17話 白崎さんと黒崎さん
サウナは今日も暑い。
それが平和の証なのかもしれない。
「おっすー!」
「あ、どうも、副会長さん」
今日も訪れて来た二年生たちをサウナの外へと案内しているところで、副会長と目が合った。
相変わらず男子よりも強そうな体躯をしている。副会長も、たまにはサウナで汗でも流しにきたのだろう。ストレス発散には最適だから。サウナの中から、二年生がほぼ出てきたところで、最後尾にいた女原さんが悶えながら出てくる。
「はぁはぁ……。女子の汗が蒸気になって、私の身体に入ってきて……。はぁはぁ……。私の身体は、ぐちょぐちょの液まみれ……」
また変なこと言ってるし……。
この人、口にガムテープでも巻いていた方がいいのではないだろうか……。
「お、女原ー! サウナで頑張ってるみたいだけど、ほどほどにな? 草津がなかなか落ちてくれないんだろ?」
「あ、副会長……。えっと、はい……」
副会長は女原さんの肩をポンポンと叩く。副会長は人が良いから、本心で気遣ってくれていると思う。
けど、女原さんは自業自得なんだよな……。女原さんは、女子が暑さに耐える姿を見て興奮してるだけだからなぁ……。
「これで、全員出ましたね。皆さん一度水風呂へ入って、整えてくださいね」
女原さんも二年生の元へと向かい、悶えながら水風呂に入っていった。色んな反応が見れて楽しい人だと思うけど、やっぱり苦手だな……。
副会長も女原さんを見送っていた。水風呂で大きく反応している姿を見て、「元気そうだから大丈夫か!」と頷いていた。
「相変わらず、人気のサウナだな」
「はい。皆さんのおかげで御盛況です」
「うんうん。良く働いてるぞ!」
副会長は僕の頭も撫でてきた。女原さんに対する時と変わらない。裏表もない豪快な人だ。
「ちょっと、僕は子供じゃないんですから……。恥ずかしいのでやめてくださいよ」
「おっ? 褒められ慣れてないのか? もっとやってやろ」
僕の反応を面白がってさらにわしゃわしゃと頭を撫でてくる。
この人は、なんというか、男友達と接しているような雰囲気があるな。話しやすいかもしれない。
褒められて嬉しいこともあるけど、僕もサウナの運営に慣れてきたと実感している。最近は、いいリズムで働けているのだ。サウナから出てきた女子たちを順番に水風呂へと捌いて。その間に、待っていた人たちをサウナへと誘導する。時間交代制で利用してもらうことにしたことで、サウナの中にも秩序が生まれてきていた。文句を言う人も出てこないし、倒れてしまうような人もいないのだ。
あと、ルールを作ることで、僕も規則的にサウナ外へと出て休憩ができるようになったし、女子たちも整う時間がしっかりとれている。
「本当に、お前をここで働かせるの、大正解だな」
「ありがとうございます」
「けど、そんなところ悪いけど、ちょっとハニートラップ置いてくからなー」
「ん……、ハニートラップ……?」
本当に、そんなトラップを仕掛けて来るとしたら、包み隠さな過ぎるでしょ……いてくからなー
「ん……を仕掛けて来るとしたら合?
「これも、学園経営に協力すると思ってくれ。お前も少しだけ役得を得られるわけだから。なっ!」
「いえいえ、ハニートラップとわかってて引っ掛かる人がいるはずないでしょ……?」
「大丈夫、すっげぇ美人だから!人だから! 思う存分引っ掛かってくれよな!」
うーん……。副会長の性格は嫌いじゃないけれども、僕を嵌めようとしているということは敵と認識しないといけないだろうか。副会長本人がハニートラップしてくるわけじゃないんだな。それは少しだけ、残念な気もしないでもないけども。
「おーい、こっちこっちー」
副会長が手招きをして呼ぶのは、二人の女子だ。遠くからでもわかるが、副会長と同じくらい背が高い。けれども、副会長よりも一回り細いような体系をしている。まさにモデル体型といった感じだ。月並みな表現だが、雪のように白い肌をした女子が一人。
清楚系な黒髪が頭の上でまとめられている。バスタオルを巻いて身体を隠しているが、上半身が長すぎてバスタオルに収まっていない。股のところギリギリで、バスタオルが無くなってしまっている。少しでも足を上げたら、股の中が見えてしまうんじゃないかというくらいだ。胸の膨らみもそれに拍車をかけている。
もう一人も同じくらいの身長をしている、こちらは、少し色黒といった雰囲気。同じく股のところでバスタオルが無くなっている。どちらかというと色白の方よりも、胸が大きいのだろう。股の辺りが見えてしまっている気がするけれども……。僕が立っている分には、角度的に見えないようで、ギリギリセーフというところだ。いや、ギリギリアウトかもしれないけど。
二人ともに、実際にモデルをしているのかもしれない。こんな女子、不通に生活していたら出会えない人たちだろう。
「私たちは、この子と仲良くなればいいのね?」
「私たちに手を出させればいいわけでしょ?」
この二人も、ハニートラップを隠す気がないらしい。お嬢様学園のはずなのだけれども、この二人も副会長と同様で、少し頭のねじが緩いというのか、端的に言ってギャルっぽい性格をしている。
「手を出させたら、ミッションコンプ」
「事務所からは、多大な賠償請求が行くはずってわけね」
「えっ……と、ペナルティが強めなトラップなんですね……。気を付けないと……」
結構なトラップだな……。かなり気合入れて気を付けないと……。
けど、副会長が都度ハニートラップポイントを教えてくれるのであれば、乗り切れるかな。
「一応紹介だけ。こっちが白崎茉莉、こっちが黒崎芽瑠。じゃあ、アタシは行くからなー!」
「あれ、副会長は……?」
「アタシも忙しくなるらしくってね。また今度相手してやるよー! 意外とお前、気合いありそうだしな! 二人でダメなら、私が力尽くでハニートラップしてやるから」
ハニートラップとは言えない気もすると突っ込まずにはいられないけど、副会長はすぐに行ってしまった。
残されてしまった僕が、まるでフラれてしまったような感じじゃないか……。
「うーん、キミ副会長好きなの? どんまいだね?」
「まぁ、私たちが相手してあげるからさ? 素直に騙されておけば、良い思いが出来るから。ウィンウィンで行こう?」
「あ、いえいえ……。そこは、お手柔らかにお願いします……」
早速スキンシップとして、二人で肩を組んでくる。二人とも僕より身長が高いものだから、無理なく肩を組めて、身体が密着する。細く見えても、しっかり柔らかいです……。
「よろしくね?」
「よろしくー!」
本物のモデルの二人から漂う匂い。
なにか特別なフェロモンを出しているようで、鼻の奥から脳髄をくすぐってくる。
ずっと近くにいられたら、ヤバいかも……。




