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『第一印象、マイナス100点。 ―最悪な出会いが、最高の出会いになるまでの物語。』  作者: 季波


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第52話「それぞれの好き」

「勇人、しーちゃんの帰国のお祝いなんだけど、BAR Lampでできないかな?」



「いいんじゃない? 真司もよく行ってたし」



「でも、お店を使わせてもらえるかな?」



「蓮さんに聞いてみたら? 難しかったら、別のお店を探せばいいし」



「そうだね。聞いてみる」

桜子はスマホを取り出し、夜空に電話をかけた。

「明日、少し相談したいことがあるんですけど、営業前に伺ってもいいですか?」



「いいよ。開店準備してるから、六時くらいにおいで」



「ありがとうございます」



電話を切ると、桜子は勇人を見る。

「勇人、明日の六時に一緒に行こう」



「わかった」



翌日。

約束の時間より少し前に、桜子と勇人はBAR Lampに着いた。

店の扉には、まだ「CLOSED」の札が掛かっている。



桜子が扉を軽くノックすると、中から夜空が顔を出した。



「いらっしゃい。どうぞ」



「ありがとうございます」



店内では、夜空が開店準備をしているところだった。

カウンターには磨かれたグラスが並び、いつもより少し明るい照明が店内を照らしている。



「それで、相談って?」



「はい。しーちゃんが帰ってきたので、みんなでお祝いしたいんです」

桜子は店内を見渡した。

「それで……できれば、ここでできたらと思ってるんですけど」



「ここで?」



「はい。でも、お店の迷惑になるなら、別の場所を探します」



夜空は少し考えてから、笑った。

「いいよ」



「本当ですか?」



「もちろん。真司くんの帰国祝いでしょ?」



桜子の表情がぱっと明るくなる。

「ありがとうございます!」



「それで、誰を呼ぶの?」



「神谷先生と黒田先生にも来てもらいたいです。それから、フェスで一緒だったみんなにも声をかけたいな」



「いいね。せっかくだし、みんなで真司くんを祝おう」

「料理はどうする?」



夜空に聞かれ、勇人が少し考える。

「俺、作ります」

「あと、デザートも任せてください」



「デザートも作れるようになったんだ」

「すごいな」



「まぁ」

「せっかくだし、真司が好きそうなもの作りたい」



「……じゃあ、私、お花を担当してもいいですか?」



「花?」



「はい。しーちゃんがアメリカに行く前に、ドライフラワーを渡したんです。そのとき、私が選ぶ花が好きだって言ってくれて」

桜子は少し照れくさそうに笑った。

「それが嬉しくて、私、装花の仕事がしたいって思うようになったんです。今、そのための勉強をしていて」



「そうだったんだ」



「だから今回のパーティ、店内のお花の飾り付けを私にやらせてもらえませんか?」



夜空は嬉しそうに笑った。

「もちろん。桜子さんに任せるよ」



「ありがとうございます!」



勇人が笑う。

「じゃあ俺は料理で、桜子は花だな」



「うん!」



「飲み物は俺に任せて。あとは人手が足りないところを手伝うよ」



「ありがとうございます、蓮さん」



「じゃあ、決まりだね」

「しーちゃんにも連絡しておかないと」

桜子はスマホを取り出し、真司にメッセージを送った。

『今週の土曜日、七時にBAR Lampに来てね! 予定空けておいてね』



しばらくすると、真司から返信が届いた。



『了解。楽しみにしてる』



「しーちゃん、大丈夫だって!」



「じゃあ、あとは当日に向けて準備だな」



「うん! 絶対に喜ばせたい」

桜子は嬉しそうに頷いた。



それから、先生達も加わって、パーティの準備が始まった。



「神谷先生、そのグラスはこっちです」



「分かってますよ」



「さっきから三回間違えてますけど」



「さすが、よく見てますね!」

神谷は黒田の手元を指さした。



「黒田先生こそ、そのカップの位置、間違えてますよ」



黒田は手元を見て、黙り込んだ。



「……神谷先生も、よく見てるじゃないですか」

「自分以外のことはね」



「お喋りはいいですから。二人とも、準備してください」

夜空が呆れたように笑った。



桜子は店内を彩る花を一つひとつ飾り、テーブルの上にも真司を迎えるための花を添えていった。

勇人はエディブルフラワーを使った洋菓子や軽食を準備し、夜空も料理に合う飲み物を用意した。



それぞれができることを持ち寄りながら、真司を迎える準備は整っていった。

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