09話 男子と仲良くなろう
教室にいると、目線は相変わらずキツイままだ。
僕は何もしていないというのに。
約束してしまったな……。サウナの熱に当てられたんだなきっと……。
けど、初めての友達である浴乃さんのためなら、僕も頑張らないと。
「隣のクラスの男子は、もう休学にあったらしいよ? 女子の身体を無理やり触ったとかで」
「やっぱり男子ってそうだよねー。こわーい」
生徒会長による搾取が本格的に始まっているようだった。
きっと、退学になってしまった男子も僕と同じように嵌められたのだろう……。ハニートラップによる賠償金請求と強制労働。会長の命令に従うことができないやつは、本当に退学にされてしまうのだろう。僕も選択を間違えてしまっていたら、同じ運命を辿っていたことだろう……。
学園の中でもこうなのだ。学園外でもなりふり構わずやっているのだろう。もっと酷いことが繰り広げられているのだろう……。止めないと……。しかし、僕の今の状況で出来ることなんて……。
「うちのクラスにいるヤツも、いつなにをやってくるか怖いわ……」
「昨日、既に脱衣所に堂々と入ってきたっていう噂も聞いたけど……」
「それ、本当です!? 私、もうスパ行けない……」
僕に厳しい視線が突き刺さる。
教室の中に居場所が無いというのに、さらに肩身が狭くなってしまった……。
もう一人の男子はしっかり登校してきているようだった。名簿を見てようやく名前を覚えたのだが、玖珠川忍くんというらしい。女子からはあまり絡まれていないようだが、偉いなアイツは。
まだ話したことが無いし、今度こそ友達になっておきたいな。
僕はゆっくり席を立ち上がり、女子たちに何か言われないように極力ゆっくり忍くんの方へと近づく。
「こんにちは。お昼ご飯一緒に食べない?」
「……」
思い切って声をかけてみたのだけれども、良い反応を示してくれなかった。無言で僕のことを睨んできている。僕の頭の先から、足の先まで見定めてくる。最後に目が合う。整った顔に大きな瞳。かなりイケメンな顔に睨みつけられると、本当に僕が悪いことをした人みたいに感じてしまう……。男子の居場所を少なくしているのは、事実だからしょうがないけれども……。
「イヤならいいんだけどね……。せっかくだから、男子同士仲良くなるのも大事かなって……。男子って肩身狭いし……」
「男子同士……」
一言つぶやくと、黙ってしまった。
何か悪いことを言ってしまったのだろうか……。
考え込むように俯くと向くと、少し笑う様子が見えた。何かいいことを思いついたのだろうか……?
「……そういうことなら、いいよ」
やっと口を開いてくれた。僕の提案を受け入れてくれたその顔には、晴れやかな笑みがあった。
さっき睨まれた時は、どうなるかと思ったけど、良かった……。
こういう表情を見るのは初めてだな。
いつも机に突っ伏して寝ている姿ばかりだったから、顔は見れないし。こうやってマジマジと見てみると、意外と整った顔立ちをしている。男子校にいたら、からかわれるくらい美少年だ。
甘いイケメンフェイスをしているから、女子からは差別対象にされないのかもしれない。たとえ男子だとしても、イケメンは無害認定ということだろうな。たしかに、この子なら害は無さそうだし。
それとは正反対に、真っ先にターゲットにされてしまったモブみたいな僕とは大違いだな……。羨ましいな……。
「それじゃ、どこで食べる?」
「あ、えっと、どこか、いい場所あったりするかな……?」
この子の顔に見とれてしまっていて、いきなり声をかけられたことに戸惑ってしまった。
あたふたと答えると、不満そうな顔を見せてきた。こちらから誘ったのだから、何か考えておけよということだろう。全く持ってその通りだ。計画力が無かったな……。
「それじゃあ、体育館裏にしよう」
「うん!」
彼にリードしてもらって、体育館裏へと行く。
僕はそんなところでお昼を食べたことがなかった。いつも教室の端で、縮こまってお弁当を食べてただけだった。
それにしても、小柄な男子なんだな。座っている時はあまりわからなかったけど。
制服のズボンは大きめのサイズを着ているようだけれど、それが逆に小ささを強調しているような気がする。
「何ジロジロ見てんの?」
「い、いや……。その制服のズボン、この学園の制服っぽいねー。すぐ準備で来ててすごいなーって。僕はまだ前の学園のままだから……」
「そりゃあ、この学園の制服使うでしょ。ここどこだと思ってんの?」
「それは、そうかー……。パンツスタイルの制服ってあるんだね……」
「当たり前っしょ」
なんとなくだけど、僕に対する態度がきつい気がするな……。何気ない話題で心の距離を近付けようと思ったんだけどな。男子中等部の時はもっと適当な話で盛り上がれたんだけどな……。何の話なら食いつくんだろうか。ファッションとかなのかな……?
何を話そうか迷っているうちに、目的地へとついてしまった。
「ここ。秘密の場所だから。誰も来ない場所」
周りを見ても、人の気配が無い。昼休みに過ごすには良い場所かもしれない。
「そうなんだ。ここいいね」
「でしょ!」
可愛く頷く。
イケメンって、頷くだけで男子をドキッとさせる力があるんだな。
お弁当を広げると、綺麗に整っていた。
「えっ、すごっ! お弁当の中、すっごい綺麗じゃない?」
「そうかな。これ、自分で作ってるんだよね」
「えっ、本当!? それ、すごすぎるよ。僕も教えて欲しいかも!」
忍くんは恥ずかしそうに笑っていた。
「えへへ、そんなに褒めてくれるなら、今度教えてあげるよ」
「ありがとう!」
作戦とかおべっかとかではなく、素直に関心してしまった。
このままの勢いで、お弁当作りとかをして仲良くなりたいな。
彼と仲良くなるための糸口は見えてきたかもしれないぞ。




