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無口で清楚なコーニャお嬢様、実は落語の話になるとグイグイくる  作者: 春風亭吉好
俺はコーニャお嬢様に、Vtuber体験をさせる
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第37話 コーニャお嬢様、はじめての配信

 アバターのデータをコピーした後はYouTubeのチャンネル設定だ。チャンネル自体は予め取得してあったので細かい設定を入れるだけ。


 チャンネル名は『Vtuberナイン亭ネーニャのらくご語り』

 落語をらくごと平仮名にして響きを柔らかくする。Vtuberと入れたのはその方が検索にヒットしやすいと思ったからだ。


「カメラはどこッスか?」

「はっ、こちらに」

「じゃあこのコードをそこに繋げて欲しいッス」

「かしこまりました」


 ねねちゃんとセバスさんが協力してカメラ、マイクをパソコンに繋げていく。そこまで詳しくない俺とコーニャには見守る事しかできない。


「コーニャ、緊張しているか?」

「少し……」

「まぁ最初は殆ど視聴者もいないだろうしさ。だから俺たち相手に練習すると思って気楽にやろうぜ」

「はい……」

「先輩方〜、配信の準備終わったッスよー」

「オッケー。よし、コーニャ。行こう」

「はい……」


 カメラ、マイク、パソコンの設定は終わった。後は配信を始めるのみ。

 今回はテスト配信という事で事前の告知もなし。もしかしたら偶然見る人もいるかもしれないが、基本的には俺、ねねちゃん、セバスさんが自身のスマホで見てサクラのコメントをしてコーニャには伸び伸び喋ってもらう予定だ。


「わぁ……こうやって口も動くんですね……」

「おお、ちゃんと連動してる!」

「流石に上半身だけッスけどね。口パクと首の左右、簡単な手の仕草は先輩と同じ様に動くッス」


 ねねちゃんが貸してくれた機器でモーションキャプチャーができた。コーニャの喋りに合わせてアバターも簡単に動く。お陰でだいぶ雰囲気が出てきたな。コーニャも楽しそうだ。


「じゃあ配信始めるッスよ!」

「コーニャ、リラックスな」

「は、はい……」


 ねねちゃんが操作をして配信が始まった。配信ソフトにアバターを映し、そこからエンコード配信している……らしい。仕組みはねねちゃん任せだ。

 俺はスマホで配信を視聴してみる。画面にナイン亭ネーニャが表示された。配信は問題なくされている。

 まだ無言でいるコーニャに何か喋るようにアイコンタクトする。


「はじめまして……ナイン亭ネーニャです……」


 視聴者数は3となっている。俺、ねねちゃん、セバスさんだ。それぞれがスマホにイヤホンをして同じ部屋で視聴している。

 コーニャ、もといナイン亭ネーニャに対してそれぞれ『待ってました!』『8888888』『ご立派です』とコメントする。


「あ……えと……」


 コーニャが初めての配信という事で戸惑っている。俺は流れを作るために『どんなチャンネルなんですか?』とコメントした。


「は、はい……。このチャンネルは私の好きな落語について語るチャンネルです。少しでも多くの方が落語に興味を持ってもらえたらと思っています……」


 いいぞ。少し調子が出てきた。これから3人でコメントをしコーニャの発言を促す事にした。


『好きな落語家は誰ですか?』


「はい……春家梅歌《はるやばいか》師匠です! 現役落語家の中でも名人の1人だと言われています」


『新作落語は聞くッスか?』


「えと……たまに聞きますけど、私はどちらかと言うと古典落語が好きです。あ、でも新作落語もこれから聞いていこうと思っています」


『晩御飯は何にいたしましょうか?』


「ば、晩御飯ですか……? お魚でしょうか……」


『かしこまりました』


 セバスさんは何を聞いているんだ。ただ少しずつコーニャも緊張もほぐれてきた。

 いつもは落語の話になると急にグイグイ距離を詰めてくるコーニャだが、配信というフィルターがあるからか落語の話でも落ち着いている様に見える。


 そんな感じで3人のコメントにコーニャが返していくというのを繰り返す。スマホの画面ではアバターが可愛らしく動いている。イヤホンを通してコーニャの声が聞こえてくるのが不思議な感覚だ。


 暫くするとそれまで3人だった視聴者が4人に増えた。どこからか検索して偶然辿り着いたのだろうか……?


『素敵なお声ですわ!』


 ハンドルネームを見るとNorth Heavenとある。North=北。Heaven=天。そしてこの口調。まさか……。


「あ、えっと……はじめまして……」


『はじめまして。最近落語の勉強をしていて、検索していたら偶然、本当に偶然ここに辿り着きましたの。拝聴させていただきますわ』


 間違いない。コーニャの幼馴染であり、我が校の生徒会である北袋天《きたぶくろそら》だ。

 今日の配信はあくまで練習のつもりだったのでURLは知らせてなかったが……検索して張ってたのか?


『お好きな落語を教えてくださいませ』


「は、はい。廓噺《くるわばなし》という種類の落語があるんですがその中で紺屋高尾《こうやたかお》というのがありまして、あれが凄い好きです」


『あら、それでしたら先日聞かせていただきました』


「ホントですかー? どうでした? どうでした?」


 好きな演目の話になってコーニャがいつものようにグイグイきだした。

 かたや生徒会長もまだ面と向かってコーニャと落語の話はできなそうだが、コーニャに正体がバレていないようなのでここぞとばかりにコメントをしている。


 俺達は暫くその2人のやり取りを見守っていた。

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