21話 ハニートラップ
「手取り足取り教えてあげるから……」
浴乃さん自身も下着姿になっている。後ろから僕に抱きつくようにして手を取ってくる。ぴたりと身体が合わさると、柔らかい胸の感触が背中に伝わってくる。
「こんなに密着したら……。当たってますって……」
「私のも触っていいんだよ? とりあえずは、そこにいる二人が待っているから」
目隠しして猿ぐつわを口にはめたモデルニ人。腕は身体の後ろで縛られているし、両腕も両足もがっちり縛られている。なんでこんな状態になってしまったんだ……。
浴乃さんが耳打ちしてくる。
「いいからさ、早く既成事実を作って欲しいんだよ。私はお姉ちゃんさえいればいいから」
「やっぱり……、僕はまた嵌められてるんですね……」
まさかとは思ったが、浴乃さんは明らかに黒だ。学園を経営する姉を助けるために、僕を生贄にすることを選んだのだろう。浴乃さんの為だと思っていたけれども、こんなことになってしまった……。
「タダでとは言わないから。今日一日、思いっきり楽しませてあげる」
「うぅーー!」
「ああううー!」
モデル二人が、言葉にならない訴えをしてくる。舌が上手く動かせないからだろう。その代わりに涎がだらっとベッドへと落ちる。
「今だけだよ? この後、良い思いなんてできないから。私からのせめてもの償いだから。今だけは良い思いして……?」
優しく囁かれる甘い言葉。それと一緒に、僕の腕はモデルの身体へと誘導される。
僕にはもう、抵抗する気力が湧いてこなかった。どう考えても、ゲームオーバーだ……。
こんな状況にされてしまっては、頭が働かない……。
「ううん……」
白崎さんのくびれ部分へと手が触れてしまう。無駄な贅肉がなく引き締まった身体。もう片方の手は、肩から鎖骨の辺りへと運ばれていく。徐々に下へと降りていき、上乳に触れているのだろうか。女性の柔らかさが手のひらを刺激する。初めて触れる感触。脳髄へ電気が走ったようだった。
くびれへ回された手を再度誘導されて、黒崎さんの身体へと誘われる。くびれている脇腹。そこから身体を下へ伝っていき、下半身へと進んでいく左手。臀部に差し掛かっているのだろう。こちらもまた、同様に柔らかい感触が僕の脳髄へ電撃を走らせてくる。
何をどうしたら、この世にこんなに柔らかいものがあるのだろうか。両手の平から刺激がやってきて、浴乃さんは後ろから抱き着いて耳元で囁く。
「もっと、楽しもう……? 力を抜いて……ご自由に操られる僕の手は、白崎さんと黒崎さんの大事な部分へと誘導される。
「うううぅー……」
「くすぐったい……」
浴乃さんに自由にくすぐられているのか、何かを感じているのか、モデル二人は悶えながら身体をくねらせている。声にならない声と一緒に、涎がベッドヘタラタラと落ちていく。僕は何をやってしまっているんだ……。
「これは、マッサージだから。罪悪感なんて持たなくて、大丈夫だよ? もっともっと、二人を気持ち良くしたあげよう?」
「そんなこと言われても……」
口では拒否しようにも、僕の身体は浴乃さんに操られるまま。手触りの気持ち良さに、僕は力が入らなくなっていた。
「キミに恨みはないんだよ……。しょうがないことなの……。これも、やらなきゃいけないことでね……。私にもマッサージして欲しいの……」
僕の後ろから抱き着いていた浴乃さんは、するりと身体を滑らせてベッドの上へと寝転がる。ベッドに置いていた目隠しを目元へと巻き、猿ぐつわを緩く口元へ付ける。そのまま手際よく、自らの腕も足も縛ってしまう。浴乃さんは器用にも、この状態でしゃべれるらしい。
目隠しをしているのだけれども、僕をそそらせるように上目遣いでお願いしてくる。
「一生のお願いです。私にもマッサージをして下さい。どうか、私の身体に触れて下さい。この際、追加で何をされても受け入れるから……」
浴乃さんからは、強気な声色はなくなっていた。必死に命乞いをするような、小動物のようにお願いをする。今までやっていたことが怖かったのだろうか、プルプルと身体を震わせ始めた。
僕は身体を自由にされたのだけれども、こんなのずるいよ……。
ここで何もしないなんてことは出来るはずもない。この誘惑に打ち勝てる程の理性を僕は持っていない。
こんなにも必死に求めてくる浴乃さんに対して、何もしないなんてことは、できない……。
この学園で、初めての友達になれた浴乃さん……。僕は彼女を救いたいから、こんなにも一生懸命やっていて……。そんな彼女が言うのなら……。
手を伸ばせば、すぐ届く距離。僕はじりじりと浴乃さんへと手を近付ける。
触らないでも熱が伝わってくるような、火照った身体。柔らかな肌がすぐそこに……。
僕が浴乃さんへと触れようとしたところで、部屋のドアが開けられた。
「警備のものだ!! この部屋に男子が忍び込んでいると通報が入った!!」
「おい、お前っ!! こんなところで何をしている!?」
警備服を着た二人組の女性が部屋へと入ってきた。ベッドの上の状態を見るなり、目の色を変えて突っ込んで来る。
「お前、女子たちを縛って無理矢理!?」
「こんなことをして許されると思うなよ!! 女の敵めっ!!」
二人の警備員が飛び掛かって来る。すぐに倒された僕は、二人に馬乗りにされて、身体ごと押さえつけられてしまった。
「若いくせに、非道なプレイをしやがる……」
「すぐに理事へ報告をっ!」




