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無口で清楚なコーニャお嬢様、実は落語の話になるとグイグイくる  作者: 春風亭吉好
俺とコーニャお嬢様、オチケンを作ろうとする
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第20話 コーニャお嬢様、初めての部活動

「コーニャさんに内緒で、私に落語とはなんたるかを教えてくださらない?」


 コーニャと気まずい生徒会長との仲を取り持とうと提案したら、生徒会長からこの様に頼まれた。


「えっと、普通にコーニャに話してもらうんじゃダメなの?」

「ダメです! 今更コーニャさんに教えてほしいなんて言えませんわ。ちゃんと知識を蓄えて、対等にお話できるようになりたいんです。ダメ……でしょうか?」


 ここまで拗れちゃうと半端に絡めないという事か。でも赤面しながら懇願する生徒会長はなんだかいじらしい。こんなお願いを断れるはずもない。


「わかった。いいよ。お互い時間がある時に」

「ありがとうございます! あ、コーニャさんの写真もお忘れなく」


 よっぽどコーニャの事が好きなんだろう。もっと素直になればいいのに。まぁ素直になるためにこれから落語の勉強をしようと言うのだ。同じコーニャ推しとして助力してあげよう。


「それで申請の方は……」

「あら、そうでした。とりあえず……この書類に記入してください。後で印を押しておきますから」


 生徒会長の出してくれた書類に必要事項を記入した。うちの高校は生徒の自主自立に任されているので、部活動の申請も顧問さえ立てれば生徒会に申し込むだけでいい。特に文化部は顧問からアレコレ言われる事は殆どないようだ。


「それじゃ、お願いしますわよ。ご指導と、写真と」

「はいよ」


 俺が生徒会室のを出る時も生徒会長は念押ししてきた。これから2人だけの秘密のやり取り……って言うほど色っぽいものではないが新たな関係が始まった。


「ただいまー、あれ? ねねちゃんは?」

「上戸くん……おかえりなさい」


 聞くとねねちゃんは今日は見学に来ただけで後に用があるから帰ったと言う。部員申請の書類もあるのだけれどそれは明日にでも書いてもらおうか。


「よっし、じゃあ俺たちも帰るか」

「あ、あの……上戸くん……」

「ん?」

「最初の部活動……しませんか?」


 コーニャが少し躊躇ためらい、頬を赤面させて言った。


「最初の部活動? まぁ正確に認められたわけだけど、最初は3人揃ってからでよくない?」

「えっと……、やっぱり最初は……上戸くんと2人がいい……かなって」

「え」


 ドキッとした。まるで心臓を優しく掴まれた様な。

 深い意味はないだろう。最初はコーニャが俺にお願いをし、俺が叶えてあげる形でできた部活だ。

 発足に必要な新入部員が増えたとはいえまずは最初の2人で部活したいという事だ。それ以上の意味はない……はず。


「うん、いいよ。何をしようか。先生の落語の音源でも聞く?」

「それもいいですけど……、今日は上戸くんのお話を聞きたいです」

「俺の? コーニャが話すんじゃなくて?」

「私のお話はずっと聞いてもらってますし……。これから部活を始めるなら人のお話を聞けなきゃなって……」

「コーニャ……」


 そうか、コーニャとしても自分の好きを一方的にぶつけるだけじゃなくて、お互いの好きのやり取りをするって意識ができたんだな。これから部員も増えるなら尚更だ。いい成長だし部活を作った甲斐があった。


「上戸くんは……どの演目が好きですか……?」

「俺はそうだなー。大ネタも好きなんだけど、子供の頃に聞いた梅歌ばいか師匠の『寿限無じゅげむ』が絶品でさ」

「梅歌師匠! くっ……はい……それで?」


 推しの梅歌師匠の名前が出てグイグイ語りかけたコーニャが踏みとどまった。俺はコーニャの語りを聞くのはやぶさかではないけれども、コーニャはあくまで俺に話させようとしてるみたいだ。今はそのコーニャの意思に乗っかろう。


「後はそうだなー……」


 それから俺は子供の頃に聞いた落語の話、我が家でもある喜雀亭きじゃくていでたまに耳にする落語の話などを聞いてもらった。コーニャはそれを興味深そうにフンフンと聞いていた。



「おっと、もうこんな時間か。そろそろ帰るか」

「残念……」


 気が付いたら18時近くになっていた。それ以上は許可がないと校内にいられない。残念そうにしているコーニャと共に部室を出て校門へ向かう。


「まぁでも部員が揃って良かったな」

「はい……。ももちゃんともお話できそうだし」

「コミュ力高そうだもんな。とりあえずこれから3人での活動も考えなきゃな」

「はい……」


 校門を見るとメイドのセバスさんが迎えに来ていた。遅くなるとの連絡はしていたらしい。


「それじゃあ……上戸くん、また明日」

「ああ、コーニャ。まあ明日」


 コーニャがセバスさんの方へタタっと駆け寄ったかと思うと、踵を返しこちらへ戻ってきた。


「コーニャ?」

「……」


 コーニャは俺の耳元へそっと口を寄せて


「また……2人での部活もしましょうね」


 そうそっと囁いた。


 コーニャは今度こそセバスさんの方へ駆け寄った。

 俺はコーニャの吐息がまだ耳元に残っているのを感じつつ、セバスさんから殺意を抱いた視線を向けられるのであった。

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