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『第一印象、マイナス100点。 ―最悪な出会いが、最高の出会いになるまでの物語。』  作者: 季波


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15/29

第15話「好きのサイン」

翌日。

講義が終わると、三人はいつものように教室を出た。



「今日は暑いね」

桜子が手をかざして空を見上げた。



「本当だな」

勇人は笑いながら歩き出す。



真司もその隣を歩きながら、昨夜の夜空との会話を思い出していた。

――恋をしたら、誰だって少しはらしくなくなるさ。

(……そうなのかもしれないわね。)

そんなことを考えていると、桜子が小さく立ち止まった。



「あっ」



「どうした?」

勇人がすぐに振り返る。



「講義室にノート忘れてきちゃった」

「取ってくるね」



桜子が戻ろうとすると、勇人はすぐに首を振った。

「いいよ。」



「え?」



「俺が取ってくる」 「結構距離あるし、俺が行ったほうが早いよ」 そう言うと、返事を待たずに駆け出していく。



「勇人!」「あっ、行っちゃった」

桜子が慌てて呼ぶが、勇人は笑って手を振るだけだった。



その背中を見送りながら、真司は静かに目を細める。

(こういう人なのね。)

(桜子のことになると、迷わない。) (でも……。)



少しして戻ってきた勇人は、ノートを桜子へ差し出した。

「はい」



「ありがとう!」 「助かっちゃった」

桜子は嬉しそうに笑う。

(今日は本当に暑かったから。)

(勇人がいてくれてよかった。)



勇人は少し照れくさそうに頭をかく。 「そんな大したことじゃないって」



(勇人が桜子を見た瞬間の顔を、私は今でも覚えている。)



桜子はノートを抱えながら、嬉しそうに笑う。

「勇人って、いつも言葉より先に動いてくれるよね」



その笑顔を見た瞬間、勇人も自然と笑っていた。

作った笑顔ではない。 心から安心したような笑顔だった。



(……やっぱり。)

(でも、今は違う。)

(あの頃とは比べものにならないくらい、その想いは深くなっている。)



真司も微笑む。 「そうね」

口では笑っている。

けれど胸の奥は、少しだけ痛かった。

(桜子。)

(あなたは、まだ気付いてない。)

(勇人の優しさは、誰にでも向ける優しさじゃない。)

(全部、あなたに向いているのよ。)



桜子は何も知らず、勇人と笑い合っている。



(二人とも、本当に鈍いんだから。)

真司は苦笑しながら、小さく空を見上げた。



「そういえば、明日から大学イベントだったね」

真司が思い出したように言う。

「今年は結構規模が大きいらしい」



「楽しみ!」 桜子は満面の笑みを浮かべた。



勇人も、その笑顔につられるように笑った。

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