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無口で清楚なコーニャお嬢様、実は落語の話になるとグイグイくる  作者: 春風亭吉好
俺はコーニャお嬢様に、寄席体験をさせたい
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第28話 コーニャお嬢様、前座勉強会に大満足

『どうもー、ありがとうございましたー。あ、お見送り行くからちょっと外にいてねー』


 渾身の落語が終わって幕が降りる最中、ももは高座から手を振りながらそんな事を言っていた。

 その間俺達はももへずっと拍手をしていた。本当に見事な高座だった。


「どうだった、コーニャ?」

「……ももちゃん、こんなに凄かったんですね……」

「俺も知らなかったよ。普段は開口一番として後の真打に邪魔にならないような落語をしなくちゃいけないからな、個性を発揮したらここまでできるとは」


 ももは普段から明るくノリのいい落語でアイドル的な人気ではある。今日の高座はリミッターを外し、その良さを最大限に活かしてネタに落とし込んだ。自分の魅力がわかっているんだな。


「古典落語ってちゃんと聞くの初めてッスけどあんなのもあるんスねぇ。面白かったッス!」

「ももっち最高だね〜。これからもっとチェックしよっと」


 ねねちゃんと小須先生もご満悦の様だ。改めてこの会を企画して……いや、ももが企画してくれて良かった。俺達は余韻に浸りつつ寄席の外へ出た。


「今日はありがとうねー。いい経験になったよ。そよ風くんとまめ太くんは楽屋の準備しているけど、2人もやって良かったって言ってたよ」

「こちらこそだよ。いい会だった。2人にもよろしく伝えてくれ」

「3人とも素敵でした……」

「古典落語も面白いッスね!」

「ももっちこれからチェックするよ〜」

「ははは、照れるにゃ〜」


 4人から褒められ照れるもも。今日のももは誇っていい。


「しかし今日の『皿屋敷』は良かったな。結構やってるのか?」

「んーん。今日初めてやったよ。ネタおろし」

「は? ネタおろし?」

「そー」

「ネタおろしってなんスか?」

「ああ、ネタおろしってのはその日そのネタを初めてかける事だよ。初演って事」

「ええ! 初演でこのクオリティって凄いッスね!」


 ねねちゃんの言う通りだ。落語家は同じネタを何度も何度もかけて磨きをかけると言う。ましてや初演、ネタおろしなんかは出来立てでどんな反応があるかはわからない。それをあそこまで慣れた感じでやれるとは……。


「いやぁ〜最初は私も慣れたネタやろうと思ってたんだけどさ、師匠から『お前だけはネタおろしをしろ』って言われちゃって」

「じゃあ他に候補で出してた『だくだく』とか『たいこ腹』も?」

「そうなの。二ツ目に向けて覚えてはいたんだけどやる機会なくてさ。ほら、前座は寄席とか外の落語会でも前座噺ぜんざばなししかできなくて。だから今日はいい機会だったよ」

「それにしたって……」


 ももは何でもないように言うがネタおろしであのクオリティは磨きをかけたらどうなるんだろう。ももが二ツ目になって『皿屋敷』で寄席の客席を沸かしている姿が容易に想像できる。


「でもコーニャさんが『皿屋敷』を指定してくれて良かったよ。好きなネタだし、ぶっちゃけ1番自信あったんだよね〜」

「はい……選んだのはももちゃんにピッタリと思って……」

「そう言ってもらえて嬉しいよ! どう? 寄席に行ってみたいと思った?」

「はい……。今日の前座勉強会のお陰で馴染めました……。次こそは……」

「良かったー。あ、じゃあ私も楽屋に行かなきゃ。じゃあありがとうございましたー」


 そう言って手を振りながら楽屋へ戻っていくもも。午前中の前座勉強会が終わりここからは寄席の昼の部、前座の本来の仕事が始まる。


「いやー、今日は大成功だったな。しかしまだ昼前だけどどうしようか?」

「ごめーん、上戸っち。私はこれから予定あってさー。今日は私も趣味を満喫させてもらったよ〜。じゃあね〜」

「すいません、ボクもこの後はお笑いのライブに行かなきゃッス」


 そう言って小須先生とねねちゃんは行ってしまった。残されたのは俺とコーニャの2人。このまま寄席の前に立っていても仕方ない。


「えっと、どうしようか?」

「あ、あの……!」

「ん?」

「えっと……2人で……お話できるところに行きませんか?」

「は?」


 コーニャが少し躊躇ためらいながらそんな事を言った。2人で、話せるところ? えっと、それはどういう……。変な意味はないはずだが俺は少し混乱してしまった。


「あ、じゃあ、目の前だし俺の部屋に行く?」

「え……」


 しまった。パニクって部屋に誘ってしまった。友達になったとはいえ部屋に女の子を誘うなんて大それた事をした。コーニャも引いてしまうかもしれない。

 幼馴染のももならともかく、コーニャはお嬢様だ。まだ迎えに来ていない様だがセバスさんに知られたら殺されてしまう。俺が放った言葉を取り消そうとすると。


「いいんですか? 是非……」

「え」


 コーニャは俺の部屋に上がりたいという。急にラノベの様な展開になったのだろうか。いや、そんな筈はない、でも……。

 頭の中が混乱したまま俺はコーニャを部屋に上げる事にした。

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