16話 黒い交際(※湯乃視点)
「そういえば、最近女原が生徒会室に来ないけど……。結果はどうだったんだ?」
部屋には、私と副会長しかいない。
なんとか仕事は回せているけれども、女原がいないと中々進みが悪い。やっぱりあの子は、かなりのパフォーマンスを秘めていたのよね。
「そう言えば女原のやつ、見事にやられてましたよ?」
「ん? それはどういうこと? 説明してもらえるかしら?」
副会長へと詰め寄る。私が睨みつけても、副会長は怯まないで涼しい顔をしている。
副会長に当たっても仕方がないことだけれども、女原が失敗するなんて考えにくい。何が起こったというのでしょう。
「やっぱり、女原って身体弱そうじゃん。熱には弱いんじゃないかな?」
「サウナの熱にやられているということかしら?」
そう言われると確かに、女原が熱でダウンしている姿が思い浮かぶ。きっと一人で無理して、草津を説得しようとして失敗してそうな気がする……。
「しょうがないですわね。そうだとしたら、副会長に頼みたいのですが……」
「私、行こうか?」
副会長は私の考えを察して軽く受け入れてくれるようだ。とはいえけれども、副会長までいなくなってしまったら本格的に学園の経営が回らなくなってしまう。優先順位としては、学園運営が一番。男子なんて二の次。
「いえ、あなたは私と一緒に仕事をしてもらいたいです」
「そうなのか? まぁ、草津の罪を重くしておきたいのであれば、鼻の下を伸ばしているところを捕まえればいいだけだろうし」
「その通りです。そんな簡単なことが、女原にはできなかったのでしょう。なにか一筋縄じゃいかないことがあったり……」
「単に女原の色気が足りなかったんだろうな、ははは。それと同時に、草津の野郎が、実はすごいやり手なのかもしれないけどな」
「なるほど……。純朴そうな雰囲気でしたが、見た目に騙されてはいけませんね……」
「もうまどろっこしいのは辞めて、トドメ刺しちゃえば?」
トドメを刺す。
つまり、決定的な証拠を突き立てて、これ以上学園内に勢力を伸ばせないようにする。
「あのモデルを導入してしまいましょう」
「そうそう、面倒ごとはすぐ終わらせちゃおうぜ。モデル二人を目の前にしたら、どんな男でもイコロだろ」
「ただ、私はあの子と仲が良くないから。副会長、説得をお願いします」
「おっしゃー! 任せろ! その役目は私がやっておくよ」
副会長が二つ返事で受け入れて、すぐに作戦遂行へと向かっていった。
副会長は実行力があってすぐ動いてくれる。私がすべきところを、私の代わりに率先して実行してくれるは、流石と言わざる追えない。右腕にしておいて正解だといつも思う。
安心して一口お茶を口に含むと、副会長と入れ替わりで生徒会室のドアが開かれた。
「久しぶりだな。邪魔するぜ」
入ってきたのは、派手な柄のシャツの男。派手な柄のシャツの身が二人ズシャツのポタンは三つ目まで開いており、見たくもない男性の胸元を見せつけられている。
「……何の用かしら? 返済の件は、期限はまだだと思うけれども?」
金銭面でのやり取り。貸し借りの関係を持ってしまってはいけない相手だとは知りつつ、弱みに付け込んで来た奴らだ。お金に困っていたから、どうしょせどうしようもなく支援を受けてしまったのだけれども、学園運営に口をはさんで来る存在になりつつある奴ら……。
「うちのボスが、そろそろこの学園を売り渡さないかって聞いててな?」
「いつ聞かれても、絶対に無理です。お引き取り下さい」
「タダでとは言わねぇって。入学者を増やす手伝いと、卒業生の就職先を斡旋してやるから、取分をもらえればいいんだよ」
「就職先をするたもやの夜の店でうだけでしょ。入学者を増やす方だって、裏社会で働かせてる少女をこの学園へ裏口入学させるだけ」
こいつらの手口はわかってる。一度提案に乗りかけてしまって、痛い目にあったのだ。ギリギリで無かったことにできたけれども、危ないところだった。裏社会とは絶対に関わらない。
「この学園に入りたいっていうヤツはいっぱいいるんだぜ?」
「うちの学園の在学生、もしくは卒業生という箔を付けて、裏社会で働かせたいだけでしょう。そんなことに利用されませんから」
「おお、やりたいことが伝わってるとは。お利口さんだねぇ?」
派手な輩たちは、空いている椅子にドカッと座り、だらしなく足も手も広げる。もう一人の年長者の方も口を開く。
「それが社会ってものだぜ。長い物に巻かれない者の末路は、どうなるものかねぇ? お利口さんならわかるんじゃないかな?」
二人掛りで脅してくる。こちらの反応を食い物にしようとするような、下衆い顔を向けてくる。すべてを自分の思い通り物事を動かそうとする。だから男は嫌いだ。
「用がないのでしたらお引き取り願います」
「男子校との合併は、うまくいっただろう? その見返りがねぇんだよなぁー?」
「……提案は頂きましたが、実現をしたのは私たちの成果です。そこに支払う謝礼はございません」
「うちのボスが裏で手を回してくれてたんだけどなー?」
「その礼が無いから、ボスがお怒りでな。このままだと、実力行使に出ることになるぜ?寄
「そんなことをしたら、こちらも考えがあります。最近、専属の弁護士を雇ったので、呼んできましょうか?」
「そっちについた弁護士、うちらから派遣してるヤツなんだよなー」
「……っ?!……そんなことあるわけない」
派手なシャツの男二人は、薄ら笑いを浮かべてこちらをニヤニヤと眺めてくる。こんなヤツらに騙されていたっていうの……。
「こっちが丁寧にお願いしているうちに要件は聞いておいた方がいいぜ? これは、最初から仕組まれている買収だからな。大人しくしとけ?」
「くっ……」
「今日のところは、忠告しに来ただけだからな」
「しっかり自分たちのやるべきことを考えておいた方がいいぜ? これ以上、状況を悪くしたくないだろ?」
それだけ言い残すと、部屋から出て行ってしまった。
生徒会室に残されたのは、私一人。味方になってくれる人が誰一人いない部屋……。
「お金を工面さえできれば……。あんな奴らに私たちの学園はやらないから……」
強く握った拳がフルフルと震える。あんなヤツらを怖いと思っている自分が情けない。
何もできない自分が悔しい……。




