第31話「共同開発」
数日後。
和菓子作りを教えてもらうために、和菓子屋に来ていた。
店主は作業台へ向かい、材料を並べた。
「まずは基本を覚えてもらいます。」
「羊羹は、見た目以上に繊細なお菓子です」
学生たちは店主の手元を囲み、一つひとつの工程を真剣に見つめる。
寒天を溶かす火加減。
餡を混ぜるタイミング。
桜の塩漬けの下処理。
どれも少し違うだけで、仕上がりが変わってしまう。
「なるほど……」
桜子は夢中でメモを書き続ける。
勇人も頷きながら手順を書き留めた。
一通り教え終えると、店主は二人に微笑んだ。
「基本はこれで十分です」
店主は続けて、くず切りや大福など、比較的作りやすい和菓子についても一通り教えてくれた。
店主の所作を見つめながら、桜子は華道の稽古で母に教わった、
「基本が一番大切」という言葉を思い出していた。
「技術は、作って感覚で覚えるしかありません」
「材料は用意しておきます。今回は商店街活性化のため、特別に好きなだけ使って構いません。思う存分、挑戦してみて下さい」
勇人は少し考え込んだ。
大学フェスで歩きながら食べ歩きを楽しむ人たちの姿を思い浮かべた。
「あの、店主さん」
「大学フェスなら、羊羹だけじゃなくて飲み物もセットにしたらどうですか?」
「飲み物か」
店主は少し顎に手を当て、頷く。
「それも面白いですね」
「まずは、羊羹を完成させよう。」
「飲み物は、その味に合わせて考えてみましょう」
「分かりました」
勇人は桜子を見る。
「放課後、俺の家で続きやらない?」
「えっ……いいの?」
桜子は少しだけ目を丸くした。
「キッチンもあるし、時間を気にせず試作できるし」
桜子は少し考え、小さく笑った。
「うん、よろしくね」
店主も穏やかに頷く。
「桜子ちゃん、困ったらいつでも店へおいで」
その日の放課後。
二人は材料を受け取り、勇人の部屋へ向かった。
「お邪魔します」
ソファやベッドには、ハリネズミや猫のぬいぐるみがコロンと置かれていた。
(勇人らしい部屋だな。可愛いものが好きだって言ってたな。)
「どうぞ」
エプロンを身につけた二人は顔を見合わせる。
「よし」
「桜羊羹作り、始めよう」




