第12話「ドキドキは、すぐ隣に。」
「もう少し見てもいい?」
桜子が期待を込めた瞳で二人を見つめる。
「もちろん、いいわよ」
真司は微笑んだ。
「今日は付き合うって決めたしな」
勇人も笑って頷く。
三人はショッピングモールの奥へ歩いていく。
最初に入ったのは洋服店だった。
店内には色とりどりの夏服が並び、桜子は興味深そうに辺りを見回す。
「可愛い服がいっぱい」
真司はラックから白いワンピースを取り出した。
「桜子、これ着てみない?」
「いいの?」
「もちろん」
「見るだけでも楽しいわ」
店員に案内され、桜子は試着室へ入る。
少しして、カーテンがゆっくり開いた。
白いワンピースに身を包んだ桜子が、少し恥ずかしそうに立っている。
「……どうかな」
勇人は一瞬、言葉を失った。
(やばい……。)
普段より少しだけ大人っぽい。 目が離せなかった。
「勇人?」
真司が肘で軽くつついた。
「感想は?」
「……似合う」
思わず本音が口をついた。
桜子はぱっと笑顔になる。
「本当?」
「うん。」
勇人は照れ隠しに頭をかいた。
「すごく似合ってる」
「ありがとう」
(こんな服、初めて着た。)
(少しだけ、大人になれた気がする。)
その笑顔に、勇人の心臓はまた少し速くなった。
「ふふ」
真司は二人を見て、小さく笑う。
「勇人って、褒めるときだけ素直なのね」
「いいだろ、別に」
勇人は少しだけ顔を赤くした。
桜子は最後まで迷ったが、そのワンピースを選んだ。
会計を済ませ、紙袋を大事そうに抱える。
服を見終えると、三人は隣のコスメショップへ向かった。
「いい香り」 桜子は目を輝かせた。
「こんなにいっぱい並んでるの、初めて見た」
真司はテスターのハンドクリームを手に取る。
「手、出して」
「こう?」
桜子がそっと手を差し出す。
真司は少しだけクリームを塗ってあげた。
「どう?」
桜子は手のひらを見つめる。
「すべすべ」
「それに、いい匂い」
嬉しそうに笑う桜子を見て、勇人も自然と笑顔になった。
「桜子」
「ん?」
「これも似合いそう」
勇人が指差したのは、淡い桜色のリップだった。
「桜色」
桜子はくすっと笑う。
「名前まで私みたい」
その時だった。
近くにいた店員がにこやかに声をかける。
「そのカラーでしたら」
「こちらのテスターでお試ししますね」
店員は「TESTER」と書かれたリップを手に取り、微笑んだ。
使い捨てのリップブラシを取り出し、テスターから丁寧に色を取る。
「失礼します」
店員は桜子の唇へ優しくリップをのせた。
「こちらのお色、とてもお似合いですよ」
桜子は少し照れながら小さく微笑んだ。
「本当?」
勇人は思わず見とれる。
「……似合ってる」
真司も頷いた。
「ええ。桜子らしくて、とても素敵よ」
「彼氏さんも喜んでますね」
勇人は固まった。
「えっ?」
店員は真司にも目を向ける。
「あっ……もしかして、恋人ではなかったんですか?」
勇人は慌てて首を振る。
「ち、違います!」
桜子は不思議そうに答えた。
「友達だよ?」
その天然な一言に、真司は吹き出した。
「桜子はそのままでいて」
「?」
首をかしげる桜子を見て、勇人は耳まで真っ赤になる。
桜子はテスターで試したリップを手に取った。 「これ、ください」
会計を済ませ、小さな紙袋を受け取る。
コスメショップを出ると、真司が笑いながら言った。
「今日は勇人の負けね」
「何がだよ」
「顔、真っ赤」
「うるさいな」
桜子は二人を見比べ、不思議そうに首をかしげる。
「二人とも本当に仲良しだね」
その一言に、勇人と真司は顔を見合わせる。
そして、どちらからともなく笑ってしまった。
三人は笑いながら、ゆっくりとショッピングモールを巡った。
三人は笑いながら、ゆっくりとショッピングモールを巡った。
「明日も三人同じだし、一緒に行こうぜ」
「うん」
桜子は嬉しそうに笑った。




