第27話「何考えてるの、私」
講義が終わり、勇人と桜子は並んで歩いていた。
勇人がふと口を開く。
「そうだ」
「どうしたの?」
「なぁ、今度の日曜、遊園地行かない?」
桜子の足が止まる。
「……遊園地?」
「うん。前に行きたいって言ってただろ」
その言葉を聞いた瞬間、桜子の表情がぱっと明るくなる。
「行く!」
即答だった。
「返事早いな」
勇人は思わず笑う。
真司がやってきた。
「お、二人で帰りか?」
真司が笑いながら声をかける。
桜子は振り返ると、ほっとしたように笑った。
「今度の日曜、遊園地行くの」
「へぇ、初デートか。勇人、桜子泣かせんなよ」
「泣かせねぇよ」
「はいはい、ごちそうさま」
「初デート、楽しんで来なさいよ」
「お土産よろしく」
「またね」
「うん、しーちゃんまたね」
桜子は嬉しそうに手を振った。
「真司、いつも通りだったな」
「うん。変わらない、いつものしーちゃんだったね」
「……よかった」
「勇人と遊園地、楽しみだな」
言った瞬間、桜子は自分で照れて顔を赤くした。
「俺も。早く日曜になってほしい」
勇人は少し照れくさそうに笑った。
二人は顔を見合わせ、小さく笑った。
「桜子、絶叫系は?」
「少し苦手かも」
「じゃあ俺が守ってやる」
「もう」
桜子は肩を軽く叩く。
「観覧車は乗りたい」
「じゃあ最後に乗ろうか」
「うん!」
そんな何気ない約束が、桜子には何より嬉しかった。
家に帰ると、桜子はベッドへ飛び込んだ。
「遊園地……」
枕をぎゅっと抱きしめる。
「デートだ……」
思わず頬が緩む。
勢いよくクローゼットを開ける。
「何着ようかな」
淡いピンクのワンピース。
白いカーディガン。
鏡の前で合わせてみる。
「これかなぁ」
「うーん……でも、こっちも可愛いな」
ショルダーバッグも並べてみる。
「どれが合うかな……」
その時だった。
引き出しを開けた桜子の手が止まる。
「……あ」
そこには可愛らしいピンクのレース。
清楚な白いレース。
そして少しだけ大人っぽい黒のレース。
「…………」
数秒、固まる。
(いやいやいや。)
(私、何見てるの!?)
(遊園地だよ!?)
(なんで下着選ぼうとしてるの!?)
(……違う違う。)
(勇人に見せるわけじゃないのに……。) そう思った瞬間、また顔が真っ赤になった。
「もう~~っ!」
慌てて引き出しを閉め、そのままベッドへ倒れ込んだ。
「私ったら、何考えてるの~~っ!」
枕に顔を埋めながら、足をばたばたさせる。
しばらくして小さく呟いた。
「……でも」
勇人が笑ってくれたら嬉しいな。
そう思うだけで胸が熱くなる。
「もう、本当に恋って大変……」
桜子は赤い顔のまま、枕に顔を埋めた。




