14話 書記の女原さん
「今日もお願いしまっす!」
連日、忍くんがサウナへとやってくるようになった。気軽に会話してくれるようになったし、仲良くなっているということの証明だと思う。そのこと自体は良いのだけれども、サウナかぁ……。
「忍くん、最近サウナ多いね?」
「ボク、サウナハマっちゃったよ。これ、気持ちいいよ!」
忍くんがウキウキと楽しそうに答えてくれる。サラサラとした汗が、忍くんの胸の谷間へと汗が落ちていく。わずかにある谷間。そこに入っていくものだから、ついつい目線も行ってしまう。けれども、そんなジロジロ見てたら訴えられちゃうからな。みちゃダメだぞ、僕……。
「汗もいっぱいかいちゃうねー? バスタオルもすぐに湿っちゃうよ」
「そ、そうだよねー」
身体に沿って、汗が集まり、部分的にバスタオルが湿っている。胸元も小さなに合わせて湿り気が広がっている。
忍くんは、身体のフォルムは女子そのものだ。
まさか、この子が女子だなんて、服を脱ぐまで分からないだろ……。「こんな可愛い男子がいるはずないだろ?」って言われたら、その通りだとしか返せないけれども。
忍くんがサウナへ来ると、漏れなくクラスの女子も全員来るに等しい。人数が増えることで、一気に空気が薄くなるんだよね……。
「もっと、暑くして下さい?」
「そうそう、もーっと汗が出るように。ひーひー言っちゃうくらい!」
忍くんの取り巻きは、相変わらず元気だ。何がこの人たちに活力を与えているかと言えば、全て忍くんの挙動から得られる栄養素だろう。暑くなって、少し苦悶を浮かべたような表情が見たいからっていうことなのはわかってるけど。自分たちの方がひーひー言ってるんだよな……。
「ひーふー……」
「今日も、暑いけど……。みんなで水風呂に行ってスッキリ整おうね……!」
この気合いだけは認めてもいいかもしれない。僕も、見習った方がいいかもな……。!」
「ひゃーーん!」
「あつううぅーー!!」」
最後の仕上げように勢いよく熱波を仰いでいると、コンコンとドアがノックされた。
「少しいいかしら? サウナに入りたいのだけれども?」
「……っ!? 女原さん!?」
「生徒会の女原さんが来ましたわ。ここを譲りましょう」
生徒会の権力は相変わらず強いんだな。そそくさと、一年生は外へと出て行ってしまった。代わりに入ってくるのは、女原さんだ。それと一緒に、二年生と思われる女子たちも入ってきた。女原さんの取り巻きなのだろうか?
「あなたがキチンと働いているか見学させてもらいます」
「は、はい!」
眼鏡越しに、鋭い視線が僕へと刺さる。
「サウナを体験しようと思いまして、私のクラスのメンバーも連れてきました。早速お願いします」
ここで働いてから初めて見る人たちだけども……。
サウナが初めてっていうことはないと思って良いのかな?
いきなりタオルを振って熱波送っちゃって良いのかな?
「熱波を送る前に、毎回確認しているのですが、サウナは初めてでよろしいですか?」
「そうだけど?」
「お水は飲んでいらっしゃいましたか?」
「少し飲みましたよ?」
初めての人は、この辺りの認識が弱い。水分はかなりの量が必要になる。、
「ペットボトルー本分は飲んで頂きたいですが、そのくらい飲まれてはいないですか?」
「はあ? そんなに飲めるわけないでしょ? 私汗かかないので、大丈夫です寄
汗をかかないとなると、それは逆に危ないんだけどな……。
「サービスが悪いとして、減点です。ここでの行動は、全て給与に響くので心しておきなさい」
査定のための視察に来たっていうことなのだろうか。これは、真面目にやらないとだな。借金返済に響いてしまう。それは、僕の留年年数に直結するわけだ。
「それでは、遠慮なく行かせてもらいますね。僕も生活が懸かってるので」
タオルを上から下へと振り下ろし、熱波を送る。
八割程度の力だ。最初から全力でやってしまうと、仰ぎ続けられなくなってしまうから。
「あつっ!!」
「熱波が熱いですわ! 女原さん、これがサウナですか?!」
「そ、そうですわ。これが美容にもいいという噂ですのよ……。けど、思った以上に熱い……」
二年生の女子たちは美容のために来ているってことか。そういうことを目当てにサウナを利用するっていう人たちも多いからね。それであれば美容のために、しっかり対応してあげよう。
「はぁ……ん……」
「これ、すごいです……」
二年生女子というのは、一年生よりも成長している。あどけない一年生女子とは違って、女性になりかけているのだ。そんな女子たちが、艶やかに喘ぎ始めてしまう。
「こんなの、私、初めてです……」
「すごく……、熱いです……」
「私の身体に、熱いものが入ってきます……」
サウナの中の発言だからセーフと思うけれども、録音でもされていたら裁判で負け確定だろうな……。何をやっていたんだって言われても、言い訳できそうにもないな。
「あああぁぁーー………………」
「はぁはぁはぁはぁ……」
二年生女子が大変な状況になる中、女原さんは一人目の色を変えて周りを眺めていた。
「なるほどなるほど……。この体験は、確かにラグジュアリー……」
訳のわからない単語を使い始めた……。僕の辞書にそんな単語はないんだよなぁ……。テレビで見たゴージャスな姉妹が言っていたのはファビュラスだっけ?それとは違うけども……。とりあえず、高評価だと思えばいいのかな?
それであればとさらに熱波を送り出す。
「はあああー……。素晴らしい!!」
女原さんは、なんだか興奮しているみたいだ。これは、きっとサウナを楽しめている。良い傾向だな。もっともっと仰いでやろう。
「はぁーーん……。もっとぉーーー……!!」
「行きますよー! それーっ!!」
「あぁんーーー……! もっとーーっ……!!」
「やぁーーっ!」
「いいいぃぃぃいーーーーー……!!!」
「思いっきり行きますよー!!
「はああぁぁーーーーんんん……!!!!」
査定に響かれたらかなわないし。全力でやるしかない。
女原さんの息遣いが段々と荒くなっていったかと思うと、白目をむき始めてしまった。そんなに気持ちいいのかな……、っていうか危ない状態じゃないか!?
そう思った時には既に遅かった。女原さんは、座りながら横に倒れてしまった。
「やぱっ! 大丈夫ですか!!?」
「会長……。素晴らしいです……。ここは天国です……」




