第23話「本当の気持ち」
講義が終わり、学生たちが教室を出ていく。
「昨日さ、教授に研究室呼び出されたから、
『何かやらかした!?』って身構えたんだけどさ」
「それで?」
「落とし物届けてくれただけだった」
「お前、被害妄想強すぎ(笑)」
教室は少しずつ静かになっていく。 廊下には学生たちの話し声が響いていた。
勇人は小さく息を吸い、教室の前に立つ桜子へ歩み寄った。
「桜子」
突然名前を呼ばれ、桜子はゆっくり振り返る。
「……勇人、どうしたの?」
少しだけ不安そうな表情だった。
勇人は視線を合わせたまま言う。
「今日、少しだけ時間あるか?」
桜子は一瞬驚いたあと、小さく頷いた。
「……わかった」
「じゃあ私は講義終わったら、先に帰るね」
真司は言った。
「うん、ごめんね」
桜子は小さく微笑みながらも、どこか落ち着かない様子で言った。
放課後。
二人は大学の中庭にあるベンチへ向かった。
夕方の風が木々を揺らしている。
しばらく沈黙が続いた。
先に口を開いたのは勇人だった。
「この前は、ごめん」
桜子が顔を上げる。
「急に避けたり、一人で決めつけたりして……悪かった」
その言葉を聞いた瞬間。
桜子の目に涙が浮かんだ。
「ずっと不安だった……」
震える声だった。
「どうして、急に避けるようになったの?」
「私、本当に分からなかった」
涙がぽろりと頬を伝う。
「このままずっと……前みたいに笑えないのかなって思ったら……」
桜子は唇を噛む。
「気づいたら、泣いてた」
勇人は胸が締めつけられるような思いで、その言葉を聞いていた。
ふと、夜空の言葉が静かによみがえった。
『本当の答えは、ちゃんと本人の口から聞くのが一番だから』
桜子は涙をぬぐいながら続けた。
「勇人と一緒に過ごした時間、本当に楽しかったの」
「バーガーショップも、ゲームセンターも、タピオカも、ショッピングモールも」
「BAR Lampで話した時間も」
「……また、勇人と笑いたいって、そればかり考えてた」
「勇人に聞いても、『俺の問題だから』って……」
「何も話してくれなくて」
「だから、何も言わずに離れていくのが……すごく悲しかった」
涙をこぼしながら、桜子は勇人を見つめた。
勇人は静かに目を閉じた。
「……本当にごめん」
「ちゃんと話す」
そして、ゆっくり口を開く。
「俺さ」




