20話 積んだ……。
「あら、滉斗くん。来れたんだね?」
白崎さんの部屋へ入ると、黒崎さんも一緒にもいた。ここへ来ることは予定していなかったのか、昼のバッチリ決まったメイクなどは落とし終えてスッピンでいるようだった。それでも、二人が放つオーラはすさまじい。
黒崎さんは、僕のことを褒めるように頭を撫でてきた。
「ここまで来れて偉いねー」
「こ、子供みたいな扱いしないで下さいよ。簡単に来れますよ!」
「キミが考えたのかな、女子の制服を着てここまで来るっていうこと」
「きっと、協力してくれた人がいるんだよね?」
僕と一緒に部屋へと入った浴乃さんへ視線が向く。
「い、いえ! 僕が無理矢理、浴乃さんの制服を奪って着ました! サウナに置いてあったのを拝借して……」
「ふーん? えっちじゃん」
「……はい!」
協力してもらっているのだけれども、それを敵であるモデル二人へ知られてしまうのは非常にまずいだろう。
三学年であれば、すぐに会長へと通じてしまうだろうし。浴乃さんの身に危険が及んでしまうことは絶対に避けなければならない。
「こいつ、マジありえないよね。この制服どうしてくれんの? 臭いがついたりしたら、新品買って弁償しなさいよね?」
「は、はい……」
饒舌に僕を咎めてくる浴乃さん。打ち合わせにここまでは無かったのだけれども……。浴乃さんのスイッチが入るポイントがあるんだろうな。
浴乃さんは、僕の胸倉を掴んできて、今にも殴ってきそうだった。いっそ、ここまで本気でやってくれるのであれば、僕も一芝居打っただけあるだろう。
白崎さんはニヤニヤ笑って、僕たちの様子を眺めている。
「そうまでして、私たちに会いたかったんだ? なにを期待してココに来たんだろうなー?」
「ぼ、僕は単純に約束を守るために……」
「うん、約束守ってくれてありがと。それじゃあ、なにしても良いよ? キミの頑張りに免じて、何しても許してあげるから。ここだったら、誰も見てないから、ワンチャン大丈夫かもよ?」
「いや、そういうわけじゃなくって……」
僕と浴乃さんの一芝居によって場の空気を持って行けたと思ったけれども、白崎さんの方が一枚上手だ。僕の肩に腕を回すと、耳元で囁いてくる。
「だって、女子寮に男子が侵入してきたってバレたら、一大事だったわけじゃない? そんな女子の目をかいくぐってここまでこれたことに賞賛を称しているんだよ」
昼間とは違い、冷静なしゃべり口。急に難しい言葉遣いになった気がするけれども、この子たちもこの学園にいられるっていうことは、相当学力が高いということだろう。……ということは、わかっていたけれども、昼間から言われている、この類の誘惑は明らかに罠だ。
巧みに誘い込んで、僕のことを貶めようとしているということだろう。
「……おい、滉斗」
「はい」
浴乃さんが僕を睨みつけてくる。
「とりあえず、それ、脱げよ。私の服だから」
確かに至極当然なことだろうけれども……、今言う?
この部屋に来るまでにだけ必要だったわけであって、部屋につけばもう不要だろう。とはいえ……。
「この部屋で着替えちゃったら、帰り道では男子だってことがバレちゃいますし……。そもそもここで着替えるなんて……」
妹は、蔑んだ目で見てくる。相変わらず演技が上手過ぎて、本当に蔑まれている気持ちになってしまう。
「着替えるんじゃないんだよ。脱ぐんだよ。パンツ一枚になれって言ってんの」
「ほぇ…………? パンツ一枚……?」
さっき二人でした打ち合わせでは言われていないんだけれども……。なにを思って僕をパンツ一枚にするっていうの……?
けど、なにか作戦があるのだろう。制服を持ってきてくれた件も上手くいったわけだし。騙されたと思って脱いでみよう。
ゆっくりと女子制服を脱いでいく。
本当にこれでいいのかと、一生懸命目で訴えてみても、浴乃さんはニヤッと笑うだけであった。
「脱いだら写真撮っておくから。白崎さんとツーショットで。パンツ一枚の状態のお前の写真な」
「なにを言ってるんだよ、浴乃さん……?」
「あ、それいいねいいいね。浴乃さん。私たちはどうしてたらいいかな?」
「お二人は、この手錠で縛られていてください。監禁されている雰囲気が出ると、こちらに全く非がないことが表せますわ」
どこに隠し持っていたのか、手錠をサッと差し出した。なぜ持っているんだ……。もしかすると、さっき自分の予備の制服を持って来た時に、一緒に持ってきたのか?
「目隠しなんていうのもあるといいです」
「そうしたら、この猿口とかmベルトとかもあると、尚良いかしら?」
「はい。私縛るの手伝うんで、お二人はベッドの上へどうぞ」
目隠しと、猿ぐつわは白崎さんの私物だろう。それも何で持っているんだと聞きたくなってしまうが、そっちは完全に趣味だろう。そういうプレイ、好きそうだし……。
「お二人とも少し痛いですが、きつく締めますね?」
「ふふ、浴乃さんみたいな可愛い子にされるって新鮮だなー。ちょっと興奮しちゃうかも」
なんだか会話を聞いているだけで、僕は興奮してしまいそうだ。グッと堪えて。浴乃さんの暴走を説得しないと。
なんと言えばいいか戸惑っていると、浴乃さんが手際良く白崎さん黒崎さんを拘束していく。
もしかして、どこか如何わしいお店で女王様でもしてましたか……? 口調とやり口が、本物に感じてきてしまうのですが……。
「これで出来上がりです」
手錠により、身体の後ろで手を拘束されており、どこから取り出したのか縄まで使って身体が縛り上げられいる。目隠しをされ、猿ぐつわによりが涎が垂れ流れてきていた。
「では、滉斗、触れ?」
「いやいやいや!?」
「状況わかってるかな? とりあえず、キミの着てきた制服は、もういらないよね?」
僕が着て来た女子制服をガサッと拾うと、窓から放り投げてしまった。
「いや……、何をしてるんです、浴乃さん……?」
「ふふふ。私も脱げば、状況証拠は完璧だね」
「それって、どういうこと……」
浴乃さんは、ニヤリと笑っている。
考えたくはなかったけれども、もしかして、また騙されていたのか……?
この状況って、実はかなりヤバいんじゃないか……。
僕は服も着ていないパンツ一枚の状態で、この部屋から出れないし……。警察を呼ばれでもしたら、何の言い訳も出来ない……。
積んだ……。




