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無口で清楚なコーニャお嬢様、実は落語の話になるとグイグイくる  作者: 春風亭吉好
俺はコーニャお嬢様に、寄席体験をさせたい
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第24話 前座勉強会、もうすぐ始まる

 そして土曜日の朝9時。俺は前座勉強会のために我が家の下にある寄席の喜雀亭きじゃくていへ降りていた。学校もあるため普段は中に入らないが今日は準備を手伝う事になっている。


「おっはよー、九くん」

「おはようございます。ぼっちゃん」

「……おはようございます」

「おはよう。今日は悪いな」


 最初に挨拶してくれたのが俺の幼馴染であり、前座勉強会の発案者である春家はるやもも。もう前座の中では上の立場の筈だ。


 俺をぼっちゃんと呼んだのは爽やかなイケメン前座である扇家おうぎやそよかぜ。その名の通りそよ風の様な心地よい人当たりと甘いマスクでお客さんからも人気だ。


 最後に声をかけてくれたのがまだ入って半年足らずの前座である三楽亭さんらくていまめ太。少しオドオドしていて寄席の席亭の息子である俺に緊張しているようだ。多分俺より歳上だと思うんだけどな。


「よっし、九くん。準備しちゃおう!」

「おう。何からしたらいいかな?」

「あ、ぼっちゃん。僕らでやりますからぼっちゃんは楽に」

「いや、こちらの都合で使わせてもらうんだから、できる事はやらせてくれよ」

「そうだよー。今日は九くんを前座の下っ端としてコキ使っちゃって」

「前座って……。まぁお手柔らかに頼むよ」

「そうですか。じゃあぼっちゃん、一緒に座布団を並べましょう」

「ほいきた」


 俺とそよかぜで楽屋に座布団を並べる。まめ太は楽屋で出すお茶の準備をして、ももは何か帳面を付けている。こうして一緒に作業をしていると確かに前座の一員になった気分だ。


 前座勉強会は朝10時から11時までやる予定だ。そして寄席の昼公演の開場が11時30分。

 前座勉強会が終わってすぐに本来の寄席ができる様に楽屋の準備をしておこうという流れだ。特別に使わせてもらっているので邪魔になっちゃいけない。


 準備が終わって9時半過ぎにコーニャからメールが来た。


『寄席の前まで来ました』


「お、コーニャ達が着いたみたいだ。そしたら俺は前に行くからさ」

「じゃあ私も行くよー」

「僕も受付をしますので前に回ります。あと少し準備したら表へ行きますので。まめ太は楽屋にいて」

「は、はい」


 入場料を取るわけではないがコーニャ達には無料のチケットを渡してある。それを受付でもぎって寄席体験をしてもらおうという寸法だ。俺とももは楽屋を出て寄席の入り口にある受付の方へ向かった。


「おはようコーニャ、ねねちゃん、先生」

「おはようございます……」

「おはようッス!」

「うぃーす。今日はよろしくね〜」

「こちらこそですよ」


 最初は俺とコーニャとねねちゃんだけの予定だったが、顧問の許可も必要だろうと小須先生に話をすると自分も行きたいとの事で引率として付いてきてもらった。


「コーニャさん。久しぶり〜」

「あ……ももちゃん……。お久しぶりです……」


 ももがコーニャを見つけるなり明るく挨拶をする。それを受けてコーニャは少し恥ずかしそうだ。


「あれあれ〜。女の子が増えてるなー」

「女の子って。1人は後輩だけど、1人は先生だよ」

「え、そうなの。現役ギャルかと思ったよ」

「うぃーす。元ギャルだけど現役と思われて嬉しいよー。私けっこう落語好きなんだー。ももっちも見た事あるよ」

「え、そうなんですか。こちらこそ嬉しいです。そしてこちらが後輩さん?」


 ももがねねちゃんに視線を送る。するとねねちゃんは何を思ったか俺の腕に自分の腕を絡み付けてきた。


「はーい、後輩で、上戸先輩のカノジョのねねちゃんッス!」

「はぁ〜!?」


 突然の爆弾発言。もちろんそんな事実はない。ねねちゃんはニヤニヤしている。

それを受けたももだって冗談と思うはずだが……。


「へ、へぇ〜。九くん、いつの間にかおモテになってたのねぇ〜。へぇ〜、へぇ〜」

「……」


 何故かももの顔が怖い。コーニャは目をパチクリさせている。何この状況。

横を見るとねねちゃんが『滑ったかな?』という顔をしている。俺は『なんとかして』ってアイコンタクトした。


「嘘ッス! ただの後輩ッス。恋愛感情なんて−100%ッス!」

「それもう嫌いじゃん!」

「ま、まぁわかってたよ。九くんがそんなねぇ」

「……ホッ」


 ももは解ってくれたようだし、コーニャは何故かホッとしている。朝から変な空気になるのはやめてほしい。


「お、ぼっちゃん。女の子に囲まれてハーレムですね」

「「「……」」」


 少し遅れて来たそよ風の一言でまた少しその場がピリつくのだった。

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