第34話 コーニャお嬢様、アキバへ行く 前編
コーニャのための落語系Vtuberのアバターは出来上がった。
次に必要になるのは配信機材だ。コーニャの家にはパソコン、ビデオカメラはある。ねねちゃんの話によるとあと必要なのは配信用マイクとビデオキャプチャーらしい。
日曜日の午前中、それらの機材を買うために俺とコーニャ、ねねちゃんは秋葉原で待ち合わせをした。
「先輩、おはようございまッス!」
「ねねちゃん、おはよう。あとはコーニャだけだな。そういえばねねちゃんはアキバにはよく来るの?」
「ええ、結構パソコンとか好きなんでパーツとか買いに来るッス。ネトゲとかするんでスペックいるんスよねぇ。先輩はゲームはしないんスか?」
「んー、俺もゲームはするけどソシャゲが殆どだなぁ。ガッツリとパソコンでゲームは殆どしない」
「面白いッスよ! 先輩も一緒に廃人になりましょうよー」
「ハハハ、考えておくよ……」
ねねちゃんとたわいも無い話をしているとコーニャとお供のセバスさんがやってきた。セバスさんはあの日の事は言うなという感じでこちらを睨んでくる。
「お、おはようコーニャ」
「上戸くん、ねねちゃん、おはようございます……」
「おはようッス!」
「セバスさんもおはようございます」
「秋葉原などという汚れた地にお嬢様を行かせるからにはお供しなければなりません。今日は私も送迎だけでなく着いて行きますから」
「え、着いてくるんですか?」
「何か問題でも?」
「いえ……」
また凄い目で睨まれた。しかも絶妙にコーニャから見えない角度で。
セバスさんは自分もアキバを楽しみたいだけではないだろうか。まぁセバスさんの趣味をちゃんと知っているのは俺だけだし、言ってほしくないみたいだから黙っておこう。
「じゃあ買いに行こうか。ねねちゃんは配信機材も詳しいの?」
「配信は見る専ッスがこれを機に調べてきたんで! 大手の家電量販店でも買えるッスがパソコン専門店が色々選べるッスよ。予算はどれくらいッスか?」
「そうだ、それ気になってた。やっぱりお嬢様だから無限に……?」
「コーニャお嬢様は旦那様の方針でお小遣いも普通の高校生と変わらない位に管理されております。もちろん必要な物にお金は惜しみませんが無駄には使いません」
「いまセバスちゃんの言ったとおりで……。3万円で足りる……?」
素晴らしい教育方針だ。お金持ちだからってお金をかけすぎない。特に俺を含む中流家庭が多い学校に通うのだから経済感覚をそこに合わせたんだろう。確かにコーニャからお嬢様の気品は感じるけど、いわゆる成金的な感じは一切しないもんな。
「ええ、別にプロの配信をするわけじゃないッスからね。3万円もあれば標準的なの買えると思うッスよ」
「良かった……」
「よし、そうと決まったら行こうか。ねねちゃん、悪いけど案内してよ」
「はいッス!」
こうしてねねちゃんの案内で4人はパソコン専門店へ。俺も初めて来たが5階建てで全てのフロアがパソコンかその周辺機器。配信で必要なマイクなどはその4階にあった。
「おおー、マイクだけでもこんなにあるんだな」
「マイクがいっぱい……」
「コーニャ先輩はどういうのがいいッスか?」
「うーんと、よくわからなくて……。あ、これ小さくて可愛い……」
「あー、それは持ち運びには便利そうッスけど、小さいから集音はイマイチかもッス。コーニャ先輩は普段はささやき声ッスからね」
「ごめんなさい……」
「いえ、謝る事じゃないッス。でも好きな事を話す時はテンション高めッスから大小を調節できるのがいいかもッスね」
「まぁ確かにな。あ、これなんかどうだ? ネットのレビューと照らし合わせてたけど評判良さそう」
「あ、これは色んなYouTuber、Vtuberも使ってるって評判のやつッスね。値段も15000円……。どうッスか?」
「寄席のマイクみたい……。これで……」
確かに見た目だけは寄席のマイクの様だった。
寄席のマイクはいわゆる38マイクと呼ばれるもので集音してスピーカーで音を出す物。
配信用のマイクはパソコンからネットに繋げて使う物だからちょっと違うんだろう。
まぁマイクでもなんでもコーニャが愛着を持てる物が1番いいはずだ。
「じゃあマイクはこれとして、あとはビデオキャプチャーだっけ?」
「そうッス。それはこっちみたいッスね」
それから俺達はまたねねちゃんの下調べやネットレビューと照らし合わせて15000円弱のビデオキャプチャーを選んだ。
こうしてマイクとビデオキャプチャーと合わせて30000円という予算内に収まったのでコーニャは会計を済ませた。
「……♪」
「コーニャ、機嫌良さそうだな」
「ええ、久しぶりにお友達とお買い物したのが楽しくて……」
「はは、こんなんで良ければいつでも付き合うよ」
「お目当てはゲットできたッスけどこれからどうします? せっかくだからアキバ巡りしたいッスけど……」
「アキバ巡りか。俺はアニメショップ位しか知らないけど」
「おお、いいッスね。アニメショップを案内してくださいッス!」
「んー、コーニャもそれでいいか?」
「……アニメ……行ってみたいです」
「グハッ……!!」
コーニャが興味を示した後ろで、ここまで大人しかったセバスさんがアニメショップという言葉に異様な反応していた。




