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『第一印象、マイナス100点。 ―最悪な出会いが、最高の出会いになるまでの物語。』  作者: 季波


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第25話「友達だからこそ」

真司はベンチに座って待っている。

「急に呼び出して悪いな」



「大丈夫だ、待たせたな」



真司はゆっくり立ち上がる。

「呼び出したのは、俺の腹の虫が収まらなくてな。」

「……桜子から話は聞いた」



勇人は小さく頷く。

「そうか」



真司は勇人の胸ぐらを掴む。

「お前、ずっと勝手に決め付けてたよな」



勇人は抵抗しない。

「……悪い」



「悪いじゃねぇ」

「泣かせたら許さねぇからなって、言ったよな?」

「桜子がどれだけ泣いたと思ってる。」

「俺は毎日見てた。」

「笑わなくなって、上の空になって……。」



「それでもお前は、一人で答えを決めて逃げた」



勇人は何も言えない。



真司は拳を握る。

「……一発だけ殴らせろ」



ゴッ。

頬に鈍い痛みが走る。

勇人は避けずに殴られる。

しばらく沈黙。



真司は拳を見つめた。

「……痛ぇな」

ゆっくり握り締めた拳を開く。

真司は力なく笑った。

「殴る方も、結構きついんだぞ」



「次、桜子泣かせたら」

「その時は絶対に許さねぇ」



勇人はゆっくり頷く。

「ああ」

「もう逃げない」



真司は苦く笑う。

「約束だからな」

真司は拳を差し出した。

勇人も小さく笑い、その拳に自分の拳を軽く合わせた。



そして少し照れくさそうに、

「……飲みに行くぞ」



「え?」



「今日は俺がおごる」

「行くぞ」



二人は並んで公園を後にした。 行き先は、BAR Lampだった。



「いらっしゃいませ」

「今日は二人?珍しいね」

「何飲む?」



「今日は強めので」

真司は言った。



「そっちの、顔を腫らした勇人は?」



「同じやつで」



「わかったよ」

「少し待ってて」



「はい、二人ともお待たせ」

夜空は棚から一本のウイスキーを取り出し、氷を入れたロックグラスへ静かに注いだ。



ウイスキーのロックを二人分カウンターに置く。

さらに、小皿のミックスナッツを二人の前へ滑らせた。

「空きっ腹で飲むなよ」



「ありがとうございます」

二人は静かにグラスを口に運んだ。



勇人は苦笑する。

「強いな」 「普段、こんなの飲まないからな」



「俺もだ」

真司はグラスを静かに置いた。



「BARで飲んだ翌日に」

「……俺、告白するつもりだった」

少しだけ笑みを浮かべた。

「あの時は、少し期待したんだ」

「でも、桜子を見てたら……全部分かった」



勇人は目を見開く。

「えっ……?」

言葉が出ない。 グラスを握る手に力が入る。

(……そんなこと、一度も気づかなかった。)



「でも、お前が勝手に勘違いして」

「桜子を避けるようになって」

「あんな悲しそうな顔……」



「初めて見た」

「桜子が好きなのは、俺じゃない」 「お前なんだって」

真司は自嘲するように笑う。



「だから」

「桜子がお前を選んだのに」

「そのお前が、一人で全部決めて逃げた」

「……本当にムカついた」

真司は前髪を乱暴にかき上げ、深く息を吐いた。



勇人はグラスを見つめたまま、小さく口を開く。

「……ごめん」

「俺、お前の気持ちまで踏みにじってたんだな」



真司は首を横に振る。

「違う」

「振られたのは俺の問題だ」

「でも、お前が勝手に諦めたのは別の話」



少しだけ笑う。

「俺はちゃんと負けた」

「だから、お前は最後まで桜子を幸せにしろ」



「……ああ」 「約束する」

勇人は静かに頷いた。


真司は肩の力を抜いた。

「その顔、やっと少しお前らしくなったじゃん」



勇人も思わず笑う。

「殴られたからかもな」



「そうだな」

真司は照れ隠しのように笑う。

「それと――」

「勘違いすんなよ」

「別に俺が可哀想とか思うなよ」

勇人は黙って聞いている。

「俺は男にも女にもモテるんだからな」



「次の恋くらい、すぐ見つける」



勇人は思わず笑う。

「……自信あるな」



「当たり前だ」

二人はグラスを軽く合わせた。

カラン、と静かな音が店内に響く。



「ふふっ。」

「さっきより、ずっといい顔してるね」

「何か作ろうか」

「今日は特別サービスだ」

夜空は二人を見比べ、穏やかに微笑んだ。


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