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無口で清楚なコーニャお嬢様、実は落語の話になるとグイグイくる  作者: 春風亭吉好
俺はコーニャお嬢様に、寄席体験をさせたい
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第23話 コーニャお嬢様、前座勉強会を楽しみにする

『あ、もしもし九くん?』

「おー、どうだった?」

『うん、師匠もお金を取るわけじゃないし、席亭がいいって言うなら勉強のために構わないって言うんだけど……』

「条件ってやつか」

『そうなの。師匠が言うにはその日にかける演目をその場でコーニャさんにリクエストしてもらえって』

「ん、どういう事?」


 落語家がその日寄席でどんな演目をかけるかはその場のお客さんの雰囲気を見てその場で決めるらしい。

 ただ寄席で一番最初に高座へ上がる前座は持ちネタも少なく、予めこの演目をやると決めて高座に上がるそうだが。


『いつも演目を決めて上がるんじゃなくて、何をかけるかその場でリクエストを受けてとっさにやる事が修行になるんじゃないかってさ』

「なるほど、面白そうだ」

『そりゃ聞く方はそうかもしれないけど、いきなりこのネタやってって結構難しいんだよ。まぁそれが許可してくれる条件っていうからやるけどさ……』

「悪いな、なんか」

『んーん、確かに勉強になるからいいの。じゃあ段取りはまた改めて相談しましょ』

「オーケー。じゃあまたな」

『またねー』


 挨拶を交わし電話を切るもも。俺だけで決めてもなんだし細かい事は明日部室で決めるか。今日は色々あって疲れた。そろそろ寝るとしうよう。


「という事で落語研究会の初めての課外活動は寄席見学だ」

「寄席……」

「わー、パチパチ」


 俺の言葉にコーニャは控えめに、ねねちゃんはパチパチと言いながら拍手をする。

 別に俺が部長というわけではないが、無口で控えめなコーニャよりは俺が部を引っ張る事になりそうだ。もちろんコーニャの意思を尊重した上でだが。


「漫才は出るっスか? 新作落語は?」

「いや、実は寄席と言っても普通の公演じゃなくて前座だけの勉強会」

「勉強会? 落語のお勉強するっスか?」

「あ、勉強会っていうのは客側が勉強するんじゃないんだよ。若手の落語家が慣れないネタとかを高座にかけて勉強するって意味で勉強会。今度行くのは寄席開演前の前座だけの落語会ってこと。漫才はないし、前座で新作落語も多分ないかなー。」

「にゃるほどー」

「……」


 理解してくれたのか腕を組みフンフン頷くねねちゃん。コーニャも無言でコクコク頷いている。俺はももから聞いた条件も説明した。


「リクエストってどうやって出すっスか?」

「んー、寄席とかだと芸人が上がってきたところで演目を叫ぶとかあるけど……」


 寄席では落語家が上がってきた時に『芝浜しばはま!』とか『火焔太鼓かえんだいこ!』とか客席から演目のリクエストがかかる事がある。リクエストに応えるかは芸人次第だし、ましてや前座の高座の時にリクエストの声が上がる事はまずないが。


「コーニャ、どうする?」

「えっと、声は……」

「だよな」


 落語の話になると饒舌なコーニャだが普段は無口で控えめだ。客席から大きな声でリクエストするのは流石に恥ずかしいだろう。


「あ、そしたらリクエストをその場でホワイトボードに書いて掲げるとか」

「それなら……大丈夫です」

「よしっ、じゃあその方向でいくか」


 それからまた少し話し合い、100円ショップでホワイトボード買ってそれに演目を書いてコーニャがその都度掲げるという事で落ち着いた。

 ねねちゃんは用があると言うので帰宅。部室には俺とコーニャだけになった。


「あの……」

「ん? なんだ?」

「ありがとうございます……私のために……」

「ま、まぁいつかは寄席に来てもらいたいってのはあるからさ。せっかく落語好きなのに寄席へ行けないってのは勿体無いし」

「はい……その次は普段の寄席にも……」

「おう、前座勉強会で慣れたら今度は昼でも夜でも来てくれよ」

「はい……」


 それから部室の落語のCDを聞いたりしてから俺達も帰る事にした。校門まで行くとメイドのセバスさんが待っていた。


「セバスちゃん、ありがとう」

「いえ……、上戸様、それでは」


 コーニャに見えない所で俺を睨みつけるセバスさん。先日の事は絶対に言うなという圧力だろう。俺は口パクで『言いません』と返し2人を見送った。


 それからももからの連絡があり前座勉強会は週末土曜日の午前中に決まった。

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