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無口で清楚なコーニャお嬢様、実は落語の話になるとグイグイくる  作者: 春風亭吉好
俺とコーニャお嬢様、オチケンを作ろうとする
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第18話 コーニャお嬢様、新入部員と出会う

「えっと、入部希望者?」

「はいッス! ボクは1年の渋井しぶいねねッス。ねねちゃんと呼んでくださいッス」

「ねねちゃん……」

「ッス!」


 突如やってきた入部希望者は背の小さなメガネっ娘、更にはボクっ娘でちゃん付けで呼んで欲しい後輩……と属性過多な娘だった。コーニャにねねちゃんと呼ばれて喜んでいる。


「えっと、一つ聞くけどちゃんと落語には興味あるの? 寄席とか。コーニャのファンじゃなくて? いや、ファンなのは構わないけど」

「コーニャ? あ、こちらの先輩ッスか? ボクあんまり他の学年の人とか知らなくてー。でも綺麗な人ッスね。確かにファンも多そうです」


 学年が違うとはいえこの学校のアイドルであるコーニャを知らない生徒もいるんだな。逆に俺も1年生の人気者とか知らないけど。


「あ、アナタ、本当にこちらに入るおつもり?」

「ハイッス! って誰ッスか?」

「私を知らない? 集会でもいつも登壇してるでしょう。生徒会長の北袋天きたぶくろそらです!」

「いやー、ボクは集会の校長先生の話とか苦手で、いつも寝ちゃってるッス」

「なんと……、コーニャさんに加え私まで知らない生徒がいるなんて……」


 生徒会長が勝手にショックを受けている。ねねちゃん、強い。


「じゃあ生徒会長。これで部員が揃ったという事で」

「は、はい。そうね。認めますわ。後で生徒会室へ手続きに来てくださいませ……」


 心なしか肩を落とした様な生徒会長が退室した。

 キョトンとしているねねちゃんと、ついに来た落語好きな新入部員に興味津々そうなコーニャ。まずはねねちゃんの話を聞かないとな。


「えーと、それでねねちゃんはどんな落語が好きなの? 有名どころだとやっぱり梅歌ばいか師匠とか?」

「梅歌師匠……って誰でしたっけ?」

「は?」

「……!」


 落語好きを名乗っていて梅歌師匠を知らないとは。コーニャも軽くショックを受けている。


「いや、落語が好きって梅歌師匠を知らないってあるか? ほら、CMにも出てるよ。お酒のとか、カップラーメンのとか」

「え……、あー、あの人っすか。すいません、古典落語の師匠って殆ど聞いた事なくて」

「え……、て事は……」

「ボクは新作落語が好きなんス。あとは漫才、コントとか」

「あー、そういう」


 落語の本流は江戸時代を舞台にした古典落語だ。ただ現代を舞台にした創作落語もある。それを新作落語と言う。


「じゃあ寄席とかも行った事ない?」

「はいッス。元々ボクは漫才とかコントのお笑いが好きだったんスけど、お笑いライブに新作落語の師匠が出てて。落語ってもっと古いイメージがあったんスけど、スマホが出てきたり異世界にいったりとか、こんな現代を描いたのがあるんだなーって」


 主に江戸時代を舞台にした古典落語と違い新作落語に時代設定はない。現代社会でも未来でも、中には異世界を描くのもある。ストーリーとしてはコントに近いかもしれない。


「それから主にライブハウスとかで新作落語を聞いてきたんスけど……。あれ、ここって新作落語を好きな人じゃダメっスか?」

「いや、そんな事はないよ。なぁ、コーニャ」

「……はい!」


 コーニャは大きくコクコクと頷いている。古典落語も新作落語もどちらも同じ落語だ。その内に両方好きになってもらえればいい。


「寄席とかはハードル高くて行った事なかったんスよ。でも一度寄席でも新作落語を聞いてみたいなーと思って。そしたら落語研究会ができたっていうから、そこなら寄席も行くんじゃないかなと」

「なるほど、まぁいつか活動として行こうか。というかうちが寄席だし」

「へ!?」

「いや、おれんちが寄席なんだよ。上野の喜雀亭きじゃくていっていう。だからそこでよければ招待できるけど……」

「マジっスか。凄いっスねー」

「上戸くん……」


 俺の家が寄席と知ったねねちゃんは軽く驚き、コーニャは寄席という響きに目をキラキラさせている。

 コーニャもいつかは寄席に連れて行きたいとは思っていた。いつまでも神格化されるより気軽に楽しんでほしい。


「まぁそれはおいおいな。あ、そうだ。生徒会室へ手続きに行ってくるよ」

「上戸くん……いいですか?」

「おぅ、任せて。コーニャはねねちゃんに古典落語の魅力を教えてやってくれ」

「ほよ。確かにこれまで新作落語しか聞いてこなかったから古典落語の事も教えてほしいっス」


 そんなねねちゃんの言葉を聞きコーニャの目がキラーンの光るのが見えた。


「ねねちゃん、聞いてくれますかー!あのですね、まず古典落語の名人として先程名前の挙がった梅歌師匠が本当に素晴らしくてですね。梅歌師匠のお得意の演目で『紺屋高尾こうやたかお』というのがあるんですが!」

「お、お!? 大人しい先輩かと思ったら急にグイグイきたっス」


 コーニャも水を得た魚のように落語の事を語っている。ねねちゃんもこれまで古典落語を聞いていないとはいえ落語そのものには興味があるのでコーニャも話しやすいだろう。


「じゃ、行ってくるよ」


 俺は2人を残して生徒会室へ向かった。手続きを申し出たのはコーニャと生徒会長が気まずそうだったからだ。まぁ手続きくらいなら俺だけでもいいだろう。


「……! ……!」

「ん?」


 生徒会室の前まで来たら何やら声が聞こえる。会話というよりは独り言のような。


「えっと……失礼しまーす」


 俺は少し躊躇しつつも、生徒会室の扉を開けた。そこで俺が見たものはなんと……。

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