でも一つもなかったから、なんとなく買ったことがなくて」



「そうなのか?」



「うん。」

「母がよく言うの」

「『本当に美しいものは、足し算じゃなくて引き算なのよ』って」

「だから実家には、必要なものしか置いてなくて」

「そのせいか、私も今まで買おうって思ったことがなかったの」



勇人は少し驚いたように頷く。

「へぇ、そんな考え方もあるんだ」



桜子は少し照れながら微笑んだ。

「だから、少し憧れる」



勇人は何も考えずに笑う。

「じゃあ今度、一緒にゲーセン行こうよ!」

「可愛いハリネズミのぬいぐるみ、いっぱいあるかもしれないぞ!」



真司は即座にツッコんだ。

「今の話、聞いてた?」



「え?」



「家が引き算の美学だって話だったでしょ」



「いや、三人で!」



「人数の問題じゃないのよ」



桜子はそんな二人を見て、くすっと笑った。

「ふふっ」



勇人はハリネズミをカバンへ戻す。

「名前あるんだ」



「え?」



「ハリー」



真司は即座に言った。

「そのまんまじゃない」

「しかも名前まで付いてるし」



「分かりやすいだろ!」

三人の笑い声が、昼下がりの大学に響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ