第35話 コーニャお嬢様、アキバへ行く 後編
お目当ての配信機材は早々に手に入った。俺達はせっかくのアキバだし、真っ直ぐ帰るのもなんなのでアニメショップ散策をする事にした。
俺達が行ったのはアキバでも1番の大きさである有名チェーン店だ。
「とりあえずアニメショップといえばここだな」
「入った事はないけどよく見かけるッス。いやー、いつ見ても壮観ッスね。ビルが丸々アニメショップだなんて」
「ねねちゃんはゲームはするみたいだけどアニメは?」
「んー、アニメは流行ってるの位は見るッスけど。グッズとかは買わなかったッスねー」
ボクっ娘でメガネっ娘、ゲーマーで語尾が~ッスとアニメキャラの様に属性モリモリなねねちゃんだがアニメは意外と通ってないようだ。その横でコーニャは建物の雰囲気に圧倒されている。
「コーニャはもちろん初めてだよな?」
「はい……ここに全部アニメが……?」
「そうだよ。アニメとかは見たりする?」
「ええと、子供の頃はよく見ましたけど……。あ、でもマンガはたまに読みます……」
「お嬢様、本当にここへ行くのですか?」
「行きたい……、面白そう……。セバスちゃんも好きでしょう……?」
「わ、私は……!」
コーニャに痛い所を突かれてセバスさんが慌てている。なんとなくアニメ趣味がバレているんだろう。別に偏見はないだろうし隠す事ないのにな。
俺達は5階建ての建物を1階ずつ上がっていく事にした。
「2階はコミックスの新刊コーナーだ」
「へー、マンガだけでこんなにあるんスね。先輩のオススメはなんスか?」
「俺のオススメ? そうだなー、最近だとこの『悪役令嬢の異世界事件簿』とか、『我が家の天使様は夜になるとデレてくる』、ストーリーものだと『聖女1999』とか……」
「あの……気のせいか表紙のキャラが偏ってないッスか? みんな金髪ロングで、まるでコーニャ先輩みたいな……」
「私……?」
痛い所を突いてくるねねちゃん。コーニャはなんの事か気付かずにキョトンとしている。
「い、いや、コーニャと会う前から俺はこういうキャラ推しだし!」
「へー、ふーん……」
「な、なんだよー」
「……?」
俺の言い訳にジト目で返すねねちゃん。キョトンとしてるコーニャ。金髪ロング推しは本当に昔からの癖なのでスルーしてほしい……。
「あ、メイドさんのぬいぐるみッスね」
「3階はグッズコーナーなんだ。まぁメイドさんは定番かな」
「セバスちゃん……」
「ムム、このメイド服の作りは拘ってますね。所謂アニメのメイドではなく本物のメイドに近い……」
セバスさんがメイドキャラのメイド服を鑑定している。本物のメイドさん的にクオリティが高いらしい。
そういえば本物のメイドさんがいるにも関わらず騒ぎにはならない。流石アキバだ、セバスさんが完全に溶け込んでいる。
「4階はCDとかブルーレイのコーナーだ」
「へー、アニメショップは今でもCDとか結構あるンスね。ボクは殆どサブスクで聞いてます」
「まぁ今ってCD売れないらしいけどな。それでもアニメのCDは特典付いたりとかで需要あるんだよ」
「あ……落語……?」
「お嬢様、それは!」
コーニャが手に取ったCDは寄席を舞台にしたBL系アニメ『オレの語りをキミにだけ聞かせたい』のドラマCDだ。以前セバスさんが手に取っていたもの。
それを手に取ろうとするコーニャからセバスさんが慌てて取り上げる。
「セバスちゃん……?」
「あ、えーと……。あ、お嬢様、落語でしたらこちらにも」
「あ……可愛い……」
セバスさんが咄嗟に指差した先には同じく寄席を舞台にしたアニメ『落語女子、高座に舞う』のドラマCDだった。
これは若い女子落語家が古いしきたりに捉われず寄席の世界で活躍していく青春もの。絵柄は可愛らしく健全だ。
「お嬢様、それなんかどうでしょう?」
「うん……買う……」
落語ジャンルという事で気になったのかCDを持ってレジへ行くコーニャに、自分のプレイしているゲームのCDを見つけたねねちゃんも同行する。
「セバスさん……」
「……何も言うな!」
まぁ純粋なコーニャにBL作品は、それを自分のメイドさんが嗜んでいると知られるのは早いだろう。俺はこのやり取りをまた胸にソッとしまう事にした。
5階のイベントスペースは今日はお休み。エレベーターで地下まで降りて併設のカフェで一息ついた俺達はアニメショップから出た。
「いやー、楽しかったッスねぇー」
「CD……楽しみ……」
「ハハ、良かったよ。さて、配信機材も買ったしどうするか?」
「配信……最初は一緒にしてほしい……」
「え、でもそしたらコーニャの家で?」
「うん……良かったら来てほしい……」
前回は俺の部屋にコーニャが来てくれた。そして今日は不意にコーニャの部屋へ招かれた。もちろん2人きりじゃなくセバスさんもねねちゃんも一緒だ。
というか日本有数のお金持ちの家はどんななんだ……?




